加藤廣「神君家康の密書」
あらすじ…関が原の直前、福島正則は徳川家康に「何があろうと豊臣秀頼の身の安全を保証する」という起請文を書かせようとするが、家康はのらりくらりとかわしてしまう。その後、福島家の家老・福島丹波守がそれを偽造する。
『謎手本忠臣蔵』にちょっとだけ出てきた「神君家康の密書」が物語の軸になっています。
ちなみに、この小説に登場する密書(起請文)は偽造されたものですが、もし仮にそれが本物で、しかもしれが明るみに出た場合、徳川幕府はどんな対応を取ったでしょうか? 3つほど予想してみました。
(1)あくまでも偽物だと主張する。
何が何でも本物だとは認めない。あくまでもそれは偽物だということで押し通す。
(2)言いがかりをつけて無効だと主張する。
方広寺鐘銘事件のように、幕府のブレーンを使って何らかの言いがかりをつけておく。その上で「だから神君は約束を違えたわけではない」と言い張る。
(3)こっそりすりかえる
「では本物かどうか確認するから提出しなさい」と言って起請文を出させる。そして裏でこっそり真っ赤な偽物とすりかえておく。すりかえた方の文書には、花押や当時の官位が異なるなど少し調べればすぐに偽物だと判断できるようになっており、「ほれ見ろ、こいつは真っ赤な偽物だ。こんなものを持ち出すとは不届き千万。厳しい仕置きは免れないものと思え!」と言う。
【参考文献】
加藤廣『神君家康の密書』新潮社
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