筒井康隆「ヤマザキ」
あらすじ…本能寺の変が起こり、備中高松上を攻めていた羽柴秀吉軍は、毛利方に本能寺の変を知られる前に早急に和議をまとめ、引き返すことにする。
前半は普通の戦国時代物の時代小説なのですが、途中からおかしなことになります。
「手紙を書くまでもあるまい。電話をかけよう」秀吉は机の上の受話器をとりあげた。「茨木城の中川につないでくれ」(P674)
戦国時代にいきなり電話が登場しています。しかも、その後の秀吉一行の移動手段が新幹線(!)。そして停電などのトラブルに遭遇しながら中国大返しをしていきます。
「どうしてこうなった?」と読者に疑問を抱かせたまま、物語は最後の段へ。
「ふん」秀吉は彦右衛門を見つめながら、ゆっくりといった。「そちはきっと、この『説明』を求めておるのであろう。どうじゃ。そうに違いなかろう」秀吉は歯をむき出して、にやりと笑った。「だが、よく聞け。あいにく『説明』はないのじゃ。うむ」彼はうなずいた。「説明は、何もないのじゃ」(P683-684)
作中の人物にメタ発言をさせることで、読者の疑問に答えることを拒否して終幕としています。ここまでやられると、かえって痛快ですな。
【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 地の巻』新潮社
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やってはいけないネタバレって、あると思うけどな。まあ、いまのご時世じゃ確かに、そんなこと言ってもどうしようもない気はするけど。
投稿: 読んだから、実害は受けて無いんだけど | 2012年11月 8日 (木) 21時06分