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渡辺温「兵隊の死」

あらすじ…休日に一人の兵士が原っぱで寝そべっている。兵士は空に向かって発砲するが、その弾がまっすぐ落ちてきて彼の額を直撃し、彼は死ぬ。シャーロック・ホームズが調査するが…。

 最後になぜかシャーロック・ホームズが出てきて捜査します。

 シャアロック・ホルムスが眼鏡をかけて兵隊の死因をしらべに来たのだがこの十九世紀の古風な探偵のもつ観察と推理とは、兵隊の心に宿っていた最も近代的なる一つの要素を検出し得べくもなかったので、探偵は頭をかいて当惑したと云う。(P351)

 一応、シャーロック・ホームズも近代の人間なんですがねえ。まあ、近代の定義なんて色々あるだろうから、「最も近代的なる一つの要素」の解釈もそれによって随分と変わるに違いあるまい。
 とはいえ、本文の中に「兵隊は街へ活動写真を見に行く小遣銭を持っていなかったので」(P350)とあり、もしもこの作品の舞台が活動写真(映画)が登場するギリギリの19世紀末だとしても、その時代はシャーロック・ホームズの晩年に当たります。従って、ホームズがこの時には「十九世紀の古風な探偵」として時代遅れになっていた次第。

 さて、それではどうして兵士は発砲したのでしょうか?

 兵隊は青空の水々しい横っ腹へいっぱつ鉄砲を射ち込んでやりたい情慾に似た慾望を感じたのだ。ああ一体それはどういうことなのだ?!(P350)

 どういうことなのだ?!…って、作者よアンタもわからないのか。ともあれ、フロイト的解釈では鉄砲は男性器の象徴であり発砲は射精の象徴です。又、「水々しい横っ腹」という語は女体を連想させます。
 要するに兵士のこの行為は性交の代償行動だったと見ることができるのです。そう考えてみると、「情慾に似た慾望を感じた」のも不思議ではありませんな。春を買う金もなくて性欲を持て余していたんでしょうかねえ。
 私は時折フロイト的解釈を持ち出してきますが、それは便利だから利用させてもらっているのであって、その解釈がしっくり来るかどうかは別です。では今回はどうかというと、正直言って腹にストンと落ちてこない感じがします。
 ま、しっくり来るのが欲しかったら、他を当たるか自分で論考するかして下さいな。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

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