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オースチン・フリーマン「青いスパンコール」

あらすじ…汽車の一室で若い女性が死んでいるのが発見される。彼女の死の直前まで会っていた男が逮捕されるが、彼の無実を信じる兄がソーンダイク博士に事件の解明を依頼する。

 私にとっては初のソーンダイク体験です。よって、事件よりもソーンダイクに重点を置いて書き進めてみることにします。
 冒頭の解説文で「シャーロック・ホームズ最大のライバルとも称されるソーンダイク博士」(P7)とありますが、その割には現代での知名度は今一つです。又、ホームズやポワロ、明智小五郎などに較べると地味な印象を受けます(あいつらのキャラが立ちすぎているだけなのかもしれませんが)。
 それから、今作を読んだ限りでは、ソーンダイク博士は科学的な観察を一つ一つ積み上げて推理するスタイルのようです。これは着実であると同時に突飛さに欠けるので、先述の地味という印象を与えてしまうのでしょう。

【参考文献】
有栖川有栖『有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー』角川書店

サキ「十三人目」

あらすじ…リチャード・ダンバートン少佐とエミリー・カリュー夫人が船上で再会し、結婚することに決める。だが、双方の子供の数を合わせると13人となるので不吉だから、たまたまやって来たペイリー=パジェット夫人に子供を一人、貰わせようと画策するも失敗する。ところが子供の数を数え直してみたら13人じゃなくて12人だったとわかってメデタシメデタシ。

 12人も13人もあんまり変わらないんじゃないかと思うのは私が非キリスト教徒だからでしょう。まあ、この作品では13を不吉な数字として忌避しようとするキリスト教社会を皮肉っていると見ることもできます。
 いずれにせよ、子沢山のこの男女が結婚したら、どうせ避妊などしないだろうから13人目の子供がすぐに産まれることでしょう。そのときはこの喜劇(?)が繰り返されるのが目に浮かぶようです。

【参考文献】
サキ『サキ短編集』新潮社

サキ「平和的玩具」

あらすじ…ハーヴィは、戦争ごっこ好きの甥っ子たちに、戦争好きを改めさせるために平和的玩具をプレゼントする。だが、子供たちはそれを使って戦争ごっこをしてしまう。

 10歳と9歳のガキでしょ? 大丈夫ですよ、あと何年かすれば彼らも性に目覚めて、ベッドの下にエロ本とかを隠すようになって戦争ごっこどころじゃなくなりますから。
 あ、そっちの方がむしろ「問題」か。

【参考文献】
サキ『サキ短編集』新潮社

丸谷才一・三浦雅士・鹿島茂選『千年紀のベスト100作品を選ぶ』光文社

 丸谷才一・三浦雅士・鹿島茂の3人が、西暦1001年~2000年の文学・映画・音楽・舞踏・絵画・建築からベスト100作品を選ぶというもの。
 1000年という期間もさるものながら、選び出すジャンルも結構広い。よく選び出したものだ。しかも、選んだら選んだで、他者から「なぜ○○は入ってないんじゃコラー!」という文句が出るのは必定ですからね。大変ですな。
 それはさておき、この100作品を国別に分類してみると、このようになりました。
千年紀のベスト100作品を選ぶ



 日本の13は地元だからということでわからなくもないのですが、なぜフランスがこんなにも圧倒的なのかというと…鹿島茂はフランス文学が専門だからその影響が大きいのでしょうかね。
 それから、全体を見ると見事なまでに欧米偏重です。アジアは日本を除けば中国の紫禁城(P362)と中東の『千一夜物語』(P196)だけだし、南米はコロンビアの『百年の孤独』(P302)のみ。アフリカに至ってはゼロ。この過疎っぷりは寂しいといえば寂しい。

【参考文献】
丸谷才一・三浦雅士・鹿島茂選『千年紀のベスト100作品を選ぶ』光文社

デヴィッド・ニコル『エル・シッドとレコンキスタ 1050-1492 キリスト教とイスラム教の相克』新紀元社

 まず最初に、知らない人のためにエル・シッドとレコンキスタについて簡単に説明しておきます。レコンキスタ(Reconquista)とは、イスラム教諸国に奪われたイベリア半島を、キリスト教国家が再奪還しようとする運動です。そしてエル・シッド(El Cid)はレコンキスタ初期の英雄で、本書の表紙の中央に立っているのがエル・シッドです(彩色画:アンガス・マックブライド)。

 さて、次に本書の記述内容ですが、教科書的な素っ気なさを感じさせるもので、正直言って読んでいてワクワクドキドキ感は得られませんでした。例としてちょっと引用してみます。

 最南部のバレンシア周辺には、1260年代のムスリム反乱まで小さなキリスト教徒の入植地があった。南フランスにおけるアラゴン・カタルニャの敗北(アルビジョア十字軍)とミュレーにおけるペドロ国王の戦死は、すでにさまざまな問題をかかえていた王権にとって深刻な打撃となった。(P19)

 おわかりいただけたでしょうか?
 とはいえ、最後に評価できる点も挙げておくと、軍事組織や装備品の記述がしっかりしているということです。
 又、軍事面の知識がなくても、P25-32のイラスト群を眺めるだけでも楽しめます。

【参考文献】
デヴィッド・ニコル『エル・シッドとレコンキスタ 1050-1492 キリスト教とイスラム教の相克』新紀元社

川端康成「雪」

あらすじ…野田三吉は正月三が日にホテルにこもって幻を見る。

 「疲労の底にひきこまれて、頭がしびれてしまうところから、幻が浮びはじめる」(P545)とあることから、おそらく脳内麻薬でも分泌しているのでしょう。変なクスリをキメて幻覚を見るよりは幾らか健康的ですな。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「喧嘩」

あらすじ…新婚旅行で夫婦喧嘩の真似事をやってみる。

 花嫁が泣顔で微笑むのを恥じて眼を反らすと、青い海の陽炎が彼女の身上にも燃えているような喜びを感じるのであった。(P379)

 と、ここでこの作品は終わっていますが、この後の夜の合体行為がすごいことになりそうですな。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「死面」

あらすじ…恋多き女性が最後の恋人に看取られながら死ぬ。通夜に一人の美術家がやってきて死面(デス・マスク)を取り持ち帰る。恋人は嫉妬に駆られて死面を奪いに行くが…。

 どうやらこの美術家も、あの女性の何番目かの恋人で、まだ未練があったようです。
 しかし、そのデスマスクは「男だか女だかも分りゃし」(P395)ないシロモノで、それを見た二人の男は恋の熱情から醒めました。最後の恋人は「胸の火が消えたような声」(P395)になり、美術家は「沈んだ顔」(P395)になっていることでそれがわかります。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「笑わぬ男」

あらすじ…京都の映画撮影で、ラストシーンを笑いの仮面を使ったものに急遽変更するが、イメージ通りの仮面が集まらずに苦慮する。

 「一週間ばかりも徹夜の夜間撮影が続いていた」(P270)中での変更ですからね。いくらいい映画を作るためとはいえ現場は大変ですな。
 しかしながら、借り物の面を汚してしまった時に作者が
「それじゃ僕が買っときましょう。」(P274)
 と申し出たのは、言いだしっぺの責任を果たしたと言えるでしょう。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「三等待合室」

あらすじ…東京駅の三等待合室で女と待ち合わせをする。三等待合室には巡礼と僧侶がいたが、刑事に拘引されて行った。そして女は来なかった。

 要するに振られたわけですな。彼女からの手紙に「もう厭でございますわ」(P243)とありますが、待ちぼうけを食わされる方がもう厭でございますわ。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

金環日食

金環日食

 普通のデジカメで撮影しました。

川端康成「女」

あらすじ…禅坊主と武士が問答する。

 一回目に読んだ時はよくわかりませんでした。
 二回目に読んだ時は前半部分(P176の1行目まで)はわからなくもないなと思いました。
 三回目に読んだ時は「これは禅問答だ」と思ってどうでもよくなりました。何しろ「禅」坊主ですからね。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「駿河の令嬢」

あらすじ…駿河の少女と女工らしい娘が駅で別れを告げる。

 主人公(作者)は汽車の中で女学生たちを観察しています。「一年半ばかりの間にこれらの少女達の顔を二十人も見覚えてしまいました」(P195-196)というほど。
 まあね、小説家ってのは観察するのも大事な仕事の一つですからな。そうでなかったら…変質者ですかね。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「二十年」

あらすじ…水平社の部落に澄子という美少女がいた。中学生の少年(非部落)が、澄子と同じ部落の友人・梅村の手引きで澄子と不純異性交遊をする。それがバレて少年は寄宿学校へ追いやられる。そして二十年後、彼は梅村と再会する。その傍らには澄子がいた。

 冒頭からいきなり、

 村は野蛮で淫乱だった。その小字の一つは水平社の部落だった。(P76)

 と、今では編集の段階で自主規制に引っかかりそうなことが書かれています。おまけに主人公の少年と梅村とのホモっぽい描写「旅行の時は抱き合って寝た」(P78)なんかがあったりします。
 ちなみに、あらすじの段で不純異性交遊と書きましたが、それに該当する文章は以下の二つ。

 澄子は勝気らしい上目遣いをして紅くなった。それから彼らは山へ隠れた。(P79)

 岡の上と下で合図の声をあげる。そしてそれぞれ自由の枯れ草の中に消えて行く。(P80)

 つまり澄子と青姦したってことですな。それも2回も。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「死顔の出来事」

あらすじ…妻の死顔が凄まじかったので顔をマッサージしてやったら安らかな死顔になった。

 恐ろしい形相で死んでそのまま硬直したということは、作品内では描かれていないものの何らかのマイナスの情念が妻の心にあったのでしょう。そんな状態で死なれたのでは、怨霊となって化けて出てきてもおかしくはない。

 では、何が彼女をそうさせてのでしょうか?
 ここから先は私の勝手な推理と空想ですので、当たっているかどうかの保証は全くありません。それでもよければ続きをお読みください。

 まず、最後の一文に注目しました。

 彼の少しきちがいじみた目を、妻の妹がこの世になく美しく澄んだ目で見返した。それからわっと泣き伏した。(P64)

 最後の最後で妻の妹が出てきたということは、この妹がキーパーソンではないかと勘繰りました。
 更にそこから空想を広げていくと…その妹が実は姉の夫に懸想していた。姉は女の勘でそれに気付いていて、自分の死後に夫を奪われるのではないかと危惧していたが病身ではどうにもならず口惜しい思いをしていた。その思いがあの死顔になった。妹はそれを見た時、心底ゾッとしたことでしょう。しかし、姉の夫がその死顔を安らかなものに変えてしまうと、ホッとすると同時にこの夫婦は愛し合っていたことを悟り、好きな男と姉の両方を失って泣き出した。…とまあ、こんなところですかね。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「玉台」

あらすじ…友人と撞球の話をする。

 撞球…ビリヤードか。
 で、くだんの友人曰く、「六ヶ月のうち四ヶ月は一人で突いていたんだからね」(P111)…ということは、この友人は半年も田舎にこもってビリヤードし続けていたことがわかります。ブルジョアですなあ。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「月」

あらすじ…童貞青年が、様々な女が自分に様々なアプローチをしてくるという妄想に浸る。

 どうせ妄想の世界なんだから、脳内彼女の一人にさっさと筆下ろしさせてもらって、ヤリチン状態になってもよかったのに。どうせ妄想の世界なんだから…。
 とまあ、こんなことを考えている私なんぞはまだまだ青いということでしょうかねえ。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

川端康成「火に行く彼女」

あらすじ…彼女が火事のある方へ向かって歩く。

 「不思議に音のない世界である」(P29)の一文で夢オチ特定余裕でした。前後の文章からして群衆の喧騒や物が燃える音があって当然なのですが、それらがない世界となると、私の経験と知識から夢であると判断した次第です。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

G get press MAY.2012 VOL.124

 近所のゲオで入手しました。
 この中に「ゲオがオススメする韓流ドラマ在庫大量導入!」(P42-45)という記事があるのに注目。「ゲオではこの春イチオシの、韓流ドラマ作品を大量導入中!」(P42)とのこと。
 いくら円高ウォン安で安く買えるからって、そんなに大量の在庫を抱えちゃって大丈夫でしょうか…。まあ、いざとなったら在庫処分すればいいか。
 ちなみに私は、韓流ドラマよりもP40-41の「掘り出し物DVD 大・集・合!」の方に興味が行ってしまいます。トルコ映画「パレスチナ」は「イラク-狼の谷」のスタッフが作っているのか…。

Ggetpress

川端康成「弱き器」

あらすじ…観世音菩薩が自分に倒れかかってくる夢を見る。

 夢から覚めた後、「私はこの夢に意見をつけて見た」(P28)と夢分析をしています。夢分析の内容についてはネタバレ防止のためにここでは伏せておきますし、話が短すぎるのでその夢分析が的確か否かの判断は着きかねます。
 でも、夢をネタに書く場合、長いものならそのまま書いてもいいでしょうが、こちらのように短いものなら考察やら何やらを加えて原稿用紙の枚数を稼がねばなりますまい。

【参考文献】
川端康成『掌の小説』新潮社

渋谷ヒカリエ

 某日、渋谷ヒカリエに行ってきました。

渋谷ヒカリエ

 6月4日に8Fにて「川本喜八郎人形ギャラリー」オープン予定とのこと。これは行ってみたい。

渡辺温「アンドロギュノスの裔」

あらすじ…下士官のY君が映画女優に恋をし、休日になると彼女の家の近くの公園へ行って、日がな一日、女優宅を眺めるようになる。

 まず最初に、アンドロギュノスとは何でしょうか?
 古代ギリシアの哲学者プラトンの著作『饗宴』の中で、喜劇詩人アリストファネスがこんな話をしています。昔々、人間には男-男、男-女、女-女がいて、その力を恐れた神によって男と女とに分割されてしまった。だから男と女は失われた片割れを探し求めるのだ云々。
 アンドロギュノス(Androgynous)とはこの話に出てくる男-女のことで、今では半陰陽(両性具有、ふたなり)という意味もありますが、本作ではただ単にこの男-女と解釈してよいでしょう。

Androgynous

 さて、本作の主人公であるY君もアンドロギュノスの末裔(子孫)として、失われた片割れ(女性)を求めて活動するのですが…彼がやっていることは今ならばストーカーの所業ですな。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

渡辺温「兵隊の死」

あらすじ…休日に一人の兵士が原っぱで寝そべっている。兵士は空に向かって発砲するが、その弾がまっすぐ落ちてきて彼の額を直撃し、彼は死ぬ。シャーロック・ホームズが調査するが…。

 最後になぜかシャーロック・ホームズが出てきて捜査します。

 シャアロック・ホルムスが眼鏡をかけて兵隊の死因をしらべに来たのだがこの十九世紀の古風な探偵のもつ観察と推理とは、兵隊の心に宿っていた最も近代的なる一つの要素を検出し得べくもなかったので、探偵は頭をかいて当惑したと云う。(P351)

 一応、シャーロック・ホームズも近代の人間なんですがねえ。まあ、近代の定義なんて色々あるだろうから、「最も近代的なる一つの要素」の解釈もそれによって随分と変わるに違いあるまい。
 とはいえ、本文の中に「兵隊は街へ活動写真を見に行く小遣銭を持っていなかったので」(P350)とあり、もしもこの作品の舞台が活動写真(映画)が登場するギリギリの19世紀末だとしても、その時代はシャーロック・ホームズの晩年に当たります。従って、ホームズがこの時には「十九世紀の古風な探偵」として時代遅れになっていた次第。

 さて、それではどうして兵士は発砲したのでしょうか?

 兵隊は青空の水々しい横っ腹へいっぱつ鉄砲を射ち込んでやりたい情慾に似た慾望を感じたのだ。ああ一体それはどういうことなのだ?!(P350)

 どういうことなのだ?!…って、作者よアンタもわからないのか。ともあれ、フロイト的解釈では鉄砲は男性器の象徴であり発砲は射精の象徴です。又、「水々しい横っ腹」という語は女体を連想させます。
 要するに兵士のこの行為は性交の代償行動だったと見ることができるのです。そう考えてみると、「情慾に似た慾望を感じた」のも不思議ではありませんな。春を買う金もなくて性欲を持て余していたんでしょうかねえ。
 私は時折フロイト的解釈を持ち出してきますが、それは便利だから利用させてもらっているのであって、その解釈がしっくり来るかどうかは別です。では今回はどうかというと、正直言って腹にストンと落ちてこない感じがします。
 ま、しっくり来るのが欲しかったら、他を当たるか自分で論考するかして下さいな。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

渡辺温「男爵令嬢ストリートガール」

あらすじ…松原君が男爵令嬢と称する女・百合子と銀座でデートする。

 ストリートガールの語について調べてみたら、街娼という意味だとのこと。街頭に立って客引きをする売春婦のことです。
 だとすると、この百合子は娼婦であって、高野男爵の妹というのは嘘っぱち。とはいえそんなことは松原君の方も承知していると見えて、

『――百合子さんは一体何処で、男爵の兄さんと知り合いになったの?』(P240)

 と訊いています。どうやら松原君は彼女を高野男爵の情婦だと思ったようです。百合子は否定しましたが、それもどこまでが本当やらわかったものではありません。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

渡辺温「鏡」

あらすじ…青年が外出しようとして、姿見を見ながらシルクハットをかぶろうとすると、鏡の中の自分は帽子をかぶろうとせずにニヤニヤしている。そして、鏡の中の自分は勝手に動き、踊り出し、服を脱ぐ。青年は絶望してピストル自殺する。

 合理的に解釈するならば、疲れていたか変なクスリをやっていたかして幻覚を見たんでしょう。
 もし疲れているならば、外出は中止して静養することをおすすめします。どこへ出かけるのか知りませんが、シルクハットをかぶって行くところとなると、ある程度の格式を求められる場所だと思われます。でも、そんなところへ行っても余計に疲れるだけですぜ。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

渡辺温「若き兵士」

あらすじ…若い兵士が起き出して演習場へ向かう。

 兵士たちが徒歩で移動中に「遠い空で銃声が響く」(P333)とあることから、別の部隊が既に演習場に到着して演習を始めていることがわかります。
 だとすると、「若者たちの血は猛烈な勢を以て嵐の如く五体をかけめぐり初める」(P333)というのは、「他の部隊にゃ負けちゃいられねえ!」といった類の競争心にかきたてられたのでしょう。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

渡辺温「ああ華族様だよと私は嘘を吐くのであった」

あらすじ…アレキサンダー君と一緒に横浜で遊んで女を買う。

『君、病気なんだね。肺病だろう?』
『ごめんなさいね――あたし、死ぬかもわからない』
『いいよ、いいよ。君が死ねば、僕だって死ぬよ』
(P172)

 あれ? この会話に激しく既視感が…と思ったら、先刻読んだばかりの「シルクハット」で似たような会話がありましたっけ。使い回しってやつですかね? とりあえず、比較のために引用してみます。

「声がおかしいね。呼吸病かしら?」
「ええ。だから助からないわね。あなた、そんな病気の女、おいやでしょう?」女は、私の髪の毛を細い指の間にからませながら、そう訊き返した。
「君が、死ぬなら、僕も一緒に死ぬよ。」と私は答えた。
(「シルクハット」P132)

 他にも、自分は華族だと嘘をつくところとか、ベッドインの前に酒を飲んで踊るなど、共通点を見出すことができます。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

渡辺温「シルクハット」

あらすじ…給料日にシルクハットを買って娼婦とよろしくやるが、後でその女が「かさかき」だと知って涙する。

 かさかき? 知らない単語が出てきたので調べてみると、「かさ-かき【瘡掻き】皮膚病にかかった人。特に、梅毒患者。」(広辞苑)とあるので、要するにあの女から梅毒をうつされたということですか。
 今だったら、梅毒じゃなくてエイズになるんでしょうかね。

【参考文献】
渡辺温『渡辺温全集 アンドロギュノスの裔』創元社

コナン・ドイル「火あそび」

あらすじ…降霊会で大変な目に遭ってしまったでござるの巻。

 作品の中で名前は出てないものの、ラップ音やエクトプラズムを示す描写が出てきます。まずはラップ音。

 かすかな、ピシッという鋭い音が、そこから聞こえた。縦列射撃や一斉射撃のような音、凍りつくような夜に勢いよく燃える松明のような音だ。(P221)

 次にエクトプラズム。

 緑がかった黄色い燐光――いや、光というよりも、発光する蒸気といったほうがいいかもしれない――が、テーブルの上に出現していた。(P221)

 ついでにポルターガイストも起これば…とも思いましたが、あの怪物が暴れて部屋の中が滅茶苦茶になったのだから、それはそれでポルターガイストの役割を果たしたと言えなくもない。

【参考文献】
コナン・ドイル『北極星号の船長 ドイル傑作集2』東京創元社

コナン・ドイル「銀の斧」

あらすじ…ブダペスト大学のオットー・フォン・ホプシュタイン教授が惨殺された。犯人はもちろん、凶器も動機も不明のまま捜査は難航する。そんな中、容疑をかけられていたユダヤ人シッファが同様に惨殺される。

 殺人事件ならばシャーロック・ホームズの出番ですが、ロンドンからではブダペストはちょっと遠い。それでも、ホームズ・パスティーシュの中にはアメリカや日本へ渡っている例もあるので、パスティーシュならば充分に行ける距離でしょう。
 それでホームズならばどう動いたかを考えてみました。
 まず、被害者の傷口の形状や微細な残留物などから凶器を特定してしまうかもしれません(我々読者は不幸にも、タイトルによって凶器を知ることになる)。又、本作では二人の学生が凶器を偶然発見していますが、ホームズならば論理の必然(推理)によって突き止めるでしょう。

【参考文献】
コナン・ドイル『北極星号の船長 ドイル傑作集2』東京創元社

コナン・ドイル「青の洞窟の恐怖」

あらすじ…ドクター・ジェイムズ・ハードキャッスルが転地療養でアラートン農場に滞在していると、青螢石(ブルージョン)の洞窟に恐ろしい化け物が棲んでいるという話を聞き、洞窟内を探検する。

 当初、チュパカブラのようなUMAかと思っていたら、UMAはUMAでも意外に巨大な獣でした。P120,P123のイラストから推測するに、体長6~7mといったところでしょうか。
 ところで、本作品にはこの怪物の名前が出てきません。怪物とか化け物と呼ぶだけです。
 というわけで適当な名前を考えてみました。棲息地が青螢石(ブルージョン)の洞窟で、「あれはおそらくは太古のドウクツグマが、環境の変化につれて巨大化し変形したものであろう」(P125)とあるので、「ブルージョン・ベアー(和名:青螢石熊)」と名付けておくことにします。

【参考文献】
コナン・ドイル『北極星号の船長 ドイル傑作集2』東京創元社

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