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伊豆の踊子(2002年、日本)

出演:後藤真希、小橋賢児、保田圭、辻希美、渡辺いっけい、大杉漣、国分佐智子、石黒賢、片平なぎさ
原作:川端康成『伊豆の踊子』
備考:モーニング娘。新春!LOVEストーリーズ

あらすじ…昭和の初め、伊豆の温泉町を回る旅芸人の一座があった。中でもひときわ目をひく踊り子の薫(後藤真希)と通りすがりの書生(小橋賢児)はお互いの視線を意識する。住む世界の全く異なる薫と書生は徐々にほのかな思いを通わせていくが…。(パッケージ裏の紹介文より引用)

 原作の小説との相違点は色々とありますが、とりあえず3点挙げておきます。

(1)アイドルムービーなので、主人公が書生(♂)ではなく薫(ゴマキ)になっている。
(2)アイドルムービーなので、入浴シーンが出てくる。
(3)奈津(保田圭)なる人物との別れのシーンが登場する。

 まず(2)についてですが、あの入浴シーンはストーリーに何ら脈絡なく挿入されるのではなく、子供っぽい薫に女性であることを意識させる演出になっていて、「性の目覚め」を表現しています。そう考えると、ただ入浴シーンを適当に挿入するよりはエロい。
 それから(3)ですが、この奈津は薫の友人で、いかがわしい場所に務めていたのを、九州へ売り飛ばされるということです。貧しさゆえに体を売る娼婦ですな。ここでは少し擦れた感じの保田圭が見られます。
 最後に、3点のうち最も重要な(1)について。主人公を薫に変えるのは別にいいのですが、このドラマでは原作にあった書生の心の変化というものがどこかへ行ってしまっています。小説『伊豆の踊子』の持ち味の一つが失われていると言っていいでしょう。
 でもまあ、そもそもこれはモー娘。のアイドルムービーなのだから、男の方が目立っちゃいけないのか。

モーニング娘。新春!LOVEストーリーズ

J・W・キャンベルJr.「遊星からの物体X」

あらすじ…南極探検隊が氷に閉ざされた宇宙人を発見し、基地に持ち帰る。その宇宙人は死んでいるものと思われ、詳しい調査のために解凍されることになったが…。

 実はこの時、探検隊の一行は宇宙船も発見しているのですが、宇宙船の入口(エアロック)の氷を砕こうと爆薬を使用したところ、宇宙船に引火して大炎上してしまいました。
 ちょっと待てよ。そんなもろい耐火性の機体で、よく大気圏を突破できましたねえ。

 さて、探検隊に話を戻すと、独断で宇宙船を燃やしてしまう連中だから、氷漬けの宇宙人を基地に持ち帰っても、事前に無線で外部に連絡することなく基地の人間たちだけでこれを解凍することを決めています。それが惨劇になるとも知らずに…。

 ちなみに、本作はこれまで三回も映画化されているとか(ソース:本書巻末の解説)。私の記憶が確かなら、私はまだ一本も観ていないのでこの点については現段階で何とも言えません。そのうち観てやろうか…いや、他にも観たいのがあるからなあ…。

【参考文献】
J・W・キャンベルJr.他『クトゥルフ神話への招待 遊星からの物体X』扶桑社

【追記】
 その後、映画「遊星からの物体X ファーストコンタクト」を視聴しました。

アガサ・クリスティー『白昼の悪魔』早川書房

あらすじ…避暑地スマグラーズ島で元女優アリーナ・マーシャルが殺された。そこにたまたま居合わせたエルキュール・ポアロが捜査に乗り出す。

 本書の巻頭の登場人物一覧の説明文ではわかりにくいところがあります。そこでとりあえず容疑者たちの人間関係を図にまとめてみました。

Photo_2

 こうして見ると、アリーナ・マーシャルが嫌われすぎているのがよくわかります。
 さて、今回私は、ケネス・マーシャル大尉のある証言の嘘を見抜くことができました。マーシャル大尉の部屋を図に描いてみると…おっと、ここから先は伏せておくことにしましょう。
 それから念のために付け加えておきますが、私は別に彼が犯人であるとも犯人でないとも言っているわけではありません(まだ読んでいない人のために真犯人の正体は伏せておきます)。真犯人が嘘をついているのは当然ですが、結果的にシロと判明した人たちだって何らかの事情により嘘をつくことがある…これはアガサ・クリスティーの作品を読んでいれば珍しいことではないのです。

【参考文献】
アガサ・クリスティー『白昼の悪魔』早川書房

ラムジー・キャンベル「魔女の帰還」

あらすじ…魔女グラディス・ショロックが住んでいた屋敷に、作家のノーマン・オーウェンが引っ越してくる。その屋敷の二階には開かずの間があって、ノーマンは早速そこへ入ろうとするのだが…。

 魔女の霊に操られたノーマンは、魔女の死体を自宅に運び込んでまた元に戻すのですが、驚くべきことにそれをたった一人で成し遂げています。墓を掘り返して棺を取り出し、それを墓地の外の車まで引きずって行き、棺を車に乗せ、車を運転して自宅前へ着け、そこから棺を引きずって自宅へ運び込み、棺を開け…そして今度は逆の手順で棺を運んで埋め戻す…。
 そんな重労働をやったら翌朝はヘトヘトになっているはずなのですが、どうもノーマンはそうなっていないようです。

【参考文献】
J・W・キャンベルJr.他『クトゥルフ神話への招待 遊星からの物体X』扶桑社

ラムジー・キャンベル「ヴェールを破るもの」

あらすじ…ケヴィン・ウィルソンはひょんなことからヘンリー・フィッシャーと知り合い、彼の家で異星の神ダオロスを召喚する儀式に参加する。

 初対面の人間を自宅に連れ込んで大事な儀式に立ち会わせるフィッシャーも問題ですが、ホイホイついていくケヴィンも問題ですな。
 常識から考えるならば、ここはやはり、ある程度の交遊をあたためておいて「この人物を参加させても大丈夫だろうか?」と見きわめてからでも遅くはないんじゃないかと思ってしまいます。

【参考文献】
J・W・キャンベルJr.他『クトゥルフ神話への招待 遊星からの物体X』扶桑社

寺山修司『誰か故郷を想はざる』角川書店

 映画「田園に死す」がワケのわからない作品であったため、この人の著書を読めば何かわかるかと思い、本書を手に取ってみました。本来ならば原作の方をこそ読むべきなのですが、近所の図書館をちょっと探したら適当なのがこれくらいしかなかったので「まあ、とりあえずはこれでいいや」と思った次第。
 それでも本書を読んでいて少しはわかるところがあります。例えば、

 私は小学校に入る頃には、鞍馬天狗の大ファンになっていた。(P16)

 という一文があって、それを読んで「ああ、映画の最初の方に出てくる覆面姿の侍(の幻)は鞍馬天狗だったのか」とわかりました。そもそも古い時代劇ファンならあのシーンを観ただけで鞍馬天狗だと看破できるでしょうが、私は「現役」の鞍馬天狗を映画館でもテレビドラマでもましてやレンタルビデオですらも観たことがないので気付かなかったのです。
 それからP65-68には母親を殺した李庚順を詩にうたったくだりが書かれており、ここには母殺しの思想の萌芽が見て取れます。
 その他にも映画の冒頭のかくれんぼに通じるくだりが「かくれんぼ」(P75-77)に書かれていたりと、丹念に読んでいけば多少なりとも映画に通じる箇所が見つかることでしょう。

【参考文献】
寺山修司『誰か故郷を想はざる』角川書店

王の男(2005年、韓国)

監督:イ・ジュンイク
出演:カム・ウソン、イ・ジュンギ、チョン・ジニョン、カン・ソンヨン

あらすじ…16世紀朝鮮。大道芸人のチャンセンとコンギルは都に出て、国王の燕山君を風刺した劇をやって人気を得るが、王を笑わせなければ死罪に処せられることになり…。

 韓流ホモ映画。

 綱渡り等のシーンでは別撮り(スタントマンが別にいる)だとわかりますが、映画俳優にあれほどの曲芸をやらせるのは無理なのでそこは大目に見るとしましょう。

 最後に一つ。チャンセンとコンギルはデキてるだろ。

【ホモ映画】
エドワードII

シャーロック・ホームズの冒険:まがった男(1984年、イギリス)

監督:アラン・グリント
出演:ジェレミー・ブレット、デビット・バーク、ノーマン・ジョーンズ、デニス・ホーソーン、リサ・ダニエリー、ポール・チャップマン
原題:The Adventures of Sherlock Holmes : The Crooked Man
備考:グラナダTV版ドラマ

あらすじ…マローズ連隊のバークリ大佐が不可解な死を遂げ、そばに倒れていた妻のナンシーに夫殺しの嫌疑がかかる。

 ホームズがマーフィー少佐に向かって"please tell me the facts."(すべての事実を話していただきたい。)と言った時のテンションが高かったり、更にマーフィー少佐の話を聴いている間もドアを開けたり室内を調べたりと、落ち着きがない。どうやらこの時のホームズは躁状態にあるようです。
 まあ、シャーロック・ホームズの奇矯な振る舞いは今に始まったことではないから(例:"V.R.")、このくらいはまだまだ「常識の範囲内」かもしれません。

シャーロック・ホームズの冒険 完全版 DVD-BOX

【関連記事】
シャーロック・ホームズ(目次)

シャーロック・ホームズの冒険:踊る人形(1984年、イギリス)

監督:ジョン・ブルース
出演:ジェレミー・ブレット、デビット・バーク、テニエル・エバンズ、ベッツィ・ブラントレー、ユージン・リピンスキー、ウェンディ・ジェーン・ウォーカー
原題:The Adventures of Sherlock Holmes : The Dancing Men
備考:グラナダTV版ドラマ

あらすじ…ダービシャー州の旧家キュービット家に奇怪な落書きが描かれ、それを見たエルシー夫人は怯える。夫のヒルトン・キュービットはホームズに相談するが…。

 「踊る人形」は暗号解読で有名な作品です。
 ただし、ここで使われる暗号は、
(1)人形のポーズがそれぞれアルファベットに対応している。
(2)単語を区切るところで旗を持つ。
 という、暗号としてはさほど難解なものではありません。もっとも、難解にしてしまったら暗号文の作成にも解読にも手間取って使いこなせないでしょうが…。

シャーロック・ホームズの冒険 完全版 DVD-BOX

【関連記事】
シャーロック・ホームズ(目次)

三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(2011年、仏米英独)

監督:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ローガン・ラーマン、レイ・スティーヴンソン、マシュー・マクファディン、ルーク・エヴァンス、オーランド・ブルーム、ミラ・ジョヴォヴィッチ
原題:The Three Musketeers
原作:アレクサンドル・デュマ
備考:痛快娯楽アクション時代劇

あらすじ…17世紀フランス。田舎からパリに上京したダルタニアンは色々あって三銃士と共に王妃の首飾りを取り戻すべく奮闘する。

 この時代に飛行船なんて無いだろ、などというツッコミは野暮というものですな。そもそも設計図一枚だけで作れるシロモノじゃない。又、ルイ13世は飛行船を見た時に驚いていますが、あんなに巨大なものが空に浮かんでいるなら、必ず事前に報告がフランスのみならずヨーロッパ各国へ行くはずです。
 しかしながら、このようにツッコミどころはたくさんありますが、そういうものはあまり気にしない方がいいでしょう。これはそういう作品なのですから。

三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

ライアン・ラーキンの世界(2004年、カナダ)

監督:ローレンス・グリーン
原題:Alter Egos
備考:ドキュメンタリー

 クリス・ランドレス監督作品「ライアン」の続篇ともいうべきドキュメンタリー作品。ただしこちらは実写です。

 クリスがライアンへのインタビューをもとに作った「ライアン」をライアン本人に見せています。この時のライアンの反応を一言で表わすなら、困惑、といったところでしょうか。自分の現在のみじめな境遇を描写されるだけならまだしも(いや、たとえ覚悟はしていても結構こたえるかもしれない)、あそこまで色々と欠落した姿に「料理」されちゃいましたからね。即座に呑み込めという方が無理な話でしょう。

ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション

ライアン(2004年、カナダ)

監督:クリス・ランドレス
原題:Ryan

あらすじ…アニメ作家のクリス・ランドレスがライアン・ラーキンにインタビューし、もう一度アニメを作らないかと持ちかける。

 ドキュメンタリータッチの3DCGアニメ。
 DVD「ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション」収録作品で最初に出てくるのはこれであり、ライアン・ラーキンについてとりあえず知りたい人は、まずはこちらをご覧下さい、といったところでしょうか。

ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション

スペア・チェンジ 小銭を(2008年、カナダ)

監督:ライアン・ラーキン、ローリー・ゴードン
原題:spare change

あらすじ…ホームレスのライアンは、物乞いで小銭(スペア・チェンジ)を手に入れるべく聖ペテロ教会へ行く。

 後半の音楽が流れるシーンでのトリップ感は…薬物によるものなのか?
 しかも、最後にライアンは鳥になって空の彼方へ…って、もう戻ってこないのですか。ああ、そうか、ライアンは冥土へ旅立ってしまったんでしたっけ。合掌。

ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション

ウォーキング(1968年、カナダ)

監督:ライアン・ラーキン
原題:Walking

 特にこれといったストーリーはなく、男が延々と歩いています。ひょっとしたら画面の向こう側を見通すぐらいの観察力を以てすればストーリーがわかるのかもしれませんが、私にはそこまでの力はありませんでした。
 さて、最初の方で、遠近法で描かれた一枚絵をズームアップすることで、あたかもその中を進んでいると思わせる演出があります。なるほど、そういう手法もあったのか。絵が一枚で済むという安直さはありますが、低予算・少人数の製作ならそれも悪くないかもしれません。

ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション

シランクス(1965年、カナダ)

監督:ライアン・ラーキン
音楽:ドビュッシー
原題:SYRINX

 牧神パンがニンフのシュリンクス(シランクス)を追いかけるが彼女は逃げ、ついには葦となる。パンはその葦で笛(パンパイプ)を作り、シュリンクスと名付ける…というギリシア神話の1エピソードをアニメ化したもの。

 パンがシランクスに抱きついたと思ったら、それが水であったり岩であったり…。まあ、彼女は彼女なりに逃げているのでしょうが、ヌルヌルした動きもあってか、あまり逃げているという感じはしません。まるでパンが幻覚を見ているんじゃないかとさえ思えてきます。

ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション

田中慎弥「蛹」

あらすじ…とあるカブトムシの幼虫が蛹(さなぎ)になるものの、他の仲間が次々に成虫となる中で自分だけ蛹のままであった。そうして月日が経ち…。

 いわゆる冬虫夏草です。でも、芽が出てそれが大木になってもまだ虫としての意識を持っているものなのですか。

【参考文献】
田中慎弥『切れた鎖』新潮社

田中慎弥「不意の償い」

あらすじ…後に妻となる女性と初めてのセックスをした夜に火事でそれぞれの両親4人を失ってしまった主人公の男は、そのことに疚しさを抱えて生きていたが、妻の妊娠を知り…。

 主人公が「疚しさ」に苦しみ、苦しむのみならず妄想に取り憑かれてどんどんおかしくなって行きます。見ていて、いや、読んでいて痛々しいったらありゃしない。
 この作品は短篇だからまだいいようなものの、もしも長篇だったらそれだけ長々と苦悶や狂気を見せつけられるわけですから、ドMじゃない私は途中で投げ出していたことでしょう。

【参考文献】
田中慎弥『切れた鎖』新潮社

田中慎弥「扉の向うの革命」

あらすじ…陸軍司令官が首相のもとを訪れ、クーデターを起こしたことを告げる。

 どうせなら首相の身柄を拘束して外部と連絡を取れないようにすればいいのに。あ、でも、司令官が「閣下にはもはや、脅される資格すらありません」(P107)と言っていることから、ひょっとしたら拘束する価値なしと見なしていたのかもしれません。随分とナメられたものだ。

【参考文献】
田中慎弥『田中慎弥の掌劇場』毎日新聞社

田中慎弥「うどんにしよう」

あらすじ…日曜日に家に一人取り残された父親が、テレビで野球を見ながらうどんを作る。

 「嬉しかった」(P23)、「また、嬉しくなった」(P24)などと、どうも幸せそうです。一人でせいせいしているんでしょうかねえ。

【参考文献】
田中慎弥『田中慎弥の掌劇場』毎日新聞社

田中慎弥「男たち(一幕)」

あらすじ…男たちが舞台の上で盛んにしゃべる。

 登場人物の名前は苗字のみですが、会話から推測すると以下の通り。
 麻生太郎、金正日、バラク・オバマ、小泉純一郎、三島由紀夫、太宰治、石原慎太郎、吉田茂、鳩山一郎、シルヴィオ・ベルルスコーニ。合計10人。
 ちなみに麻生のセリフに「お前のところと違ってこっちには選挙ってものがある。それがもうすぐだ。」(P28)とあることから麻生政権末期の話かとも思いましたが、ずっと昔に死んだ人たちも出ているからそうとも言い切れない。まあ、時間を超越した世界なのでしょう。

【参考文献】
田中慎弥『田中慎弥の掌劇場』毎日新聞社

アガサ・クリスティー『五匹の子豚』早川書房

あらすじ…16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです――娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。(裏表紙の紹介文より引用)

 本作では序章で依頼人(カーラ・ルマルション)から依頼を受け、第一部の前半で事件を担当した弁護士や検事などへの聞き込み、第一部の後半では事件の主要な関係者5人への聞き込みと手記の依頼、第二部ではその5人の手記、第三部ではポアロの謎解きとなっています。

 ところで、本書のタイトル「五匹の子豚」(Five Little Pigs)は童謡「This little pig went to market」に由来します。イギリス人やアメリカ人の読者ならこの童謡を知っているでしょうが、日本人の読者は知っている人は少ないのではないでしょうか。かくいう私も本書で初めて知りました。
 そこで本書を読む際の参考として、この童謡の動画のURLを貼っておきます。尚、歌詞は当然のことながら英語ですが、童謡なので中学生レベルの英語力でも充分理解できます。

http://www.youtube.com/watch?v=Lx0KTEtFpb4

【参考文献】
アガサ・クリスティー『五匹の子豚』早川書房

シチェファン・フスリツァ「カウントダウン」

あらすじ…近未来。民主主義急進派の戦闘的平和団体がヨーロッパ各地の原子力発電所を占拠し、要求を受け容れなければ原子力発電所の原子炉を爆破するぞとヨーロッパ諸国を脅迫する。各国はその要求を受け容れることができず、滅亡へのカウントダウンが始まる…。

 その団体が要求していることは以下の通り。

「我々は、中国共産党体制に対して民主主義のための戦争を布告するように要求する。地球上で最も人口が多い国民の基本的人権を認めないばかりか、地球上のすべての反民主主義的体制を支援しているその体制に対して!(中略)さあ、カウントダウンが始まった!」(P117)

 そういうことは中国政府に直接言えよ。なぜヨーロッパを巻き込むんだ? それだけの軍事力があるなら自らが中国と戦えばいいのに。
 ちなみに、私があらすじの項で物語の舞台を近未来と言ったのは、作品中に「カダフィJr.」(P122)や「火星に滞在中のアメリカ人宇宙飛行士」(P126)といった語句から推理したものです。現実世界ではリビアのカダフィ大佐は嬲り殺しにされましたが、こちらの世界では権力の世襲が行われたようだし、宇宙への進出もそれなりに成功しているようです。

【参考文献】
高野史緒◎編『21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集 時間はだれも待ってくれない』東京創元社

ヘルムート・W・モンマース「ハーベムス・パーパム(新教皇万歳)」

あらすじ…西暦2866年、ローマ教皇ベネディクト17世が死去し、コンクラーベ(教皇選出会議)が開催される。そのコンクラーベの枢機卿団の中には、宇宙人やロボットなどもいた。

 ここでのカトリックは、宇宙時代に適応しているようです。何しろ、ロボットの聖職者もいるし、宇宙人に対する布教で信者を相当数(しかも広範囲に!)獲得しているほどですから。
 よくもまあそんなに遠いところまで…と思いましたが、よくよく考えてみればフランシスコ・ザビエルやルイス・フロイス(※)のような宣教師がいたわけですから、遠未来にも遠い異世界への伝道を目指す宣教師がいてもおかしくはない。

※ザビエルもフロイスもイエズス会の宣教師。戦国時代に日本へやってきてキリスト教を布教した。

【参考文献】
高野史緒◎編『21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集 時間はだれも待ってくれない』東京創元社

石川栄作『ジークフリート伝説』講談社

 英雄ジークフリート(ジーフリト、シグルズ、ジグルト)がどのように生成・発展を遂げて行ったかを述べたもの。

 そういえば私は何年か前に『ニーベルンゲンの歌』を読みましたが、後半のクリエムヒルトの執念というべきものが凄まじかったことを記憶しております。
 もちろん本書でも『ニーベルンゲンの歌』が取り上げられており、第三章(P81-120)では丸々それに割いています。
 ちなみに本書の第七章(P189ー264)はワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』について述べているのですが、ここでストーリーを追うだけでもうお腹いっぱいになりました。あの重厚長大な作品を丸ごと観ようとするのは並大抵のことではありますまい。

【参考文献】
石川栄作『ジークフリート伝説』講談社

田村珠芳『宇宙人と闇の権力の闘いが始まりました』ヒカルランド

 本書によると、世界政府(ワンワールド)の樹立をめざす「闇の権力」と、地球を見守る宇宙人とが戦っている、らしい。とはいえ、我々が普通にイメージするようなドンパチではなく、どうも我々の目に見えないところでやっているようです。
 それはさておき、著者(田村珠芳)は宇宙人と会話しています。その中で「中国フグ計画」(中国を5つくらいの国に分裂させるという謀略)なるものについて触れ、

田村 フグとは、あの食べるフグのことですか?
宇宙人 そうだよ。おいしいけれど、ちょっぴり毒を持っている。
(P81)

 いやいや、ちょっぴりどころじゃなくて猛毒なんですが。あ、でも、宇宙人にはフグの毒はあまり効かないのかもしれませんな。
 他にも、こんなものがあります。

宇宙人 アメリカは、小沢一郎の息の根を止めろと鳩山首相に命令したんだ。(P88)

 無理無理。スネ夫に「ジャイアンを殺せ」って言うようなものです。あのルーピーにそんな「汚れ仕事」なんかできっこないことぐらい、ちょっと考えればわかることです。
 これ以外にも突っ込みどころ豊富なハナシが色々と出てきますが、やめておきます。いえね、闇の権力を恐れているんじゃありませんよ、ただ単にブログの記事なんだからこれくらいの長さでいいやと思ったからです。

【参考文献】
田村珠芳『宇宙人と闇の権力の闘いが始まりました』ヒカルランド

G・ガルシア=マルケス「悪い時」

あらすじ…<町>の至るところで住民のゴシップを記したビラが貼り付けられる。そしてついにはビラを見た住民の一人が殺人事件を起こす。

 ビラ事件(とりあえずそう呼んでおく)を軸に展開される群像劇。主要な登場人物は以下の通り。

・アンヘル神父…町の司祭。
・町長…元軍人で、過去に軍事力で町を制圧し、そのまま町を支配している。
・アルカディオ判事…酒と女に溺れる判事。
・ヒラルド博士…医者。
・レベーカ・デ・アシス…ロベルト・アシスの妻。カトリック婦人会の会長。
・カルミチャエール…モンティエール未亡人の仕事の管理人。
・モンティエール未亡人…「モンティエルの未亡人」の主人公。
・グアルディオーラ…床屋。
・モイセース…シリア人の小間物商。
・ドン・サバス…不正な手段で儲けている金持ち。
・セサル・モンテーロ…殺人犯。
・ロサリオ・デ・モンテーロ…セサルの妻。
・歯科医…反政府派として弾圧された過去を持つ。
・カサンドラ…サーカスの女占い師。
・トゥリニダー…教会でネズミ捕りをする女性。
・ペペ・アマドール…ビラ貼りの犯人。

 他にも色々と出てきますし、人によってはこのリストにもう何人かを加えるべきだと思う人もいることでしょうが、とりあえずこのくらいにしておきます。ともあれ、こうしてリストを作ってみると、登場人物が多いのを思い知らされます。これだけ多いと、一回読んだくらいでは誰が誰やらわからなくなってしまうかもしれません。

【参考文献】
G・ガルシア=マルケス『悪い時 他9篇』新潮社

東京都『統計グラフを作ろう』

 このパンフレットは新宿で入手しました。東京都統計グラフコンクールの案内です。
 ただし、作品紹介(P5-6)を見ると小学生の作品しかないことから、募集の対象は小学生に限られているようです。

 さて、それではこれを読んでくれたチビっ子たちのために、私から統計グラフのアイディアを少しばかり提示します。尚、ボッチでもできるような内容ばかりですのでご安心を(アンケート取るのなんか面倒臭ぇ!)。

(1)登校する間に何匹の犬と出会ったか、そして下校する間に何匹の犬と出会ったか?
 通学のついでにできてしまうという、実にお手軽なもの。ただし一日だけでは心もとないので一週間くらいは続けた方がいいでしょう。

(2)教科書に掲載されている顔写真の数
 国語、算数、理科、社会の教科書に掲載されている顔写真をカウントし、それを棒グラフで表示する。教科書嫌いでもそれくらいならできるかもしれない。

(3)冷蔵庫の中にあるものの賞味期限切れの割合
 自宅の冷蔵庫の中にある食品を全てチェックし、賞味期限が表記されていればそれが切れているか否かを調べる。この場合は円グラフがいいでしょう。
 ただし、この調査で注意しなければならないのは、下手するとママがブチ切れるってこと。まあ、食い物は大事に扱うことですな。

統計グラフを作ろう

http://www.toukei.metro_tokyo.jp/kc-index.htm

アガサ・クリスティー「チョコレートの箱」

あらすじ…エルキュール・ポワロが、ベルギーの刑事時代に捜査に失敗したことを回想する。

 この事件では、ポワロには相棒がいません。ポワロの相棒といえばヘイスティングス大尉が有名ですが、彼がいない時(例:オリエント急行の殺人、ナイルに死す、等々)は別の人物を代用しています(五匹の子豚のように相棒が存在しない作品もある)。相棒によってポワロは事件の謎を解く示唆を得ることが往々にしてあるのですが(例:スタイルズ荘の怪事件)、今回に限って言えばそれがなかった。
 これが捜査失敗の一因になったのかもしれません。

【参考文献】
アガサ・クリスチィ『ポワロの事件簿2』創元社

Baccarat BEST SELECTION

 広島で入手しました。
 フランスのガラスブランド「バカラ」のカタログで、リーガロイヤルホテル広島の1Fに店(Baccarat Shop Hiroshima)があります。
 さっそく中味をチェックしてみると…「ローラ タンブラー2012 日本限定」(P2)が\5775-…って、高いですなあ。しかし、ページを繰るともっと高いものが次から次へと出てきます。「ミルニュイ スモールトレイ(2枚セット)」(P10)が\15750-、「エキノックス 一輪挿し」(P15)が\23100-、等々。
 極めつけは「セリメーヌ ベースLL」(P44)が\4725000-! 472万5千円とは凄まじい。値段を見た時に桁を間違えたのかと思ったくらいです。

Baccarat

http://www.baccarat.com/

ポール・ドハティー『毒杯の囀り』創元社

あらすじ…1377年のロンドンで、貿易商のトーマス・スプリンガル卿が殺された。クランストン検死官とアセルスタン托鉢修道士が事件に挑む。

 アセルスタン&クランストンものは『赤き死の訪れ』を読んだことがありますが、本作はそれよりも前に位置していて、コンビが結成された経緯が登場します。
 それはさておき、本作にはホモが多く出てきます。詳しく書くと事件の核心に迫ってしまうので伏せますが、そいつは別にホモじゃなくてもいいんじゃないかと思えるくらいホモが多い(もちろん中世ヨーロッパでは男色は罪なので、みんな隠れホモです)。必要以上にホモが多く、この作品ではホモが事件の重要な鍵の一つになっていることからして、…これってホモ小説なの?

【参考文献】
ポール・ドハティー『毒杯の囀り』創元社

G・ガルシア=マルケス「最近のある日」

あらすじ…歯医者が村長の知歯(親知らず)を抜く。

 そういえば私にも親知らずがありますな。今のところ痛みがあるわけでもないし、歯科の定期健診でも問題にされていないのですっかり忘れていましたが。
 それはさておき、最後に歯医者が村長に治療費の請求書(勘定)を村長と役場のどちらに送ればいいのか訊ねると、村長は

「どっちだって同じさ」(P105)

 と答えています。経費で落とすつもりのようです。悪く言えば公私混同ってやつですな。

【参考文献】
G・ガルシア=マルケス『悪い時 他9篇』新潮社

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