渡辺温「ああ華族様だよと私は嘘を吐くのであった」
あらすじ…アレキサンダー君と一緒に横浜で遊んで女を買う。
『君、病気なんだね。肺病だろう?』
『ごめんなさいね――あたし、死ぬかもわからない』
『いいよ、いいよ。君が死ねば、僕だって死ぬよ』(P172)
あれ? この会話に激しく既視感が…と思ったら、先刻読んだばかりの「シルクハット」で似たような会話がありましたっけ。使い回しってやつですかね? とりあえず、比較のために引用してみます。
「声がおかしいね。呼吸病かしら?」
「ええ。だから助からないわね。あなた、そんな病気の女、おいやでしょう?」女は、私の髪の毛を細い指の間にからませながら、そう訊き返した。
「君が、死ぬなら、僕も一緒に死ぬよ。」と私は答えた。(「シルクハット」P132)
他にも、自分は華族だと嘘をつくところとか、ベッドインの前に酒を飲んで踊るなど、共通点を見出すことができます。
【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社
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