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謡曲「黒塚」

あらすじ…山伏二人が安達原の一軒屋に泊まる。その家の女主人は閨の内を覗いてはならないと言って薪を取りに外へ出る。伴の能力(のうりき。寺で力仕事をする男)が閨の内を覗くとそこにあったのは…!!!

 覗いてはならぬと言われた場所を覗いてみると、そこには…ここはやはり、原文を引用して凄まじさを直に感じてもらいましょうか。

 不思議や主の閨のうちを、物の隙より能見れば、膿血たちまち融滌し、臭穢は満ちて肪脹し、膚膩ことごとく爛壊せり、人の死骸は数知らず、軒と等しく積み置きたり(P506)

 さすがは安達ヶ原の鬼婆(※1)です。
 でも、疑問点が一つ。それだけ人間の腐乱死体が積み重なっていたのなら、腐敗集が物凄いことになっているはずで(※2)、能力が覗く前に誰も異臭に気付かないのはおかしいですな。

※1.本文中では「鬼」「鬼女」と表記。鬼婆とは書いてありませんが、この際たいした違いはありますまい。
※2.現代でも、マンションの一室から異臭がするので調べてみたら人間の死体があった、という事件があったりします。一体だけでもそれだけ臭うのに、ましてや死体の山となるとどれほどのものやら…。

【参考文献】
西野春雄校注『謡曲百番』岩波書店

【関連記事】
武田静澄著『日本の伝説の旅(上)』社会思想研究会出版部(3)安達ガ原の黒塚

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