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森鴎外「羽鳥千尋」

 羽鳥千尋という若くして死んだ青年が森鴎外に送った手紙をまとめたもの。最初に森鴎外が羽鳥千尋について説明し、そこから先は羽鳥千尋の手紙が延々と続きます。ですので、本作の作者は羽鳥千尋であって、森鴎外はプロデューサーだとも言えます。
 さて、肝心の手紙を読んでみると、「小学の八年を首席で経過した」「中学二年の試験を受けて、首席で入選した」「五十余人中の首席で中学の業を卒えた」(いずれもP338)という学歴自慢に始まり、更に自分は「憧憬の子」(P343)であり「敏感」(P345)であり「思想も行状も積極的であり」(P347)、「●(厭の下に食。訓みは「あ」)くことを知らぬ知識欲を有している」(P347)…もうこれくらいにしておきます。とにかく自慢しているのです。
 ここからうかがえるのは、羽鳥千尋の強い自信と強い自己顕示欲です。巻末の解説でも「ナルシスティック」(P380)と評されているのを見て、なるほど彼はナルシストのようだと納得しました。
 そんな彼は悲劇的な死を遂げることで、文豪の作品に悲劇の主人公としてその名を残しました。これにより彼の自己顕示欲は(ある程度は)満たされたのではないかと思いたい。

【参考文献】
森鴎外『灰燼/かのように 森鴎外全集3』筑摩書房

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