田園に死す(1974年、日本)
監督:寺山修司
出演:菅貫太郎、高野浩幸、八千草薫、原田芳雄、斉藤正治、春川ますみ、新高恵子、三上寛、木村功
原作:寺山修司
あらすじ…恐山に近い村で育った主人公の少年は、村にやってきたサーカスから外の世界を知り、人妻と駆け落ちするように村を出る…という自伝的映画を作る。だが、現実はそんなものではなかった。主人公の男は20年前にタイムスリップし、母を殺そうと企む。
上記をあらすじを読んで「?」と思った人もいるかもしれませんが、映画の内容はもっとわけがわかりません。なぜ顔を白く塗っているのかとか、なぜ川から雛壇が流れてくるのかとか、寺山修司の著作物や研究本などを調べれば意味がわかってくるでしょうが、映画を観ただけではわからない小ネタが満載となっています。
だがしかし、そのわけのわからなさが魔術的魅力を持っていることは確かで、思わず二回観てしまいました。映画を観終えた後も「あれは何だったんだ?」と考えてしまい、そういえばその点ではフェデリコ・フェリーニ監督の「サテリコン」を観た時と同様だったなと感じました。
ちなみにわけがわからないと言いましたが、それでも(私のような者でも)わかったことがあります。
最後の方で少年が、赤ん坊を間引きした女に逆レイプされますが、その時の少年の左腕に腕時計が着いていて、行為を終えた後には一瞬ですが大きく映してさえいます。
これはその前のシーンでの、20年後の自分との会話を憶えていれば理解できます。もうレンタルビデオを返却してしまったので会話の内容は記憶を頼りにするしかないのですが、たしか少年が「僕は明日にでも腕時計を買うことができる。そうすればあなたとは違った生き方ができる」といった趣旨の発言をしています。
だとすればこの腕時計は、20年後の主人公が生きた過去とは別の道を少年が歩み始めたことを象徴的に示しているわけです。
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