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渡辺温「アンドロギュノスの裔」

あらすじ…下士官のY君が映画女優に恋をし、休日になると彼女の家の近くの公園へ行って、日がな一日、女優宅を眺めるようになる。

 まず最初に、アンドロギュノスとは何でしょうか?
 古代ギリシアの哲学者プラトンの著作『饗宴』の中で、喜劇詩人アリストファネスがこんな話をしています。昔々、人間には男-男、男-女、女-女がいて、その力を恐れた神によって男と女とに分割されてしまった。だから男と女は失われた片割れを探し求めるのだ云々。
 アンドロギュノス(Androgynous)とはこの話に出てくる男-女のことで、今では半陰陽(両性具有、ふたなり)という意味もありますが、本作ではただ単にこの男-女と解釈してよいでしょう。

Androgynous

 さて、本作の主人公であるY君もアンドロギュノスの末裔(子孫)として、失われた片割れ(女性)を求めて活動するのですが…彼がやっていることは今ならばストーカーの所業ですな。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

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