森鴎外「魔睡」
あらすじ…法科大学教授・大川渉は、友人の医科大学教授・杉村茂から、妻を磯貝医師のところへ行かせるなとの警告を受ける。杉村が帰った後、既に帰宅していた妻の様子が変だったので事情を訊いてみると、妻は磯貝から魔睡術をかけられていたことがわかる。
魔睡術とは、本書の注釈によると、「相手の意識を半覚半睡の状態に置き、施術者の暗示・命令に従わせる」(P199)とあり、催眠術の一種と言えるでしょう。
それにしても、「魔睡術」とは実に中二病っぽいネーミングですな。
ともあれ、そもそも大川が魔睡術を知るに至ったのは、こっくりさん→机叩き(table-lifting, table-turning)→降神術(Spiritismus)→魔睡術という変遷を辿ったからです。魔睡術自体は科学的なものであるとしても、そこには充分に魔術的・オカルト的な色彩が認められます(大川夫人にとっては、魔睡術は邪悪な魔法であり、それを使う磯貝は邪悪な魔術師だったでしょう)。
« 筒井康隆「ヤマザキ」 | トップページ | 森鴎外「うたかたの記」 »
「書評(小説)」カテゴリの記事
- 樋口一葉「この子」(2023.05.16)
- 樋口一葉「わかれ道」(2023.05.15)
- 樋口一葉「うつせみ」(2023.05.14)
- 樋口一葉「ゆく雲」(2023.05.13)
- 樋口一葉「大つごもり」(2023.05.12)
コメント