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アントニー・マン「エスター・ゴードン・フラムリンガム」

あらすじ…ポール・ガッドが出版代理人マイラのもとへミステリ小説のアイディアを持ち込むが、ドレも既出の設定ばかり。そこでマイラは、エスター・ゴードン・フラムリンガムの<ルーファス神父>シリーズの代作を持ちかける。

 「ミステリ小説に登場する探偵は、もうすでに完全に出つくしてるんじゃないかな」(P136)と嘆くポールのために、私が3つばかりアイディアを出してみることにします。既に使われているかもしれませんが、その場合はご容赦ください。

(1)連歌師
 主人公は戦国時代に諸国を巡る連歌師。旅先で催された連歌会で殺人事件が発生。主人公は連歌の中に事件解決の手がかりがあるとにらむ…。
 これがシリーズ化されるならば、全国各地を舞台にすることができる。ただし、これを書くには連歌の知識が不可欠だし、和歌の素養も必要、枕詞や掛詞などの技巧も磨かねばなるまい。

(2)KKK
 主人公は秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)の会員で、アメリカ南部に住んでいる。ある夜、KKKの集会で会員の一人が惨殺される。主人公は「黒人が犯人に違いない」と思い込み、放送禁止の差別用語を連発しながら推理する。
 これがシリーズ化されたら、主人公の評判を聞きつけた他州のKKKから依頼が舞い込む、という形にすればよい。

(3)動物の死体愛好者
 主人公は富豪で、金に物を言わせて動物の死体とセックスするド変態。ある日、懇意にしている動物園の園長から「カンガルーのナオミが死んだ」との連絡を受け、期待と股間を膨らませながら駆けつけると、園長が死んでいてカンガルーは生きていた。主人公に園長殺害の容疑がかけられ…。
 動物のいるところといえば動物園の他にも牧場やペットショップ、狩猟場、自然公園などがあり、シリーズ化されても舞台に困ることはそんなにないだろう。

 さて、こうしてアイディアを出してみましたが、(1)はともかくとして(2)と(3)は読者がドン引きする設定ですな。出版社の自主規制に引っかかりそうです。

【参考文献】
アントニー・マン『フランクを始末するには』創元社

江戸歌舞伎「御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)」

あらすじ…源義経が都落ちして行方をくらませた。義経の正妻・岩手姫に横恋慕していた是明親王は、稲毛の入道を使って岩手姫を拘引しようとするが、坂東太郎らの活躍により妨害される。

 是明親王は「後鳥羽院の弟の宮」(P21)という設定。あれ、この時点で後鳥羽(史実では在位中なので天皇)はまだ子供のはずだから、その弟もまだほんの子供のはずなのに横恋慕とは妙ですな。
 そこでちょっと調べてみました。まず、正確な年代は「時 文治元年(一一八五)冬」(P81)とあります。それから、インターネットで天皇家の系図をチェックしてみると、字こそ違えど惟明親王(1179~1221)が見つかりました。
 是明親王イコール惟明親王ならば、彼は御齢6歳で横恋慕ですか。マセてるってレベルじゃねーぞ!

 それから、物語の後半にて登場する、(義経と岩手姫の)偽首の算段について。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、偽首を拵えて鎌倉からの追及をかわして義経らを逃がそうと藤原秀衡などが画策します。
 でも、ちょっと待てよ。首実検すればそんな嘘、一発でバレるはずです。無名の人間ならごまかしがきくかもしれませんが、源義経はこの時点では超有名人。しかも鎌倉には彼を見知っている者が大勢いますぜ。

【参考文献】
古井戸秀夫・鳥越文蔵・和田修校注『江戸歌舞伎集 新日本古典文学大系96』岩波書店

【関連記事】
尾崎秀樹『にっぽん裏返史』文藝春秋(4)義経の首

江戸歌舞伎「参会名護屋(さんくはいなこや)」

あらすじ…室町時代。正親町太宰之丞は春王君に家督を譲り、家来の名護屋三郎左衛門も息子の山三郎に家督を譲らせることに。そんな時、家来の仁木入道が一人の座頭を連れてくる。

 タイトルにある名護屋は地名の名古屋ではなく、本作の主人公・名護屋山三郎のことです。名護屋山三郎は安土桃山時代に実在した人物で、豊臣秀頼の実の父親とも噂されていますが、とりあえず本作ではモテモテのプレイボーイというキャラだとおぼえておけばいいでしょう。
 ただし、第一番目の最後で春王から「山三郎ことは、武士の道は忘れ、昼夜色町とやらんへ通ふよし、かさねて出仕は無用」(P12)と言われます。現代ならば、仕事をサボってソープランドに入り浸るサラリーマンが会社をクビになるようなものでしょうか。

 ちなみにあらすじで書いたことは、物語のほんのさわり程度です。もう一人の主人公ともいうべき不破伴左衛門(初代市川団十郎が演じている!)は次の北野神社にて登場し、正親町太宰之丞を殺そうとして失敗、自分が死にます。でも、すぐに蘇生するという超絶展開を見せてくれます。
 これはこれで、突っ込みどころがあって面白い。

【参考文献】
古井戸秀夫・鳥越文蔵・和田修校注『江戸歌舞伎集 新日本古典文学大系96』岩波書店

江戸歌舞伎「傾城阿佐間曾我(けいせいあさまそが)」

あらすじ…曾我兄弟が父の仇・工藤祐経を討とうとする。

 タイトルの傾城とは遊女のことで、遊女に入れ込むと城を傾けるほど散財することから来ています。そして本作においてこの傾城とは遊女の虎&少将を指します。
 又、阿佐間は仇討ちの場所の浅間、曾我はもちろん曾我兄弟です。

 阿佐間はともかくとして傾城は物語の中で重要な立ち回りを演じています。虎&少将と曾我兄弟のラブロマンスはもとより、最後にこの二人は曾我兄弟の仇討ちに参加しています。しかも、P68-69の挿絵を見ると鎧まで着ています。お前らそんなに強かったっけ?

【参考文献】
古井戸秀夫・鳥越文蔵・和田修校注『江戸歌舞伎集 新日本古典文学大系96』岩波書店

【曽我兄弟関連記事】
曽我兄弟の墓(元箱根)
平成28年 尻労青年団『曽我の討入り』
近松門左衛門『世継曾我』
曾我神社造營之碑(箱根神社)
謡曲「小袖曾我」

曽我兄弟の墓(箱根)

円城塔「考速」

あらすじ…なし。

 本作にストーリーはなく、いや、あるとすれば佐倉なる人物の講義を受けているのですが、その内容たるやスピノザについて話をしているらしいということがわかるくらいです。尚、作品の末尾に2つの文献を挙げているので、詳しく知りたい人はそちらを読めということなのでしょう。
 で、あとは思考がグルグルと目まぐるしく動いています。
 正直、読んでいてあまり気持ちのよいものではないのですが、この「考速」な感じは、自分も経験したことがあるような気がします。ただ、残念ながらそれをいつどこで経験したのかは思い出せません。

【参考文献】
日本文藝協会=編『文学2010』講談社

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「神学者」

あらすじ…アキレイアの補佐司教アウレリアヌスがヨハネス・デ・パンノイアと神学論争する。

 キリスト教の神学の素養がないと、彼らが何を言ってるのかわからないかもしれません。いや、ギリシア神話やキケロなどに言及している(P49)ことから、場合によってはその方面の知識も試されます。
 え? 私ですか? ギリシア神話の知識はある、キケロは未読、キリスト教の神学論争については映画「銀河」を観た程度。…話になりませんな。

 まあ、神学に首を突っ込みたいなら、それこそ神学者にお尋ねなさい。
 現代の日本では言論の自由・思想信条の自由が保障されているので、どんなに異端な教説を信じたところでそれだけではエウフォルブスやヨハネスのように火刑に処される危険はありません。
 そう考えると、彼らの信仰って、文字通り命がけだったんですねえ。

【参考文献】
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』平凡社

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「アステリオーンの家」

 この作品の冒頭の引用文はアポロドーロスの『ギリシア神話』ですが、そういえば自宅の書棚にもあったな…と思って調べてみたら、このアステリオーンとはミノタウロスのことでした。
 以下、比較のために両者を引用してみます。

 そして王妃は男の子を出産したが、その子はアステリオーンという名前であった。(P87)

 そこで彼女はアステリオス、一名ミーノータウロスを生んだ。(高津春繁訳『アポロドーロス ギリシア神話』岩波書店、P121)

 そういえばミノタウロスは「ミノスの息子」という意味で、人々があの半人半牛の怪物をそう呼んでいる、いわばあだ名であって、個人名は別にあってしかるべきでしたな。
 それはさておき、こうして両者を眺めてみると、作者(ボルヘス)はミノタウロスの名を少なくとも冒頭部分では隠しておきたかったようです。

 ちなみに本作品に登場する「アステリオーンの家」は、迷宮ではなさそうです。アステリオーンは普通に外出していますからね。まあ、よしんばそこが迷宮であったとしても、そこに長年住み慣れた者にとっては迷わないんでしょう。

【参考文献】
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』平凡社

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「不死の人」

あらすじ…古代ローマの軍事行政官ルーフスが、ひょんなことから不死の水が流れる川(及び、不死の人の町)の存在を知り、探索の旅に出る。

 不死を求めて旅に出る、というのはギルガメシュ叙事詩にもありますな。ギルガメシュは不死の存在になるのに失敗しましたが、こちらは成功したようです。
 ちなみに、作品中にこんな文章がありました。尚、引用文中の二人とはルーフスとホメロスのことです。

 私がここまで語ってきた話は、二人の異なった人間の身に起こったことがない交ぜにされているので、非現実的に思われるかもしれない。(P32)

 この言い訳があると、ストーリーの整合性におかしなところがあったり、論理的に矛盾している箇所があったとしても許容されてしまうかもしれません。どうしてそうなってしまったのかはさておき、この言い訳は便利だ。

【参考文献】
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』平凡社

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「死んだ男」

あらすじ…やくざ者のベンハミン・オタロラはウルグアイの密輸業者のボス、アセベード・バンデイラの部下になり、次第に頭角を現わす。だが…。

 南米ノワールともいうべき作品。
 本作の表現を借りるならば、オタロラは「粋がって向こう意気の強いところを見せるしか能のないけちなやくざもの」(P36)です。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、オタロラが最後にあのように見事に欺かれたのを見ると、彼がボスになろうとして失敗するのは当然のような気がします。
 狡猾さが足りない、といったところでしょうか。

【参考文献】
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』平凡社

浄瑠璃「牛王の姫」

あらすじ…牛王の姫の家にやってきた牛若丸は病床に伏す。一方その頃、平清盛は牛若丸が鞍馬にいないことを知って厳しく探索させる。牛王の姫の叔母・尼公は欲心に駆られて六波羅へ訴え出る。

 当時は「平家にあらずんば人にあらず」と言われるほど平家の絶頂期。かたや牛若丸は源氏の御曹司ではあるものの無名といってよい存在でした。ですから、滅亡した敵の子供が一人いなくなったところで、平家がそこまで血眼になって探すとは思えないのですが、とりあえずこの話では牛若丸は要注意人物と目されていたということにしておきましょう。
 要注意人物だったならば、鞍馬山に平家の息のかかった者、即ち監視役がいて、牛若丸が行方不明になったとわかると直ちに六波羅(平清盛がいるところ)へ急報したのでしょう。そう考えないと、平家方の素早い対応(隣国の河内や丹波などにまで探索の手を伸ばしている!)が説明できないからです。

 しかしながら、なぜか捜査となると途端にうまく行きません。牛王の姫を拷問して牛若丸の居場所を自白させようとするのですが、彼女を拷問するだけで他の手段をすっかり忘れているようです。
 ちょっと待て。尋問するならば「十二人の女房達」(P420)や、屋敷に勤務している下人・婢女の類もいるはずですが、彼らは全く無視されています。「家政婦は見た」ではありませんが、こういう人たちは主人の動静を結構知っていたりしますぞ。
 それから、ちょっと推理力があるならば、「牛王の姫が困った時に助けを求める人物は誰か?」と考えて、醍醐にいる叔父の「しやうしん聖」を探り当てるのはそう難しいことではないでしょう。六波羅に留まっている尼公に訊ねればわかることだからです。
 探索の指揮を執った景清の捜査能力が低かった、ということにしておきましょうか。

【参考文献】
信多純一・坂口弘之校注『古浄瑠璃 説経集 新日本古典文学大系90』岩波書店

説経節「をぐり」

あらすじ…二条の大納言兼家の息子・小栗判官は、大蛇とのセックスが世間に知られて常陸へ流罪となる。その地で武蔵相模の郡代・横山の娘・照手の姫の存在を知り、勝手に婿入りする。だが…。

 小栗判官は18歳で元服して21歳になるまでに72人の妻を迎えた…ということは、計算してみると大体1ヶ月に2人のペースでヤリ捨てていたことになります。親の権力と財力に物を言わせたからできたことでしょうが、捨てられた女性たちにとってはたまったものではありません。
 で、ついには美女に変身した大蛇とセックスします。この場合は獣姦というべきか妖姦というべきか…。ともあれ、いくら人間の女に満足できないからって蛇に手を出しちゃまずいだろ。まあ、小栗判官が鞍馬で出会った時には彼女の正体を知らなかったようですが…。あ、でも、妻に迎える前に身元調査ぐらいはやっておけよというハナシですな。

 まだまだ小栗判官の話は続きますが、これ以上レビューする気にはなれません。このくらいでやめておきます。

【参考文献】
信多純一・坂口弘之校注『古浄瑠璃 説経集 新日本古典文学大系90』岩波書店

浄瑠璃「浄瑠璃御前物語」

あらすじ…源義経が東国へ下向する途中、美少女・浄瑠璃御前と出会い、契りを交わす。だが、義経はすぐに東国へ旅立ち…。

 浄瑠璃御前にしてみれば、14歳で処女を捧げた男がすぐに立ち去って、一日千秋の思いで待っていると、届いた手紙に書いてあるのが「もう死にそう」。それで旅に出たこともないのに無理して駆けつけると、愛しい男は砂に埋もれて死んでいた。そりゃあ泣きたくなりますわいな。
 ちなみにこの後、浄瑠璃御前の涙によって義経は蘇生します(薬師パワー?)。そして回復した義経は大天狗・小天狗を召喚し、浄瑠璃御前と侍女を自宅に送り届けさせ、自分は奥州への旅を再開します。…ん? ちょっと待てよ、そんなにすごいものを召喚できるのなら、最初からそれを使って旅をすればよかったのに。

【参考文献】
信多純一・坂口弘之校注『古浄瑠璃 説経集 新日本古典文学大系90』岩波書店

クラーク・アシュトン・スミス「アフォーゴモンの鎖」

あらすじ…謎の死を遂げたジョン・ミルウォープ。彼の友人が、最後の日記を雑誌に発表する。

 ミルウォープは秘薬スーヴァラ(語感からするとインドあたりの産か)を使って前世の記憶を取り戻したという。そして、遥か昔の前世は、時の神アフォーゴモンに仕える神官カラスパであり、カラスパは最愛のベルトリスと再会するために禁断の儀式を執り行なう…。
 何という中二病。こんなクサイ話を前世の記憶だと言い張るとは痛すぎるぞ、ミルウォープ!

【参考文献】
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』創元社

クラーク・アシュトン・スミス「蟾蜍のおばさん」

あらすじ…蟾蜍(ひきがえる)を使い魔にしている魔女アントワネットが若者ピエールを誘惑する。

 池田茂美を思い出しました。
 茂美怖いでしょう、もとい、アントワネット怖いでしょう。

【参考文献】
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』創元社

クラーク・アシュトン・スミス「サテュロス」

あらすじ…ラ・フレネ城の伯爵ラウールは、妻アデルと詩人オリヴィエが森へ散歩に出かけたことを知り、二人を追いかける。一方アデルとオリヴィエはどんどん森へ入って行き…。

 読者はタイトルから想像が着くと思いますが、この後サテュロスが登場します。
 ちなみにサテュロスは好色という特徴があり、英語の"satyr"には好色家・色情狂という意味があります。だとすると、サテュロスがアデルをさらったのも好色ゆえということですな。

【参考文献】
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』創元社

クラーク・アシュトン・スミス「ウェヌスの発掘」

あらすじ…1550年、3人の修道士が修道院の庭でウェヌス像を発掘する。それからというもの、修道士たちはどんどんおかしくなっていく。

 そんなにエロいものなら私も見てみたいものですな。私は女の裸ならばインターネットでしこたま見てきたので、ウェヌス像に狂わされたベネディクト修道会の修道士たちよりは「免疫」ができていますぞ。

【参考文献】
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』創元社

クラーク・アシュトン・スミス「マンドラゴラ」

あらすじ…魔法使いのジル・グラニエとその妻サビーヌは、マンドラゴラから愛の媚薬を作って売っていた。そんなある時、サビーヌが突如いなくなる。実はジルがサビーヌを殺して死体をマンドラゴラの群生地に埋めたのだ。

 犯罪がいつ露見するかというスリリングさをファンタジー世界で描き出しています。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、露見の仕方がいかにもファンタジーらしい。

【参考文献】
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』創元社

クラーク・アシュトン・スミス「怪物像をつくる者」

あらすじ…石彫家ブレーズ・レイナールがヴィヨンヌの大聖堂の屋根に2体のガーゴイル像を作る。レイナールの暗い情念がこもったそのガーゴイルは迫真の出来で恐ろしかった。そんなヴィヨンヌの街で、住民が正体不明の魔物に次々と殺される事件が起こる。

 邦題には「怪物像」とありますが、原題は「The Maker of Gargoyles」(P408)とありますので、本記事ではこの怪物像をガーゴイルと呼ぶことにします。

 さて、本書の裏表紙を読むと、「彫刻家の暗い情念のこもった怪物像が生気を帯びて恐怖をもたらす『怪物像をつくる者』」と紹介されていて、惨殺犯の正体をネタバラシしてくれています。まあ、本作品は犯人探しがメインテーマじゃないから、そこはネタバレしてもいいのかもしれません。
 え? それじゃあメインテーマは何かって? そうですねえ…一読した限りではレイナールの暗い情念とそれを魂として込められたガーゴイルの恐ろしさ、といったところでしょうか。
 尚、暗い情念の内容について少し掘り下げようかとも思いましたが、うまく表現できる自信がないのでやめておきます。ただ、破壊衝動と性衝動じゃないか、とだけは言っておきます。

【参考文献】
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』創元社

『これぞ究極! 食べ放題のウマい店86軒』株式会社メディアバル

 首都圏の食べ放題の飲食店のガイドブック。
 本書は2010年3月20日発行で、この記事を書いているのが2013年なのですが、3年も経っているとランチバイキングをやめている店や、店そのものがなくなっているケースがあったりします。
 ちょっと調べてみたのですが、「グルジアワイン&ダイニング GAUMARJOS!」(P61)は食べログの該当ページに「閉店」のマークが小さく表示されていたし、「パン焼き人」(P68)は「マクロビーナスとパン焼き人」と名を変えていてパンバイキングはなくなった模様。
 ガイドブック片手に行ってみたらバイキングをやっていなかった…。そんな悲しい目に遭わないためにも、事前のチェックを怠るわけにはいかない。もっとも、つい最近発行されたガイドブックなら情報が新しいから(多分)大丈夫でしょうがね。まあ、調べる手間が惜しいなら細心のガイドブックを買いなさいってことですな。

【参考文献】
『これぞ究極! 食べ放題のウマい店86軒』株式会社メディアバル

近松門左衛門『世継曾我』

あらすじ…曾我兄弟は源頼朝が富士の裾野で行なった巻狩りの前夜に父の仇・工藤祐経を討ち果たすが、曾我十郎は戦死、曾我五郎は捕えられ処刑される。狩猟の成果を報告する段になって、五郎を捕えた五郎丸(荒井藤太)が曾我五郎を獲物として記録係の新開荒四郎に報告する。それを朝比奈三郎がイチャモンを付け、曾我兄弟の郎党・鬼王&団三郎に新開と荒井を殺すよう唆(そそのか)す。

【主要登場人物一覧】
曾我五郎時致………曾我兄弟の弟の方。
鬼王(おにおう)………曾我兄弟の郎党。
団三郎………………曾我兄弟の郎党。鬼王の弟。
少将…………………化粧坂の遊女。曾我五郎の馴染み。
虎……………………大磯の遊女。曾我十郎の馴染み。
祐若…………………曾我十郎が虎御前との間にもうけた隠し子。
源頼朝………………鎌倉幕府将軍。
五郎丸………………源頼朝の召使いの童。怪力の持ち主で曾我五郎を捕える。元服して荒井藤太重宗と名乗る。
新開荒四郎…………土肥次郎実年の子。
朝比奈三郎義秀……豪勇の士。
二の宮の姉…………曾我兄弟の姉。
母……………………曾我兄弟の母。

 曾我兄弟の仇討ちの後日譚。
 本作品のタイトル「世継曾我」は十郎の隠し子・祐若が曾我家のお世継ぎとして源頼朝に公認されるところから来ています。

 さて、この作品の敵役は荒井藤太と新開荒四郎なのですが、この二人はヘタレキャラと言っても差し支えないくらい情けないんです。彼らのエピソードをかいつまんで紹介します。

・朝比奈三郎の脅し文句にビビって夜も寝られない。(P18)
・鬼王にビビって逃げ出す。(P20)
・団三郎にビビって逃げ出す。(P33)
・虎&少将にだまされて唐櫃に閉じ込められる。(P36-40)

 荒井藤太は怪力の持ち主なのですが、それを活かすどころかかえってそれが死因にすらなっています。こいつは曾我五郎を捕えた時が人生の絶頂期だったわけですな。
 一方、新開荒四郎に至っては朝比奈三郎に命乞いする(P40)など小物感丸出しです。全くいいところがない。
 もうちょっと強い敵キャラにしてもよかったんじゃないかとも思いましたが、郎党二人が付け狙うにはこのくらいでいいのかもしれませんな。

【参考文献】
松崎仁・原道夫・井口洋・大崎正叔『近松浄瑠璃集 上 新日本古典文学大系91』岩波書店

【関連記事】
曽我兄弟の墓(元箱根)
平成28年 尻労青年団『曽我の討入り』
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曾我神社造營之碑(箱根神社)
謡曲「小袖曾我」

曽我兄弟の墓(箱根)

近松門左衛門『碁盤太平記』

 近松門左衛門が描いた『忠臣蔵』。
 なお、この記事を読む際には、以下の2点についてご承知おき下さい。

(1)『忠臣蔵』のストーリーを一通り知っていること
 今まで数え切れないほど演劇・ドラマ・映画等になっており、日本人なら大まかなストーリーくらい頭の中に入っているはずだという前提でレビューを書くことにします。

(2)時代・人物名が異なる
 江戸時代に製作・上演された『忠臣蔵』は、室町時代を舞台とし、大石内蔵助が大星由良之介になるなどの改変が施されています。詳細は本書脚注及び「6 塩冶浪人実名対照一覧」(P499-500)を参照されたし。

あらすじ…大星由良之介とその息子・力弥は、京に滞在して仇討ちの機会を窺っていた。由良之介が外出している時に鎌倉の同志たちから次々に手紙が届く。そんなさ中、奉公人の岡平が高師直と内通していると見抜いた力弥は岡平を刀で斬り付け、とどめを刺そうとする。とそこへ由良之介が帰ってくる。

 ネタバレ防止のために岡平の正体は伏せますが、彼が瀕死の状態で口も利けないので碁盤と碁石を使って高師直館の間取りを大星父子に教えます。本作のタイトルはここから来ているわけです。
 ただ、その時の様子(P261)を読んでみると、由良之介がスラスラと質問していることから、彼の頭の中には既に大まかな見取図は描かれていたようです。おそらく、鎌倉に潜伏中の同志がある程度の調べを付けていたのでしょう。ひょっとしたら、物語の冒頭に届いた手紙の中にもその種の情報が入っていたのかもしれません。

【参考文献】
松崎仁・原道夫・井口洋・大崎正叔『近松浄瑠璃集 上 新日本古典文学大系91』岩波書店

【忠臣蔵関連記事】
忠臣蔵外伝 四谷怪談
天野屋利兵衛浮図の碑(泉岳寺)
加藤廣『謎手本忠臣蔵(上)』新潮社
加藤廣『謎手本忠臣蔵(下)』新潮社
皇國擁護基金献納の碑(泉岳寺)
五味康祐『薄桜記』新潮社(1)
五味康祐『薄桜記』新潮社(2)
五味康祐『薄桜記』新潮社(3)
表忠碑(泉岳寺)

安藤健二『パチンコがアニメだらけになった理由』洋泉社

 インタビューで最初に登場するのが杉作J太郎(P14)。しかも、パチンコで勝ってホテル代を支払った話(P17)など、本書のテーマとは関係ないエピソードが出てきます。
 いきなりこれで大丈夫かな…と危惧したのですが、続いてアニメライター(P17)やパチンコ店の元従業員(P33)、パチンコ雑誌の元編集長(P36)と、「業界関係者」が登場して一安心。そして、フィールズ株式会社(『エヴァンゲリヲン』のパチンコ台の販売会社)や三共(パチンコメーカー大手)などから取材拒否に遭いながらも、タイヨーエレック(『BLOOD+』のパチンコ台のメーカー)サンセイR&D(『牙狼』のパチンコ台のメーカー)、XEBEC(ジーベック。アニメ制作会社)などにインタビューしています。

 さて、本書の最後で「オタク向けアニメがパチンコになる理由」として以下の2点を挙げています。

(1)映像コンテンツが欲しいパチンコ産業
(2)ライセンスマネーとリバイバル効果に期待するアニメ産業

 そして、「この2点で、パチンコ業界とアニメ業界の利害が一致したのが原因だった」(P214)と述べています。
 それから著者は最後に、「末期症状の患者同士の延命治療は、いつまで保つのだろうか」(P216)と、暗い未来を予想して締めくくっています。
 愚考するに、クールジャパンの一つとして期待されているアニメ産業はともかくとして、一方のパチンコ産業は衰退傾向のまま(遊戯人口は減り続けている)ですから、暗い未来予想図はあながち間違った見方ではないのかもしれません。

【参考文献】
安藤健二『パチンコがアニメだらけになった理由』洋泉社

あきれたグルメ探検隊・著『あきれたグルメガイド バカ盛り伝説デラックス!! 首都圏版』株式会社毎日コミュニケーションズ

 首都圏のバカ盛りグルメ(とんでもない量の料理)のガイドブック。
 私は体格がいいので大盛りくらいならば平気で食べられるのですが、本書で取り上げられているバカ盛りは食べたことがありません。
 それでは一つ挑戦してみようかと本書をチェックしてみると…やっぱりやめとこうかな。バカ盛り度1ならばまだしも、バカ盛り度3くらいになると素人には無理だというくらい多量です。例えば餃子100個(P24, 餃子会館 磐梯山)なんて私には1日かけても食い切れるものではありません。
 でも、バカ盛り以外にも量の多いメニューは結構ありますな。例えば「梅もと」(P30)のつけ麺「ブラックホール盛(10玉1500g)700円」とか、「エルアミーゴ」(P60)の「300gステーキ 1980円」とか…。まあ、これでもキツイっちゃキツイんですがね。

【参考文献】
あきれたグルメ探検隊・著『あきれたグルメガイド バカ盛り伝説デラックス!! 首都圏版』株式会社毎日コミュニケーションズ

チェーホフ「中二階のある家」

あらすじ…田舎で無為の生活を送っていた風景画家は、ふとしたことから中二階のある家・ヴォルチャニーノワ家の人たちと出会い、交流を重ねる。

 ヴォルチャニーノワ家は母親のエカチェリーナ・パーヴロブナ、その娘リジア(姉)とジェーニャ(妹)の3人暮らし。リジアは小学校の教師で積極的に社会活動をしており、第3話では主人公と議論しています。
 このあたりの討論はマルクシズムにかぶれた学生にとっては思索の材料になるかもしれませんが、その方面からのアプローチなら山のようにあるはずだと思うので、ここでは素っ飛ばします。

 今回ここで取り上げるのは、第4話で描かれる、主人公のジェーニャに対する恋および失恋です。
 この恋はリジアの反対によって終わりを告げるのですが、これについてはリジアの方を弁護せざるをえませんな。そもそも反対の理由を考えるに、第3話で描写された意見の相違のみならず、主人公の生活能力の無さも理由の一つになっていたんじゃないでしょうか。
 何しろ彼はそこでは働いていませんからね(これは推測ですが、彼はスランプに陥っていて田舎に逼塞していたのかもしれません。しかしもしそうだとしても、リジアはそれに深い理解を示してくれるだろうか?)。せいぜい働きらしいものといえばスケッチをする(P17)くらいですが、それだって金になるとは限らない。
 小学校の教師というカタギのリジアにしてみれば、大事な妹をそんな男の嫁にやるなんてもってのほか、と考えてもおかしくはありますまい。

【参考文献】
チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』新潮社

天中原長常南山(中野得信?)・編『山家鳥虫歌(さんかちょうちゅうか)』

 江戸時代の全国民謡集。
 その中の一首を紹介します。

8 忍ぶ道には粟黍植へな あはず戻ればきび悪い(P61,山城国風)

 夜這いか不倫の密通か、あるいはその両方を含めているのか、ともかくも人目を忍んで男が女のもとへ通ってくる。その通り道に女が粟(あわ)と黍(きび)を植え、「あはず戻ればきび悪い(会わずに引き返せば気分が悪くなる)」という呪いを男にかけて、夜離れ(よがれ。男が通いに来なくなること)を防止しようとしているわけですな。
 当時の山城国の農村にはそんな呪術があったのか、なるほどねえ…と思いましたが、現代の、殊に市街地ではこんな呪術は使えません。
 そこで現代のガーデニングでも可能な呪術を考案してみました。もちろん粟黍と同様に駄洒落を用います。

「自宅の袖(門やドアの左右の端)にバラを植える」

 即ち、私を袖にしたら(捨てたら)バラす(暴露する、もしくはブチ殺す)という意味の呪術(脅迫?)です。
 尚、念のために言っておきますが、これはほんの思い付きですので、本気にしないように。

【参考文献】
友久武文・山内洋一郎・真鍋昌弘・森山弘毅・井出幸男・外間守善校注『田植草子 山家鳥虫歌 鄙廼一曲 琉歌百控 新日本古典文学大系62』岩波書店

リリアン・デ・ラ・トーレ「重婚夫人」

あらすじ…1778年、キングスフォード公爵夫人が重婚容疑で裁判にかけられることになり、ジェイムズ・ボズウェルがサム・ジョンスン博士の助けを借りて彼女を弁護する。

 本作品では18世紀イギリスの貴族院で裁判が展開されます。こういうのはシャーロック・ホームズあたりではちょっとお目にかかれないから、(私にとっては)新鮮といえば新鮮かもしれませんな。
 ちなみにこの作品の元ネタはキングストン公爵夫人エリザベス・チャドリー(Elizabeth Chudleigh, Duchess of Kingston)の重婚裁判ですが、イギリスでの出来事だけにこの事件に関する情報は英文サイトの方が充実しています。詳しく知りたい方は英和辞典もしくは翻訳ソフトが必要になってくるかもしれません。

【参考文献】
エラリイ・クイーン編『クイーンズ・コレクション2』早川書房

近松門左衛門『女殺油地獄』

あらすじ…油を商う河内屋の道楽息子・与兵衛は、放蕩と数々の悪行により勘当される。そしてある夜、同業のてしま屋の女房・お吉に借金を申し込むも断られ逆上、お吉を殺して店の金を奪い逃走する。

 本作は上之巻・中之巻・下之巻の三部構成になっており、中之巻の最後で与兵衛は勘当され、下之巻でクライムサスペンスになります。もちろん上之巻・中之巻を読んでおくに越したことはないのですが、下之巻だけを読んでもスリリングさを味わうことができます。

 さて、ここからさきは少々のネタバレになるのでご注意を。
 お吉が殺されてから「三十五日の逮夜」(P216)の段階で、てしま屋に来ていた帳紙屋五郎九郎が「殺し手も其内知れませう」(P217)と言っていることから、彼らは誰が犯人なのか知らなかったようです。しかし同夜に与兵衛が逃げようとするのを、店の前で奉行所の役人が捕えているので、捜査当局は与兵衛が犯人だと目星を付けて張り込んでいたものと思われます。
 これは私の推測ですが、証拠品となる「血に染まつたる書出し一通」(P218)がなくても、捜査線上に与兵衛が浮かび上がるのはそれほど難しいことではないでしょう。
 犯行現場には犯人が持ってきた樽が残されている(らしい)ことから、犯人は夜でもその店から油を購入することのできる人物、即ち顔見知りの可能性が高い。それでは、顔見知りの中で怪しい人物はといえば…色々と悪いことをやらかしている与兵衛ですな。
 しかもこの与兵衛は勘当されている身で素寒貧のはずなのに女郎遊びを続けているし、更には犯行のあった五月四日の夜に方々の借金を返済しています(P216)。これはもう怪しすぎるのを通り越して自ら犯行を認めているようなものです。

【参考文献】
松崎仁・原道夫・井口洋・大崎正叔『近松浄瑠璃集 下 新日本古典文学大系92』岩波書店

近松門左衛門『双生隅田川(ふたごすみだがわ)』

あらすじ…平安時代後期、吉田の少将藤原行房は日吉大社の大鳥居の造営を命じられる。行房の妻の兄で奉行の常陸の大掾百連が、集められた材木の質が悪いと文句を言う。とそこへ、執権(家老)の勘解由兵衛景逸が見事な杉の木材を運び込んでくる。比良の魔所で切り出してきたのだという。

 あらすじは序盤までにとどめておきましたが、この後、梅若と松若が実は双子であると明かされたり、行房の妻が殺されたり、比良の大天狗が松若を拉致したり、掛軸の鯉が逃げ出したり、班女が裁判で発狂したりと、一々書いていられないくらい込み入ってきます。とりあえず理解の一助として人物相関図を載せておきます。

双生隅田川

 尚、梅若・松若は梅若丸・松若丸とも表記するようですが、注釈や解説文では梅若・松若と表記されていたのでこれにならいました。

 さて、本作は謡曲「角田川」を源流として近松がアレンジを加えたものですが、その特色の一つに「梅若と松若は双子」というものがあります。双子で容姿がそっくりであるため、母親(班女)でさえも見間違えるくだり(P73-74)が出てきます。
 とはいえ、双子であることによる取り違えは、シェイクスピアの『十二夜』ほど頻出するわけではないので、双子という設定を『十二夜』ほど活用しきっているとは言いがたいようです。

【参考文献】
松崎仁・原道夫・井口洋・大崎正叔『近松浄瑠璃集 下 新日本古典文学大系92』岩波書店

宮崎正弘『オレ様国家・中国の常識』新潮社

 本書は2011年1月15日発行。これは薄熙来が失脚する前であり、薄熙来については本書では「五中全会前に薄は権力闘争からはじかれ、はぐれ狼的存在となった」(P70)と述べるにとどまっています。要するに失脚の前段階として、補給路を絶たれ外堀を埋められたような状態でしたか。

 ところで、本書の第二章では、西太后が義和団を利用し、袁世凱は学生運動を利用し、毛沢東は紅衛兵を利用して、いずれも用済みになると捨てたことを挙げて、こう述べています。

 同様にいまの愛国主義に酩酊する若者は「オンライン紅衛兵」そのものであり、いずれは党に敵対するだろう。なぜなら「愛国」を鼓舞する共産党が本当に狙っているのは「愛国」ではなくて「愛党」だけであり、人民解放軍は「国軍」ではなく党のプライベート軍隊であり、その矛盾に愛国思想を突き詰めていけば必ずぶつかり、愛国青年らが党へ反旗を翻すのは目に見えているからだ。(P106)

 なるほど、憤青たちはいずれ党の敵対者として弾圧されることになるんだろうか…。もちろん彼らは、
「小日本が何を言うか。我らが偉大なる祖国と偉大なる共産党が、我々のような愛国者を裏切るはずがない!」
 と獅子吼するかもしれません。本気でそう信じているのか、あるいは信じるふりをしているだけなのかはわかりませんが。
 そんな彼らが、党からの弾圧を免れるにはどうすればいいのか? まことに勝手ながら、三つほど考えてみました。

(1)愛国者であることを捨てて愛党者になる
 党が求めているのが「愛党」だというのなら、それに徹底的に従う。党は「愛党者」を愛国者ほど危険視しないでしょう。うまくいけば党の走狗としてこき使ってくれるかもしれません。尤も、走狗ならばまだしも、捨て駒にしてくるかもしれませんが。

(2)自分たちの旗頭に、高級幹部の子弟を担ぐ
 いわば高級幹部の子弟を人質に取るようなもの。自分たちを弾圧すればその高級幹部にも累が及ぶぞという無言の圧力になります。
 尚、担ぐ対象はバカである方がよい。我が国の政治家曰く「御輿は軽くてパーがいい」と。頭がいい奴だと逃げられるか乗っ取られる危険性があるからです。

(3)やられる前にやれ
 権力者によって叩き潰される前に、自ら権謀術数渦巻くパワーゲームに身を投じる。そこで権力闘争を勝ち抜いていけば、強大な権力を手中にし、莫大な財産を蓄えることができるはずです。
 まあ、外国人の私には中国の権力闘争に参加する方法なんか知らないし、よしんば憤青たちが知っていてしかもコネがあったとしても、戦う相手は海千山千の妖狐古狸。彼らに勝てる可能性は限りなく低いと言わざるをえませんがね。

 尚、これ以外にも「軍隊に入る」「ノンポリになる」等の選択肢が考えられますが、とりあえずこれくらいにしておきます。

【参考文献】
宮崎正弘『オレ様国家・中国の常識』新潮社

『一休ばなし』

 一休宗純のエピソード集。ただし、「本来一休と無関係であった咄が付会され」(P322)ている模様。とはいえ、学究ならばともかく、凡俗の一読者ならその辺はあまり気にせずに楽しんで読みたいものです。かくいう私もどれが後世の付会かなどは判断せずに読みました。
 ちなみに本書には、あの有名な「このはしわたるべからず」のエピソードがあります(P326-327)が、寧ろ多いのは成人後のエピソードであり、ここでは「大人の一休さん」を「賞味」することができます。
 というわけで、まずは軽い下ネタを含む一種を紹介します。尚、ハコとは大便の意。

 世の中は食ふてハコして寝ておきてさてそのゝちは死ぬるばかりよ(P335)

【拙訳】
 世の中は、食べてクソして寝て起きて…。まあ、そのあとは死ぬくらいだね。

 この他にも一休和尚のフリーダムすぎる言動がたくさんありますが、続いては重量級の下ネタ。一休作の狂詩(狂体の漢詩)です。

  男根
一生忍衆動焦身
八寸推根尚勝人
入道修行若時事
須臾老去革頭巾

  (P422-423)

【拙訳】
  チ○コ
一生、人目を忍んで、ややもすれば身悶えのもととなる。
八寸のイチモツはおそらく他人よりデカイ。
仏道に入って修業したのは若い頃のことだ。
一瞬のうちに年老いて、(イチモツは)革頭巾になっちゃった。

 …ん? 八寸だと!? 一寸が3.03cmだから、一休さんの男根の長さは24.24cmということになります。これは日高良司(23cm)やビリー・ヘリントン(9インチ≒22.86cm)を超えるサイズです。
 つまり、一休さんは巨根だったのか!

【参考文献】
渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集 新日本古典文学大系74』岩波書店

カウボーイ&エイリアン(2011年、アメリカ)

監督:ジョン・ファヴロー
出演:ダニエル・クレイグ、ハリソン・フォード、オリヴィア・ワイルド
原題:Cowboys&Aliens
備考:西部劇&SF

あらすじ…一人の男が砂漠で目を覚ます。男は記憶を失っており、左腕に謎の腕輪を着けていた。

 カウボーイとインディアンの戦士たちがエイリアンと死闘を繰り広げるわけですが、この映画のエイリアンは地球人よりはるかに優れた科学を持っており、身体能力も高いです。
 しかしこのエイリアン、全裸です。パンツくらいはけよ。
 しかも、エイリアンが使う武器といえば小型飛行機と、ショット弾が出せる腕輪が登場するくらいで、近接戦闘では爪を突き刺したり牙で噛み付いたりしています。…ホントに地球人より優れた科学を持ってんの?
 まあ、科学や軍事などの知識が豊富な人なら、他にも色々と突っ込みを入れられそうですな。

カウボーイ&エイリアン

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