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バスカヴィルの獣犬(2002年、イギリス)

監督:デイヴィッド・アトウッド
出演:リチャード・ロクスバーグ、イアン・ハート、リチャード・E・ウラント、マット・デイ
原題:The Hound of the Baskevilles
原作:アーサー・コナン・ドイル『バスカヴィル家の犬』
備考:ミステリー/アドベンチャー

あらすじ…獣犬伝説が残る地ダートムアで、チャールズ・バスカヴィル卿が変死した。甥で相続人のヘンリー・バスカヴィルがダートムアへ赴くことになったが、モーティマー医師がシャーロック・ホームズに事件の解決を依頼する。

 ホームズがコカインを注射するシーンが登場します。原作の『バスカヴィル家の犬』ではコカイン注射の描写はなかったと記憶しています(その描写があるのは『四つの署名』)。
 シャーロック・ホームズが映像化される際にはコカインのことはカットされる場合が殆どなのですが、この映画では2回も出てきます。2回はやりすぎのような気が…。

 それはさておき、本作はBBC製作ということもあってか、なかなか出来はいい。上手にまとまっている感じがします。

【関連記事】
シャーロック・ホームズ(目次)

AVP2 エイリアンズVS.プレデター2(2007年、アメリカ)

監督:コリン・ストラウス、グレッグ・ストラウス
出演:レイコ・エイルスワース、ジョン・オーティス、スティーヴン・パスクール、ジョニー・ルイス、デヴィッド・パートコー
備考:PG-12

あらすじ…南極の基地でエイリアンを倒したプレデターたちは宇宙船で帰還の途に着く。だが、その中の一人にエイリアンの卵が寄生しており、そこからプレデターの遺伝子を持つプレデタリアンが誕生し、クルーを皆殺しにし、宇宙船はアメリカのコロラドに墜落する。と同時に、そのエイリアンを始末するべく新たなプレデターが派遣される。

 まず最初に、グロ注意。子供でも容赦なく惨死するし、生皮を剥いだ人間の死体だって登場します。…食事中に観なくてよかった。

 尚、地下(下水道)や夜間での戦闘が多く(こいつら夜行性か?)、暗くてわかりにくいのが難点の一つです。ダークナイトも暗かったが、こちらはそれ以上といったところでしょうか。

 ちなみに、派遣されたプレデターがたった一人しかいないとか、最後は政府が○○○を使って隠蔽しようとしたりとか、ツッコミを入れたくなる展開が見受けられますが、どうでもいいや。

jackass 3(2010年、アメリカ)

出演:ジョニー・ノックスヴィル、バム・マージェラ、ライアン・ダン、スティーヴォー、クリス・ポンティアス、プレストン・レーシー、ウィーマン、デイヴ・イングランド、エレン・マクーギー
備考:R-15

あらすじ…なし。

 相変わらずバカやってます。その点では安定(?)しています。
 一応、本作は3Dに対応しているそうですが、私が観たのはDVDだから別に3Dじゃなかったし、わざわざアレを3Dで堪能しなくともよい。馬鹿馬鹿しさを楽しむだけなら3Dでなくとも一向に構いません。
 ちなみに、カメラマンがゲロを吐いたり、簡易トイレで逆バンジーをやってウンコまみれになるなど、食事中には見たくないシーンが幾つもあります。ですので、飲食の最中にこれを観賞するのは避けた方が賢明でしょう。

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森鴎外「大発見」

あらすじ…「欧羅巴の白皙人種は鼻糞をほじる」(P180)という大発見をする。

 前振りやら弁明やら道草やらが延々と続いた挙句、出した結論がそれかよ。まあ、ギャグとして読めば悪くはないかもしれません。
 ちなみに少々弁護しておくと、作者(森鴎外)がこの「大発見」に到達するまでには大量の洋書を読みこなしていることがうかがえます(この作品の中だけでもたくさんの文学作品・作家の名前が登場します)。その努力は評価せねばなりますまい。

【参考文献】
『舞姫 ヰタ・セクスアリス 森鴎外全集1』筑摩書房

フレドリック・ブラウン「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」

あらすじ…フルート奏者ドゥーリイ・ハンクスは自分だけの「音」を求めて世界中を旅する。そしてドイツのハーメルンへ辿り着く。

 現代版ハーメルンの笛吹きともいうべき作品。
 たとえ芸術家であっても越えてはならない一線があるわけで、それを越えてしまったらそれ相応の報い、しっぺがえしを受けなければならない。そんな寓意を感じることができます。

【参考文献】
仁賀克雄・編『v』早川書房

森鴎外「有楽門」

 満員電車のありさまを描写した短篇で、これといったストーリーがあるわけではありません。ただ話に動きがあるとすれば、電車が満員になったので出発したということぐらいでしょうか。
 ちなみに平成の時代にも満員電車は健在ですが、この作品に登場する明治の満員電車とは様子が異なります(例:乗員・乗客の服装など)。比較してみるのもいいかもしれません。

【参考文献】
『舞姫 ヰタ・セクスアリス 森鴎外全集1』筑摩書房

エイヴラム・デイヴィッドスン「エステルはどこ?」

あらすじ…西インド諸島出身の家政婦クイーン・エステルは、ブードゥー教の魔術を使って、口やかましい雇い主の夫人を殺す。

 エステルはシガレットケースの中にダッピー(※)なるものを入れています。どうやらこれが、彼女の使い魔のようです。
 日本には行者が管(くだ)の中に管狐(くだぎつね)を入れて使役するという話がありますが、それと似ているといえば似ていますな。

※本書の説明文によると、ダッピーとは「西インド諸島に伝えられる幽霊の魂、死者にとりついた魂」(P78)とのこと。

【参考文献】
仁賀克雄・編『幻想と怪奇 おれの夢の女』早川書房

坂口安吾「梟雄」

 斉藤道三の一代記。
 前半の、一介の僧侶から美濃の国主に成り上がるまでのアグレッシブさとは対照的に、後半では斉藤義龍や織田信長に対して手出しをしていないなど消極的なところが目につきます。
 ただし、義龍を「六尺五寸の大バカ」(P500)、信長を「バカヤロー」(P502)と呼んでいることから、一応の毒を吐いて蝮らしさを示してはいます。

【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 天の巻』新潮社

林芙美子「羽柴秀吉」

 本能寺の変後の中国大返しから、賤ヶ岳の戦いの直前までの羽柴秀吉を描いたもの。
 秀吉がお市の方(作品内では「小谷の方」と表記)に恋着するくだり(P399)を書いたし、柴田勝家との対立も長々と書いてきたのだから、いっそのこと北ノ庄城落城、即ち柴田勝家とお市の方の自刃まで書いてもよかったのではないでしょうか。そっちの方が区切りがいい。

【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 天の巻』新潮社

永井龍男「へちまの棚」

あらすじ…若侍・小柴六三郎と芸者・そのが心中して冥土へ旅立つ。そしてついに閻魔王宮へ…。

 二人が三途の川の茶屋で休んでいるくだりで、茶屋に

 「電話交換手募集」というのが貼ってありますので、
 「さて、冥途にも電話局があると見える」
(P424)

 ちょっと待て。江戸時代の人間がなぜ電話を知っているんだ?
 とまあ、こんな感じでユーモラスに話が展開してゆきます。この作品について言えば、時代考証なんてするだけ野暮ってもんでしょう。

【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 天の巻』新潮社

井伏鱒二「普門院の和尚さん」

あらすじ…小栗上野介について調べていた普門院の和尚さんが、上野介を斬首した原保太郎がまだ生きていたことを知り、会いに行く。

 小栗上野介が死んだのが慶応4年(1868年)で、和尚と原保太郎が会ったのが昭和8年(1933年)。つまり65年もの開きがあります。
 「いま時、小栗を斬首した男がこの世にいるとは思われない」(P157)と、もう死んでいると普通は思いますが、あにはからんや、まだ生きていたというのです。
 う~ん、65年かあ…、歴史の生き証人に話を聞くにはギリギリといったところでしょうか。

【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 天の巻』新潮社

【関連リンク】
普門院

谷崎潤一郎「小野篁妹に恋する事」

あらすじ…小野篁は異母妹の家庭教師をしているうちに彼女に恋をし、あまつさえ妊娠させてしまう。妹の母親が感付いて彼女を監禁するが、妹は悶死してしまう。そして、彼女は幽霊となって篁のもとへ通うようになる。

 この作品は『篁日記』を元に書いたとありますが、インターネットで少々調べたところ『篁物語』という呼称の方が一般的なようです。

 さて、当然のことながら異母妹と肉体関係を持つことは近親相姦というタブーを犯すことであり、してはならないことです。であるからこそ小野篁といえども関係を公にすることはできませんでした(後に舅の右大臣と妻の姫君には告白している)。
 聖徳太子の時代ならば異母兄妹が結ばれることは有り得ました(例えば聖徳太子の両親・用明天皇と穴穂部皇女は異母兄妹です)が、平安時代には許されないことになっていたわけですな。

【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 天の巻』新潮社

正宗白鳥「本能寺の信長」

あらすじ…作者(正宗白鳥)は京都見物を終えた後、本能寺に逗留する織田信長を想像してみる。

 森乱丸が織田信長に長々とおべっかを使っているあたりから違和感が続きました。まあ、正宗白鳥版の織田信長はケツの穴が小さいんでしょう。
 それはさておき、作者は本能寺の見物を希望したものの中止し、せいぜい本能寺の塀を一瞥した(P13)だけとなっています。
 そういえば私も京都観光の折に本能寺の門前を通り過ぎたことがありますな。なぜ通り過ぎたのかというと、あの本能寺は「本能寺の変」で焼亡した後に別の場所に再建されたもので、今ではただの小さな寺(京都では珍しくもない!)に見えてしまい、行く気がさらさらなくなってしまった次第。
 行けばよかったかなあ…いや、私の記憶が確かならば拝観料を取られるはずだから、その拝観料を払うに足るものがその寺にあるのだろうかと考えると…他に行くところがなくなったら行ってもいいかな。

【参考文献】
新潮社編『歴史小説の世紀 天の巻』新潮社

黄文雄『日本支配を狙って自滅する中国 世界が警戒する恫喝大国の行方』徳間書店

 タイトルにある「日本支配を狙って自滅する中国」とはどういうことかというと、

 中国は尖閣問題において日本に全面降伏させ、圧勝をおさめたが、本来ならば中国にとってもっとも親密かつ柔順な民主党政権に対して、日本国民の不信を招き、苦境に陥れてしまった。これは中国の世界戦略からすれば、決して賢明な戦術ではない。中国は「勝って負けた」という読み方もある。(P203)

 又、レアアースの禁輸で世界中にチャイナ・リスクを認識させてしまったし、自国内の反日デモがいつの間にか反政府デモになったりしています。

 ところで、本書の中にこんな図が掲載されていました。
中国のネットに流れる2050年日本支配の図(P149)



 西日本が東海省に、東日本が日本自治区になっています。そして、本書ではスルーされていましたが、朝鮮半島が朝鮮省になっています。
 これは憤青の願望と見てよいでしょう。ただし、「中国の憤青は情報統制下の中国の中で育てられた愛国右翼だから、ようするに、何も知らないような世代」(P149)とある通り、この図もかなりの無知がうかがえます。
 例えば北朝鮮と韓国をまとめて朝鮮省としていますが、政治体制・社会制度・経済が全く異なる二つを一緒くたにするのは無理があります。又、日本人も朝鮮人も中国による支配を望んではいないから、これらの地を占領すれば暴動や反乱(我々から見れば自由と独立を懸けた戦い)が必ず起こります。それを鎮圧するために絶えず大規模な軍隊を駐屯させなければならず、その負担と消耗は大きい(イラク駐留のアメリカ軍を見よ!)。その間にも占領地の荒廃と経済の疲弊がどんどん進むから、中国の言う「核心的利益」を守るどころではなくなるでしょう。
 この未来予想図について他にも突っ込みたいところはありますが、これくらいにしておきます。あんまり長々と真面目に評論する気にはなれないので。

【参考文献】
黄文雄『日本支配を狙って自滅する中国 世界が警戒する恫喝大国の行方』徳間書店

えとう乱星「影打ち」

あらすじ…小城鍋島家の当主の弟・鍋島直勝は、ほんの気まぐれから溝呂木新三郎と成瀬兵馬に真剣での試合を命じる。

 いやちょっと待てよ。鍋島直勝は主筋とはいえ当主じゃないんだからそんな権限ないでしょう。そもそも新三郎も兵馬も当主・元武の家臣であって直勝の家臣ではないのだから、元武にしてみれば「お前は何を勝手に、儂の家来に殺し合いをさせてるんだ」ということになります。
 そう考えると、元武が事前に止めるべきなのですが、止めていません。ひょっとしたら、元武は国許にいて試合を止める間もなかったのかもしれませんな。

【参考文献】
朝松健・えとう乱星『伝奇城』光文社

朝松健「秘法 燕返し」

あらすじ…鐘巻自斎と佐々木小次郎が決闘。

 燕返しといえば佐々木小次郎の必殺技であり、しかも佐々木小次郎はこの後に宮本武蔵との対決が控えています。そう考えると、どっちが勝者か想像が着いてしまいますな。

【参考文献】
朝松健・えとう乱星『伝奇城』光文社

芦川淳一「サムライ・ザ・リッパー」

あらすじ…夜鷹が惨殺され死体を切り裂かれる事件が発生。平賀源内が捜査する。

 タイトルの「サムライ・ザ・リッパー」は、イギリスのジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)から来ているものですが、そのタイトルで犯人は少なくともサムライであることがバレています。
 ちなみに本作の主人公・平賀源内の捜査能力はそんなに高くないです。ネタバレになるので詳細は伏せますが、物語の中で推理を大きく外していますし、クライマックスで重要な場所に辿り着いたのも、論理の積み重ねによる必然ではなく迷子になった末の偶然ですからね。
 まあ、平賀源内がいくら多芸多才といっても、捜査のプロではないのだからそこまで期待してはなりますまい。

【参考文献】
朝松健・えとう乱星『伝奇城』光文社

丸亭素人「化物屋敷」

あらすじ…田舎の借家に引っ越したら夜な夜な怪異が起こるでござる。

 ストーリーはよくあるホラーもので、これといって目新しいものではありません。
 ただ、「木武留商会(きぶるしょうかい)」など妙にバタ臭い名前が出てくるなと思っていたら、巻末の解説によると本作は丸亭素人の訳したもので、原作は不明とのこと。推測するに、木武留商会は原作に登場する名称をもじったものでしょう。
 そこで、本作に登場する人物名や地名などが、原作では何だったのか推測してみることにします。ただ、肝心の原作が不明なので確かめようがありませんが…。

瀬川浅治(せがわあさじ)→アーサー・セーガン
竜動(ろんどん)→ロンドン
桃洲村(ももすむら)→モース村
宇井川(ういがわ)→ウィー川
木武留商会(きぶるしょうかい)→キーブル商会

 とまあ、こんなもんですかね。ちなみに池尻やお善、栗田さん森川さん等は、しっくり来るのが思い浮かびませんでした。

【参考文献】
『傑作短篇集 明治探偵冒険小説集4 露伴から谷崎まで』筑摩書房

那須正幹「まぼろしの町」

あらすじ…中学生の少年がふとしたきっかけで10年前に自分が住んでいた地へ行く。

 主人公の少年が「まぼろしの町」にトリップしています。
 移動手段に使われた「バスには、ほかに乗客はいなかった」(P166)とあるし、着いたら着いたで「ねこの子一ぴき見あたらない」(P166)、しかも子供たちの歌声は聞こえてくるけどこれも見当たらない(P168)など、非実在感をプンプンと匂わせています。
 ともあれ、帰ってくることができてよかったですね。あの時に子供と一緒に家に入っていたらと思うと…。

【参考文献】
講談社文芸文庫 編『日本の童話名作選 現代編』講談社

幸田露伴「あやしやな」

あらすじ…「ばあどるふ」が頓死した。不審を抱いた刑事「だんきゃん」はそのことを署長に報告。そして署長の指揮の下、捜査が開始される。

 短編にもかかわらず登場人物が多いです。というわけで主要な登場人物の一覧表を作ってみました。

ばあどるふ…58歳のニート。死ぬ。
ろざりん…ばあどるふの妻。23歳。
ぐれんどわあ…ばあどるふのかかりつけ医。
だんきゃん…探偵(この場合は刑事)。ばあどるふの死に疑念を抱く。
へんりい・ぶらいと…警察署の署長。
うぃるりやむ…ぶらいとの部下。
ちゃあれす…ぶらいとの部下。
しゃいろッく伯爵…ばあどるふと唯一交際していた貴族。37歳。
りうし…ばあどるふ家の下女。
ぼな…ばあどるふの先妻。
てにい…しゃいろッく伯爵の従者。

 ちなみに、殺害のトリックは物語の中盤で明らかになるのですが、トリックの解明には薬品の知識が不可欠。よって、薬品の知識がない読者は、後半で明らかにされる動機およびそれにまつわる過去の因縁を推理することになります。
 詳しく書くとネタバレになるので詳細は伏せますが、(四)で提示された手がかりから伯爵とばあどるふの暗い過去を感じ取ることができるし、優秀な推理家ならそこから多くの推理を導き出すことができるでしょう。

【参考文献】
『傑作短篇集 明治探偵冒険小説集4 露伴から谷崎まで』筑摩書房

角野栄子「ひょうのぼんやり おやすみをとる」

あらすじ…動物園の豹「ぼんやり」が、休みを貰って街を散歩し、老婆と出会う。

 現実世界で動物園の豹が街をぶらついていたら大騒ぎになりますが、こちらはファンタジーの世界らしいので(その証拠に人間と豹が普通に会話している)、そこは大して問題にはならないようです。

【参考文献】
講談社文芸文庫 編『日本の童話名作選 現代編』講談社

村上春樹「ふわふわ」

あらすじ…猫と一緒に昼寝。

 「雌猫」(P324)や「轟轟」(P325)といった、童話にしては難しい文字が登場します。これは大人向けだということを示しているのか、あるいは児童に対して「ここまで背伸びしてみろ」と言っているのか…。

【参考文献】
講談社文芸文庫 編『日本の童話名作選 現代編』講談社

荒又宏監修『太陽の地図帖008 水木しげるの妖怪地図 47都道府県 ご当地妖怪を訪ねる』平凡社

 水木しげるの妖怪本を読むのは、これで何十冊目だろうか…。世の中に多くの種類が出回っていて、私はその一部を読んでいるにすぎないのですが、それでも2ケタは確実に行っているくらいです。
 というわけで、本書に出てくる妖怪たちの多くが既知のものです。どこかで見たことあるな、こいつら…。
 そうなると、ついつい初見の妖怪を探してしまいます。ふむ、本書の中では出世螺(しゅっせぼら)(50)や敷次郎(P76)などが初見ですな。
 でも、付属の説明文によると出世螺は竜だし、一方の敷次郎は「顔は蒼白」とあるので幽霊っぽいところがあります(敷次郎という名前からして元々は死んだ鉱夫の幽霊だったのが妖怪化したのかな?)。

【参考文献】
荒又宏監修『太陽の地図帖008 水木しげるの妖怪地図 47都道府県 ご当地妖怪を訪ねる』平凡社

奥成達・ながたはるみ『駄菓子屋図鑑』筑摩書房

 駄菓子屋で売っていた駄菓子や玩具、当時の子供たちの遊びなどを取り上げたもの。ココアシガレット(P18)のように今でも売っているものもあるので、「あー、これはまだあるぞ」と思ったりしながら読み進めました。

 ところで、本書の中ではこんな文章がありました。

 小学校五、六年生にかけてやたらに映画館に入りびたった。三本立ての映画館を三軒はしごして、計九本。最後の映画館を出るときには夜になっていた。(P52)

 この文を書いた人(奥成達)は1942年生まれだから小学校五、六年生というと1952~54年くらいですかね。その頃は小学生の小遣いで映画館を三軒はしごできるくらい料金が安く、しかも小学生の行動範囲内にそれだけの数の映画館があったということを示しています。又、映画1本あたりの上映時間も短かったものと思われます(もしも1本2時間だったら、2×9=18で18時間も映画を観続けた計算になり、さすがにそれは小学生には無理だろう)。

 それから、P241にBDバッジのイラストがありました。BDバッジとは少年探偵団の重要アイテムです(詳しい説明は省略)。

BDバッジ

 光文社文庫版の江戸川乱歩全集を読んでもBDバッジのイラストが掲載されていなかったので「どんなデザインだったのかな?」と思っていたのですが、これを見て「なるほどこんなデザインだったのか。文字の装飾が凝っているな」と思いました。
 ちなみに映画「K-20 怪人二十面相・伝」で少年探偵団がチョイ役で出演し、その際にBDバッジが映し出されていたはずですが、表示時間が短いせいかそっちのBDバッジのデザインは全然記憶ありません。確認する気はないのですが、おそらく同じデザインでしょう。

【参考文献】
奥成達・ながたはるみ『駄菓子屋図鑑』筑摩書房

【関連記事】
江戸川乱歩(目次)

堀江宏樹・滝乃みわこ『乙女の日本史』東京書籍

 歴女の視点で日本史を把えたもの。
 ヤマトタケルは「元祖冷血美男子」(P18)、源義経は「軍事的な天才で、頼朝を尊敬し慕っていたブラコン」(P70)、坂本竜馬は「不思議ちゃん」(P168)など、そういう風に見えるのかと面白く思えるところがあります。
 そして、乙女の視点として欠くべからざる(?)ものが恋愛とBL(ボーイズラブ)。
 「第六章 江戸時代」では庶民の恋愛事情や若衆・陰間・花魁、そして大奥での将軍と御台所の夫婦仲などを取り上げていますし、P125には伊達正宗が片倉重綱(後の片倉重長)にチューするイラストが載っていますし、P129で徳川家光が「余は男狂いじゃあ!!」と叫ぶし、他にも…いや、このくらいにしておきましょう。
 ともかくも、本書はお堅い歴史書とは違って、かなら軟らかい作りになっているので、肩の力を抜いて読むことができます。

【参考文献】
堀江宏樹・滝乃みわこ『乙女の日本史』東京書籍

ウィリアム・サンソム「届かない花束」

あらすじ…シールという男が、,庭の花を摘んで向かいのフラットに住むミス・Dに届けようと思い立つが、途中で思いとどまる。

 「シールはミス・Dに愛情などいだいていたわけではない」(P130)のに、どうして花束を贈ろうとしたのかというと、「たまたま」(P130)だそうで、要するに誰でもよかったわけですな。
 誰かとこの喜びを分かち合いたい。わっほう。そんな感じだったんじゃないかと想像します。
 でも、シールはそのまま突っ走ったりはせずに途中で我に返り、花束を贈るのを思いとどまります。たしかに、たいして親しくもない男からいきなり、「安っぽい花ばかり」(P131)の花束を贈られて、しかもなぜ自分なのかというと「たまたま」と来た日には女の方も困惑するでしょうな。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短編選(上)』岩波書店

メディア総合研究所編『放送中止事件50年――テレビは何を伝えることを拒んだか』花伝社

 1953年から2005年まで、テレビが放送内容を一部カットしたり放送を中止したり番組そのものを打ち切りにしたりといった数々の「事件」を取り上げています。
 もちろんそこには放送中止になった理由が書かれていて、政界・財界・労組・市民団体・スポンサーなどからの圧力や、「やらせ」の発覚、不謹慎など色々あります。
 ところが、「数字(視聴率)が取れないから打ち切り」というのは案外少ない。ざっと見た限りではせいぜいP45に『駆け込みビル7号室』が「目標視聴率達成できず」で打ち切ったというケースが目に付くくらいですかね。
 視聴率が低迷して打ち切りになった番組なら山のようにあるはずなんだが…ひょっとしたら、あまりに多すぎるので話題になりにくいといった理由で省略したんじゃないでしょうか。

 ところで、「国民の政治意識公表せず ◎1966年3月30日/NHK」(P18)の世論調査で、こんなものがありました。

 <日本の安全と独立について>アメリカとの同盟支持27%、非武装中立42%、武装中立14%、わからない17%(P18)

 今ではすっかり死語となってしまった非武装中立。これを支持する国民が42%もいたとは時代を感じさせますなあ。

【参考文献】
メディア総合研究所編『放送中止事件50年――テレビは何を伝えることを拒んだか』花伝社

小宮山洋子中傷ビラ

 ある日のこと、自宅のポストに一枚のビラが入っていました。

小宮山洋子中傷ビラ

 小宮山洋子厚生労働大臣の顔写真の周りに「冷血」「冷酷」「無能」と大きく書いてあり、その下に「小宮山洋子は主婦と家庭の敵」と銘打っています。又、ビラの裏側は子供手当てや夫婦別姓などを批判する内容となっています。
 一言で言えば小宮山洋子氏を中傷するビラなのですが、どこの誰が出したのかと思って調べてみると、ビラの下部に「http://www.ganbare-nippon.net/ 頑張れ日本!全国行動委員会」とありました。出元はここか。
 というわけでサイトへ行って少し探索すると、会長が田母神俊雄(いわゆる田母神論文を書いた人)で幹事長が水島総(チャンネル桜社長)とのこと。なるほど、右翼の政治団体と見て間違いないでしょう。その政治団体が左翼の政治家をアジったというわけですな。

 最後に、このビラの作成者に一つだけ忠告しておきます。政治家の政策や思想を批判するのは結構ですが、人格攻撃をするのはいかがなものか。というのは、それをやると低俗な輩だと見做されるからです。

追伸:それにしてもこのビラは悪意に満ち満ちており、実に醜悪ですな。ビラの裏側についてもう少し掘り下げようかとも思いましたが、これ以上書く気になれないのでやめておきます。

氏家琴子『三国志異聞 我、独り清めり 郭嘉物語』新風舎

あらすじ…陳群は郭嘉を不品行のかどでたびたび訴えていたが、曹操はまともに取り合おうとはしなかった。そんなある日、郭嘉の奉公人に12歳の美少年・蒋瑛がいることが知れ渡り、陳群がやってきて蒋瑛を自分の私塾に入れないかと言ってくる。

 蒋瑛が、

(そう……僕だって、こんなに殿に惹かれてる。今夜だけは、殿が牽牛で僕が織女だと思っても、神さまは許してくれるだろうか)(P72)

 と思ったり、第五章で蒋瑛が孔融にレイプされそうになったりするくだりを読んで、
「アッー! これはショタホモ小説だったのか」
 と気付きました。12歳の美少年が登場した時点で気付くべきだったのかもしれませんが、あいにく私には寵童の趣味はないので、センサーに引っかかるのが遅れた次第です。
 ちなみに、本作の中で郭嘉はノンケです。曹操との間にもホモ・ソーシャル的なものがあるようなものの、ホモ・セクシャルはないし、蒋瑛との関係だって…と、これ以上はネタバレになるので伏せておくことにしましょう。

郭嘉物語の人物相関図

【参考文献】
氏家琴子『三国志異聞 我、独り清めり 郭嘉物語』新風舎

エリザベス・ボウエン「幽鬼の恋人」

あらすじ…第二次世界大戦下のロンドン。疎開先から荷物を取りに来たミセス・ドローヴァーは、自宅のテーブルの上に自分宛の手紙が載っているのを発見する。それは、第一次世界大戦で死んだ元婚約者からの手紙だった。

 当時婚約者だったKが死んだのは第一次世界大戦と書きましたが、あらすじを書き上げてからちょっと読み返してみると、作品内では第一次世界大戦とは書いていませんね。でも、「フランス戦線」「一九一六年頃」(いずれもP252)と出てくることから、やっぱり第一次世界大戦と見ていいでしょう。
 で、物語の舞台はその「二十五年」(P252)だから、物語の「現在」は一九四一年。第二次世界大戦の真っ最中ですな。

 ちなみに本作の原題は「Demon Lover」。GhostじゃなくてDemonです。Ghostなら死んだ人間がなるものですが、Demonは悪魔と訳されることがあり、元々人間じゃない。だとするとKも…。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短編選(上)』岩波書店

オルダス・ハックスリー「ジョコンダの微笑」

あらすじ…ハットン氏は友人のジャネット・スペンスのもとを訪れ、翌日の昼食に招待する。その帰りの車の中でハットン氏は若い愛人ドリスとイチャつく。翌日、ハットン夫妻とスペンスは昼食と午後のティータイムを過ごす。夜、ハットン氏はドリスとよろしくやって帰宅すると、病弱だった妻が死んでいた。その後、ハットン氏はドリスと結婚し、イタリアの別荘へ行くが…。

ジョコンダとはレオナルド・ダ・ヴィンチの代表作「モナリザの微笑」のモデルとなったジョコンダ夫人(モナリザのモデルには諸説あるが、今のところこれが定説)のことで、本作の登場人物ジャネット・スペンスがモナリザの微笑を浮かべているところが出てきます。
 ただし、ジョコンダ夫人は人妻ですが、ジャネット・スペンスは「三十六歳の処女」(P199)。フロイト先生なら、物語の後半でのジャネットの暴走っぷり(?)を、抑圧した性衝動が原因であると論じるかもしれませんな。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短編選(上)』岩波書店

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