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あらすじ…ナイル川をさかのぼる船の中で、美貌の資産家リネットが殺された。たまたま船に乗り合わせていた名探偵エルキュール・ポアロが捜査に乗り出すが、第二第三の殺人が起き…。
○○と××がグルだってのは感付いていました。単独犯だと思っていたら意外なところに共犯者がいた、というのはクリスティー作品でも「スタイルズ荘の怪事件」に出てきますし、今回はそれほど意外じゃない。
ただ、最初の殺人(リネット・ドイル殺害)のトリックがわかりませんでした。その点がちょっと悔しい。
さて、本作品を未読の方はこの文章を読んで何が何やらわからないかもしれませんが、それは未読の方々のために敢えて犯人やトリックがわからないように書いているのです。心苦しいかもしれませんが、こちらも明かすわけにはいかないので心苦しい次第です。
【参考文献】
アガサ・クリスティー『ナイルに死す』早川書房
【関連記事】
・ナイル殺人事件
プロメテウスについての4つの言い伝えを書き連ねています。
ちょっと待て、ヘラクレスがプロメテウスを救出した話が出てこないぞ。
【参考文献】
カフカ『カフカ短篇集』岩波書店
あらすじ…バベルの塔を造るために人々が集まって町を建設するが、世代が経るに従って、天まで届く塔を建てることの無意味が知れ渡ってしまい、塔の建設は中止となり、町が残る。
いやいや、バベルの塔にだってそれなりの意味がありますぞ。神に挑戦しようという人間の傲慢さの表われという意味が。あ、でも、それはバベルの塔が神に打ち砕かれないと人間は気付きませんね。
【参考文献】
カフカ『カフカ短篇集』岩波書店
あらすじ…哲学者が、子供がまわしている独楽(こま)を掴み上げ、放り出し、立ち去る。
哲学者がなぜそんなことをしたのか? 理由らしい理由といえば…ああ、ありました。「回転しているこまのようなささやかなものを認識すれば、大いなるものを認識したのと同じである」(P217)とあるので、その質問に対する回答は「大いなるものを認識するため」です。
それなら哲学者の仕事だと言えますが、果たして「ささやかなものを認識すれば、大いなるものを認識したのと同じ」という命題が正しいのかどうかという疑問が残ります。例えば諺にも「木を見て森を見ず」なんてものがあるくらいですから(もしもこの命題が真であるならば、木を見た時点で森を見たも同然であり、「木を見て森を見ず」はありえない)。
【参考文献】
カフカ『カフカ短篇集』岩波書店
あらすじ…一万年前にムナールの湖畔に建設された都市サルナスは、一千年の間栄えたが突如として滅亡する。
サルナスがどのくらい栄えていたのかというと、「かつて五千万の民が住んでいた」(P19)というくらいです。五千万人って、現代の東京より人口が多いんじゃ…。とにかく、一万年前にしては桁外れに多すぎます。
【参考文献】
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』創元社
あらすじ…フランスのとある荒れ果てた古城。その城主の子孫は32歳までしか生きられないという呪いを受けていた。最後の末裔となったアントワーヌが、その呪いを解くべく城内を探索する。
アントワーヌは、呪いをかけた錬金術師シャルルが逃げ込んだ森を探すのではなく、なぜか城内を探索しています。なぜ城なのだ? 資料がたくさんあるであろう図書室ならまだわかるのですが、城内のそれ以外の場所を探索しようとアントワーヌが考えた理由がわかりません。
【参考文献】
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』創元社
この動画は、ニコニコ動画で観ました。
その1 http://www.nicovideo.jp/watch/sm17440197
その2 http://www.nicovideo.jp/watch/sm17440422
たった5枚のカードを集めるだけで4万8000円を投入しています。しかも、コンプリートした後も更にお金を投入してカードを引いています(結局、投入金額は78000円にもなった)。
ネットゲームの世界でとんでもない金額を使い込む人間を廃課金と呼びますが、その廃課金が実際にどのように行動するのかを知ることができます。一般人はこれを他山の石とすべきでしょう。
(追記)
この原稿を書き上げた後、コンプガチャが違法云々の話が出てきました。ということは、こういった光景は表舞台ではもう起こらない。よって、過去の社会現象として我々はこの動画を視聴することになるのです。
監督:和泉誠治
出演:水谷豊、及川光博、小西真奈美、小澤征悦、宇津井健、國村隼
あらすじ…暮れも押し迫る中、警視庁で警視総監らを人質に取った立てこもり事件が発生。犯人は射殺されるが、動機は不明のまま。特命係が捜査に乗り出す。
立て籠り犯・八重樫哲也のプロフィールが表示されるシーンが出てくるのですが、そこに記してある住所が「世田谷区経堂6-8-5」でした。そこでGoogleで調べてみたら、経堂は5丁目まで。つまりこの住所は現実には存在しないということです。
もし仮に、これを現実に存在する住所にして一瞬でも表示されていたらどうなっていたでしょうか? 相棒フリークの中には杉下右京ばりに細かいことが気になる人もいるから、実際にそこへ行って調べてみようとする者が出てくるかもしれません。そうなるとそこに住んでいる人たちにとっては迷惑でしょうなあ。
最後に一つだけ。小野田官房長が死ぬのが呆気なかった。
監督:チャールズ・ファーガソン
出演:ポール・ボルカー、ジョージ・ソロス、エリオット・スピッツァー、バーニー・フランク
原題:Inside Job
備考:第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞
2008年の経済危機はなぜ起こったのかを、政治家や専門家などへのインタビューを通して探ってゆくというもの。
知的レベルの高い人たちのインタビューが延々と続くので、ちょっとでも気を抜くと話しについていけなくなるかもしれません。2時間弱、画面の前で集中せねば…。
マイケル・ムーアのドキュメンタリーなら、笑えるネタを随所に織り込んで息抜きができますが、この「インサイド・ジョブ」にはそういった娯楽性は一切ない。しんどいです。
それにしても、誰も経済危機の責任を取ろうとしていないように見受けられます。さすがというか…図太い連中ですな。ま、それぐらいツラの皮が厚くないとウォール街やワシントンではやっていけないんでしょうね。
とはいえ、多くの人を路頭に迷わせたんだから何らかのオトシマエをつけなきゃいけませんぜ。
監督:佐藤嗣麻子
出演:金城武、仲村トオル、松たか子、國村隼
原作:北村総『完全版 怪人二十面相・伝』
備考:アクション
あらすじ…第二次世界大戦が回避された、パラレルワールドの昭和24年。帝都では金持ちばかりを狙う怪人二十面相が暗躍していた。そんなある日、サーカスの曲芸師・遠藤平吉は、カストリ雑誌の記者から、明智小五郎と羽柴葉子の結納式を盗撮するよう依頼されるが、それは二十面相の巧妙な罠だった!
まず最初にことわっておきますが、私は原作の『完全版 怪人二十面相・伝』は読んだことはありませんが、原案である江戸川乱歩の少年探偵団シリーズはこのブログでレビューするぐらい読んでいます。ですので、本記事で言及される小説作品は全て江戸川乱歩の作品となります。
さて、怪人二十面相が登場するとなれば明智小五郎や小林少年も欠かせませんが、少年探偵団もそれに負けず劣らず欠かせません。この映画でも少年探偵団が登場しますが、たったの1回だけ、しかもさしたる活躍を見せることなく退場しています。
「えっ!? それだけ?」
と思わずズッコケそうになりましたが、まあ別にそれでもいいでしょう。ちなみに、少年探偵団の団員が小ぎれいな格好をしているのは、彼らが良家の子女だから。世田谷あたりの大きな洋館に住んでいて、家には女中や書生が当たり前のようにいる…そんな金持ちの家のガキどもです。例外は「青銅の魔人」において戦争孤児を集めて結成したチンピラ別働隊ですが、こちらは登場しません(孤児はたくさん出てきますけどね)。
それから、怪人二十面相の正体について。私にとっては予想の範囲内でした。「蜘蛛男」で、ある程度の免疫ができていましたから。
最後に結末について。ネタバレ防止のために明らかにすることはできませんが、最後にアイツを殺しちゃったら次回作(もしあればの話ですが)が作れなくなっちゃうんじゃないかと思いました。しかしよくよく考えてみれば、二十面相なんかは爆死したフリをして実は生きていたというケースがあったし(例:「少年探偵団」)、明智小五郎だって「黒蜥蜴」では敵を油断させるために死んだフリをしてわざわざ葬式まで挙げています。
あの時に死んだと思われていた○○が実は生きていた、という展開が読めます。
【関連記事】
江戸川乱歩(目次)
監督:アンソニー・ハーヴィー
出演:ピーター・オトゥール、キャサリン・ヘプバーン、アンソニー・ホプキンス、ティモシー・ダルトン、ジョン・キャッスル
原題:The Lion in Winter
備考:デジタルリマスター
あらすじ…1183年のクリスマスに、イギリス国王ヘンリー2世は、幽閉中の妃エレノア、息子たち、フランス王フィリップ2世をシノン城に呼び集めた。
やけにセリフが多く、どいつもこいつも語りまくっているなと思っていたら、元は舞台演劇だと知って納得しました。映画だと表情の変化やちょっとした仕種で色々と表現できますが、舞台となると後ろの席に座っている観客にもわかるように一々セリフにしなければなりません。
一つ例を挙げるとすると、エレノア(キャサリン・ヘプバーン)が部屋に一人で居て、鏡を見ながらブツブツ独り言をつぶやくシーンがあります。常識的に考えて独り言をする時の声の大きさではなく、自分の心情を誰か(ぶっちゃけて言えば観客)に聞かせるためにわざわざ言ってるとしか思えません。
一回観たきりなのでセリフの詳細は忘れましたが、自分はまだまだ美しい、ヘンリーをギャフンと言わせてやる、そんな意味のようなことを言っていたように記憶しています(間違っていたらゴメンナサイ)。
そこで、もしもそのシーンをセリフ無しで表現するとしたら、鏡を見る→顔のシワ・シミをチェックする→疲れた、物悲しい表情でため息をつく→目をつぶってかぶりを振る→毅然とした態度で見据える→化粧をする、といったところでしょうか。
最後に注意点を少々。作品内では権謀術数が渦巻き、登場人物たちの会話の中に欺瞞、嫉妬、偽善、怨念など人間の心の醜いドロドロしたものが厭でも目につきます。舞台はクリスマスですが全く祝う気にはなれず、寧ろ地獄に居るような苦しさを感じます。又、形勢が目まぐるしく変わるので、うっかり気を抜くと展開について行くことができなくなるかもしれません。
あらすじ…ロマールの都市オラトーエの市民となって、異民族の襲来に備えて物見の塔で見張り番をしながら睡魔と闘う…という夢を見た。
夢の世界の出来事なので、おかしな点があっても「それは夢だから」済ますことができるという利点があります。
例えば主人公はたった一人で物見の塔へ上っていますが、なぜ一人かというと「屈強な男たちはすべて山道の守備についたため」(P45)とのこと。いや、都市なんだから主人公以外にも屈強でない男はいっぱいいるだろ。交代要員を含めてもう何人か送っておくべきでしょう。
まあ、こんなツッコミを入れても不毛ですかな。夢に整合性を求めてもしょうがない。
【参考文献】
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』創元社
あらすじ…とある避暑地に謎の老人がいて、傍らには沈鬱な青年・祖父江光が付き添っていた。避暑に来ていた連中が祖父江に老人の正体を訊くと、祖父江は驚くべき物語を語り始めた。
この作品はまず避暑地から始まって、そこで祖父江が過去を語るという入れ子型の構造になっています。しかも、その過去の話はシェイクスピアの「ハムレット」を下敷きにしているという、いわば三重の構造とでもいうべき様相を呈しているのです。
ちなみに、祖父江はハムレット(もちろんシェイクスピアの方)についてある程度解説してくれてはいるのですが、それだけではおそらく不充分かもしれません。「敗戦後一年目のこの夏」(P52)に避暑に来ている聞き手たちは相当裕福であり、彼らは教養としてハムレットをある程度知っていたものと思われるからです。ですので、読者も本作を読む前に本で読んでおくか(たしか新潮社や筑摩書房などから文庫本が出ているはず)、それが面倒なら映画(ローレンス・オリヴィエ主演のものが有名だが、それ以外にもある)をレンタルして視聴するかしてハムレットの知識を蓄えておいた方がいいでしょう。
ところで、祖父江の話の中に次のような文章がありました。
小松顕正は端正な容貌と明晰な頭脳をもった秀抜な青年で、われわれ同年代一般の憧憬的人物だったのです。とりわけわたしなどはひそかに女性的な愛情さえ感じたくらいで、(P73)
ウホッ。私演会で小松(あの老人の正体)がハムレットを、祖父江がハムレットの友人ホレイショーを演じていたのですが、とあるゲイの人によるとホレイショーは実はハムレットにホモセクシャル(同性愛)の感情を抱いているとか(シェイクスピアが同性愛を大っぴらに書いているわけではないのですが、わかる人にはわかるそうな)。だとすればこの点においても両者は重なります。
【参考文献】
久生十蘭『湖畔/ハムレット』講談社
近所のツタヤで「オリエント急行殺人事件」をレンタルした際に入手しました。
表紙を飾るのは映画「リアル・スティール」。こちらの映画は未見ですが、原作の小説(リチャード・マシスン)は読んだことがあります(ただし原作と映画は大幅に異なっていますが)。この映画は…多分観ないかもしれませんなあ。
ところで、「PICK UP "TSUTAYAでチェック!未公開映画掲示板"」(P40-41)をチェックしてみると、『ドリアン・グレイ』(2009年、イギリス)が6月2日にレンタル開始とのこと(P41)。オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」が映画化されていたとは!
あらすじ…夢見る乙女マーシャがある夜、オリュンポスの神々の世界にトリップする。
なぜか雑誌の詩の中に日本が登場します。P277とP278の2箇所に出てくるのですが、全く同じ一節です。とりあえず引用します。
日本の空に浮かぶ月、
白い蝶のごとき月。(P277)
さて、この一節を私は短歌形式にしてみました。
日の本の 空に浮かぶは 白き月
ま白き蝶の ごとくある月
歌の巧拙はともかくとして、私がついつい短歌に作り直してしまったのは、作品中の詩の数々に触発されたからかもしれません。
…え? 神々の世界? そりゃあ、行けるもんなら行ってみたい気もないわけではないのですが、私の場合はアチラの世界に行ったら帰ってこれなくなるかもしれないですからねえ。二の足を踏まざるを得ない。
【参考文献】
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』創元社
あらすじ…洞窟で迷子になる。そして、得体の知れないものが近付いてくる。
主人公がなぜ洞窟で迷子になったのかというと、「わたしはガイドに知られることなく一般の観光客から離れ、洞窟の禁断の通路を一時間以上もさまよった」(P235)云々とあることから、洞窟観光をしていて勝手な行動を起こしてごらんの有様になったことがわかります。
では、なぜそんなことをしたのかというと、そちらは書かれていません。これは推測するしかないのですが、主人公は「哲学の研究三昧の生活」(P234)を送るインテリです。未知の領域を見たいという欲に駆られたんでしょうかねえ。まあ、この主人公が洞窟から帰還した後にインタビューでも受けてその質問をぶつけられたとしたら、哲学的な回答をして凡人を煙に巻くかもしれません。
【参考文献】
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集7』創元社
あらすじ…薩摩の海商・大迫吉之丞は島津惟新から吊宋の壷を入手するよう命ぜられる。
最後のオチというか結末がひどい。ネタバレ防止のために詳細は伏せておきますが、「せっかくの苦労も甲斐ないものになった」(P219)で脱力しました。あの大冒険は一体何だったんだ…。
【参考文献】
久生十蘭『湖畔/ハムレット』講談社
あらすじ…ある時、殿様の右の金玉が徐々に大きくなる。江戸の蘭方医たちが集まって、問題の金玉を切り取る手術をする。
医者たちが集まって、どうやって手術を成功させるか苦心惨憺する有様はちょっとプロジェクトXっぽくなっているんですが、それ以外ではブラックユーモアがあったりします。
例えば「殿のふぐり玉に殉死をねがうものが出てきた」(P115)では、その時点では殿様は死んでいないし、そのつもりもない(死ぬかもしれないという不安はあったにせよ)。しかも、この頃(作品の冒頭に嘉永とある)は殉死が禁止されていたはずなので、殉死願いなんか出しても認められるわけがない。
又、手術を渋る奥方に対して、医者が万葉集の歌を曲解して騙してしまう手口なんかを読むと、ははあ、ものは言いようだなと思ったりします。
ちなみに件の歌は万葉集にちゃんとあります。
伊勢海之 白水郎之嶋津我 鮑玉 取而後毛可 恋之将繁(巻第七、1322番歌)
【参考文献】
久生十蘭『湖畔/ハムレット』講談社
森山隆・鶴久編『萬葉集』おうふう
あらすじ…卑猥なジョークを耳にしたタルバート・ビーンは、そういったジョークの起源がどこにあるのか調べてみる。
わがままな金持ちの、ただの道楽かと思っていたら、話はどんどん壮大になって行き…と、ここから先は読者の楽しみのために伏せておきましょう。
ともあれ、クライマックスの荘厳さ自体が一つのジョークだと思えてきます。
あらすじ…終戦時のドサクサにまぎれて機関車の中に隠匿された金塊を泥棒が見つけて盗み出す。
泥棒の一人称視点で語られているので、金塊の出所や、なぜ金塊が長らく隠されたままだったのかなど不明な点は多い。しかしながら、所詮それらは枝葉末節だとして切り捨てていいのかもしれません。というのは、本作品の醍醐味は機関車強奪の手口や金塊の隠し場所などにあるのですから。
あらすじ…1856年12月4日、4時15分発急行列車に乗ったウィリアム・ラングフォードは、旧知のジョン・ドウェリハウスと乗り合わせる。だがその後、ドウェリハウス氏は3ヶ月前に失踪したと知らされる。ラングフォードは調査を開始するが…。
一見すると推理小説っぽいが、よくよく読み進めてみると幽霊譚だったでござる、という作品。少々のネタバラシをしてしまいましたが、本作品の冒頭の解説で、既にある程度のネタバレをやらかしているので問題ありますまい。
あらすじ…南北戦争直後のアメリカ。テキサスのグラントヴィルに一人の若者がやってきて、殺し屋のセルカークを撃ち殺すが、ホテルに戻ったところでセルカークの仲間たちに襲われて死ぬ。
例えばテレビゲームなら、敵のボスを倒したところでゲームクリア、終了となります。しかし実際には、ボスを倒しても残党が復讐してくる可能性があります。これを防ぐには、彼らを一人残らず殺しておくか、圧倒的力量を見せつけて相手の戦意を喪失させるか、さもなくば迅速に安全な場所に逃げ出すことです。尤も、この若者(ライカー)にしてみればセルカークを殺したことで圧倒的力量を見せつけたつもりなのかもしれませんが、たった一人を不意打ちにしたくらいでは不十分だったわけですな。
どうやらライカーはそういったことまで頭が回らなかったようです。まあ、それだけ頭が回るのならそもそもこんなことはしないか。
あらすじ…かつては“鋼鉄”と呼ばれたおちぶれたボクサーが、男の誇りをかけて一世一代の大勝負ロボットファイトに挑む(参考文献の裏表紙の紹介文より引用)
映画「リアル・スティール」(スティーブン・スピルバーグ製作)の原作。
私は映画の方は未見だし、本作の結末もネタバレ防止のために明かすわけにはいかないから、そのあたりのことについては言及できないのですが、感じたことを一つだけ述べさせてもらいます。
過去の栄光が忘れられず、みじめな負け犬生活を続けてそれでもしがみつく…これはミッキー・ローク主演の映画「レスラー」(こちらも未見だが、町山智宏氏の解説を聞いてストーリーを少々知っている)やSASUKEの山田某に通じるものがあります。
(追記)少々調べてみたところ、映画と原作とでは別物と思えるくらい改変されています。ご注意を。
あらすじ…イギリスの諜報員ジェームズ・ピンチがカジノへやって来て、バーカウンターでミルクセーキを飲んでいると、隣に美女がやって来る。
映画「007 カジノ・ロワイヤル」のパロディじゃないかと思いましたが、そもそも私にはこの映画作品を観た記憶がない(テレビの地上波放送で視聴したかもしれないが、だとしてもストーリーを全く思い出せない)。ところが巻末の初出一覧をチェックしてみたら、
「カジノ・コワイアル」エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン(早川書房刊)一九六四年十二月号「000奇々怪々」改題(P517)
とあるので、カジノ・ロワイヤルのパロディとして書かれたものではありません。007のパロディではありますが。
それはさておき、本作の特徴は本家以上のドンデン返しに次ぐ大ドンデン返しの連続。あまりにドンデン返しが続くので最初と最後で設定に矛盾が出てきているんじゃないかと思えるほどです。どこがどう矛盾するのかという考察は面倒臭いし馬鹿馬鹿しいのでしません。これはそういう作品なのですから。
【参考文献】
都筑道夫『宇宙大密室』創元社
あらすじ…流刑星に流されていた囚人が殺され、その囚人を逮捕した名探偵グレゴリイ・サワも殺された。その報告を受けたサワの老師が推理する。
ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、細かいトリックは当てられなかったものの、犯人を当てることには成功しました。登場人物が少ないのだから犯人を当てるのは容易かもしれません。
ちなみに流刑星で犯人が使ったトリックは、出入り口のゲートに監視カメラが一台あれば成功しないものです(つまり、監視カメラはなかった!)。もしもここをクリアするとすれば、厳重なセキュリティをかいくぐってハッキングするしかない。そこに痕跡が残ってしまえばそこから足が着く危険性だってあります。
【参考文献】
都筑道夫『宇宙大密室』創元社
あらすじ…終末世界で人類最後の一人となった男が詩作にふける。
人は原子でみずからの屍衣を編んだ
そして爆弾でみずからの墓穴を掘った(P179)
とあることから、どうやら核戦争で人類が滅亡したことがわかります。
『北斗の拳』では核戦争を生き延びた人間がモヒカンになってヒャッハーしていましたが、こちらの世界ではそこまでは生き残らず、略奪するだけの食料も財産も(少なくともこの短い作品中には)登場しません。
この男もそう長くはもつまい。だとすれば、そうした極限の状況下で倫理観が消えて殺人に走るのも…おっと、ここから先はネタバレ防止のために伏せておかねばなりますまい。
あらすじ…ボストンの地下鉄で、夕方のラッシュアワーに86号列車が消失した。ハーバード大学の数学者ロジャー・タペロが事件の解明を試みるが…。
タペロの説明には数学用語がふんだんにちりばめられており、数学的知識がないと何を言っているのかサッパリわからない。しかし、タペロの、
「あなたは、まだおわかりになっていない。ノードというのは障害物ではありません。これは特異点で、高次元の極なのです」(P68)
というセリフから、どうやら86号列車は異次元の世界へ行ってしまったらしいことが(数学の知識がなくても)わかります。一般的にはその程度の理解でいいでしょう。何しろ、作品中に登場する大学者たちでさえ解明できないのですから。
あらすじ…大勢の人間がレミングのように集団で海中へ入り姿を消す。それを見届けた二人の警官も海中へ没する。
警官の一人、カーマックがこんな解説をしています。
「レミングってのはスカンジナビア半島に生息している齧歯類だ。やつらは食べ物がすっかりなくなるまで繁殖を続ける。そのあと、群れで大移動をはじめて、行く手にあるものを残らず食べつくしていく。海に行き当たってもそのまま進む。力が尽きるまで泳ぎ続けるんだ。何百万頭ものレミングが」(P217)
つまり人間が増えすぎて食料の生産が追いつかず、人類は集団自殺へと突っ走るというわけですか。
現在、世界の人口はどんどん増え続けており、どこかでこれを「是正」しなければならないとすると、こういうレミング方式はショック療法と言えるでしょう。まあ、戦争や民族浄化、ホロコーストなんかに較べれば平和的なんでしょうがね。
あらすじ…由比ヶ浜の画家・野田大観が殺された。容疑者として丸山狂児が浮上するが、彼にはアリバイがあった。鎌倉警察署特捜課の特別顧問・一式正和が丸山のアリバイ崩しに挑む。
マンガ作品。絵柄が「三丁目の夕日」なので緊迫感がない。
ちなみに、アリバイのトリックはそれほど難しいものではなく、初心者向けといったところです。ネタバレ防止のために伏せておきますが、途中まで読んできて、あまり深く考えもせずに「大体こんな手口だろうな」と思っていたら当たりましたからね。
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