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RED レッド(2010年、アメリカ)

監督:ロベルト・シュベンケ
出演:ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレン
原題:RED
備考:スパイアクション

あらすじ…元CIA工作員で年金受給者のフランクは、ある日突然、CIAの特殊部隊に急襲される。フランクはかつての仲間たちを集めて原因を探る。

 ジジイどもがチートすぎる。荒唐無稽と言ってしまえばそれまでなのですが、それをファンタジーとして楽しめばいいんじゃないかと思います。

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イラク 狼の谷(2006年、トルコ)

監督:セルダル・アカル
出演:ネジャーティ・シャシュマズ、ビリー・ゼイン、ハッサン・マスード、ベルギュザル・コレル
原題:Kurtlar Vadisi Irak
英題:Valley of the Wolves Iraq
備考:反米アクション映画、PG-12

あらすじ…イラク北部でアメリカ軍がトルコ軍部隊の本部を襲撃、トルコ人兵士11人を連行する(フード事件)。元トルコ諜報員のポラットは仲間を連れてイラクへと向かう。

 トルコの反米映画。
 大まかなストーリーは、主人公たちが敵を打倒するという、アクション映画としてはよくあるパターンです。しかしながら、本作の特徴はその中に実際に起きた事件(捕虜虐待など)や噂(臓器売買の都市伝説)をうまく織り込んでいるという点にあります。よくここまで詰め込んだものだと感心してしまいます。

陰獣(2008年、フランス)

監督:バーベット・シュローダー
出演:ブノワ・マジメル、源利華、石橋凌、西村和彦、藤村志保、菅田俊
原題:INJU, LA BETE DANS L'OMBRE
原作:江戸川乱歩「陰獣」
備考:サスペンス

あらすじ…日本の作家、大江春泥を敬愛してやまないフランスの推理小説家アレックス(ブンワ・マジメル)は、大江の作品を非常に意識した新作を発表し、日本にプロモーションにやってくる。もちろん大江にもできれば会いたいという思いを抱え来日するが、この大江という作家、世界的に有名であるのに、誰一人として姿を見たものはないという。(パッケージの紹介文より引用)

 まず最初に断わっておきますが、設定からプロット、結末に至るまで、江戸川乱歩の原作とは大きく違っています。寧ろ別物として鑑賞した方がいいでしょう。

 ところで、本作には悪夢オチ(アレックスが悪夢を見るシーン)が何回か登場しますが、何だか作品全体が一つの悪夢であるような気がしてきました。ネタバレになるので詳細は伏せますが、はっきり言って救いがないですから。

 最後に猫好きの方へ注意というか警告を。本作には作り物ですが猫の惨殺死体が登場します。猫の生首が…と、詳しい描写はしない方がいいですね。

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D・H・ロレンス「指ぬき」

 D・H・ロレンスは『チャタレイ夫人の恋人』の作者として有名です。私も10年くらい前に『チャタレイ夫人の恋人』を読んだことがあります。

 そういえばこの「指ぬき」は、『チャタレイ夫人の恋人』と共通する点がありますな。
(1)若い人妻が主人公
(2)新婚の夫が戦争に出征
(3)その夫が傷痍軍人となって帰ってくる

 ただ、チャタレイ夫人は不倫に走りますが、こちらは「俺たちの戦いはこれからだ!」とばかりに夫婦の再生を描いて終わらせています。よかったですね、道徳的に。

 さて、今回、重要アイテムとして登場する「指ぬき」ですが、これは妻が夫を待つ間に偶然発見し、色々あって最後は夫が窓から投げ捨てています。この指ぬきの象徴的意味合いは何でしょうか?
 この指ぬきには「一八一〇年十月十五日という日付」があるのでかなり古い物だということがわかります(巻末の解説によると本作は一九一五年の作品)。そこから考えるに、これは旧来的なもの、ひいては今までの夫婦関係を象徴させておいて、それを捨てることで新たなスタートを切るのだということを示しているのかなと思います。

 最後にどうでもいいことを一つ。それは妻が夫を待つ間のこと。

 ソファの端まできた右手が、腕木とソファの接する隙間をわずかに押した。ほっそりと白い指が亀裂を押して入って行き、リズミカルに同じ動きをくりかえしながら、だんだん奥のほうへ、古いソファのピンと張った絹地の隙間ふかく入って行く。暖炉の火が窓の壷に挿してある黄色い菊をちらちらと照らしている。心は緊張のために空白になっていた。
 指は一刻も動きをとめず、じりじりとソファの亀裂の奥ふかく入って行き、探りに探りつづけて底に達した。たしかに底だった。そこまで届いた指が、それをたしかめた。たしかめた上できわめてゆっくりと、ピンと張っている亀裂の周囲全面をさぐった。
(P148)

 本来は全くエロじゃないんだけど何故かエロい。この文章の書き手が『チャタレイ夫人の恋人』の作者だからなのか、あるいはフロイト的解釈で性的な意味を見出し得るからなのか(だって亀裂に挿入するんですよ!)、あるいはその両方なのか。そのあたりの分析は長ったらしくなるのでやめておきます。
 ただ、引用文中に「心は緊張のために空白になっていた」とあるし、この引用部分の直後に「女の心に意識がめざめた」(P148)とあることから、彼女のこの一連の行為は「意識がめざめ」ていない状態、すなわち無意識下で行われていたらしいということは指摘しておきます。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短篇選(上)』岩波書店

ジェイムズ・ジョイス「痛ましい事件」

あらすじ…ダブリンの独身中年男ジェイムズ・ダフィは、ふとしたきっかけでエミリー・シニコウ夫人と出会い、次第に親しくなってゆく。だが、一線を越えるかと思われた時、彼は身を引き、二人は別れてしまう。二年後、ダフィは新聞記事で彼女が事故死したことを知る。

 シニコウ夫人は自分と別れた後、酒に溺れるようになり、それが事故の原因となったことを知って、ダフィは心の中で自己弁護に努めます。

 まったく何という結末だ! あきらかにあの女には生きる資格がなかったのだ。意志の力を欠き、悪癖の餌食となる、文明の下積みにいる屑の一人だったのだ。しかし、ここまで落ちぶれるとは! ここまで自分はあの女に瞞されていたのだろうか。彼はあの晩の彼女の感情の爆発を思い出して、いままで以上に過酷な解釈をくだした。今では、自分のとった方針を容認するのに何の躊いもなかった。(P135)

 いや、いくら何でもそれは言いすぎだろ…と、最初に読んだ時は思いました。しかし、レビューを書くに当たって少しばかり読み返してみると、ちょっと考えが変わりました。
 小心者のダフィにとって、シニコウ夫人と別れたことを後悔すれば、いや、後悔していることを認めれば、自我が保てないのではないか。だからこそ、後悔の念を抑圧するためにあのような激情的なまでの自己正当化を行う必要があったのだ、と解釈できるのです。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短篇選(上)』岩波書店

ヴァージニア・ウルフ「キュー植物園」

あらすじ…なし。

 特にこれといったストーリーはなく、キュー植物園の日常の一風景を植物&蝸牛とそこを通り過ぎる人間たちを交互に描写しています。
 平和で退屈です。しかし本作の中で「ところが今は大戦だ」(P116)というセリフがあり、巻末の解説によると本作は「一九一九年に書かれている」(P312)とあることから、これは第一次世界大戦中のことだと推理できます(第一次世界大戦は1914~1918年)。
 そういう状況下だと考えるならば、この光景は貴重なものに思えてきますな。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短篇選(上)』岩波書店

追伸:この作品の舞台となった植物園は現在も営業を続けているようです。公式サイトの日本語版はこちら

サマセット・モーム「ルイーズ」

 サマセット・モーム? はて、どこかで聞いたような気がするな…と思って巻末の解説を読んでみたら、『月と六ペンス』の作者でしたか。『月と六ペンス』は未読だし内容も全く知りませんが、書名だけはどこかの書棚で見ているはずです。

 さて、今回取り上げる短篇は、心臓の弱い女性ルイーズを、友人(男性)の視点で描いたもの。早死にするものと思われていたが意外にもしぶとく生きています。だけどそのおかげで周囲は…。
 やっぱり健康ってのはいいものなんですねえ。本人にとっては無論のこと、周囲にとっても。

【参考文献】
小野寺健編訳『20世紀イギリス短篇選(上)』岩波書店

コナン・ドイル「田園の恐怖」

あらすじ…アルプスの寒村で連続殺人事件が起こる。

 巻末の解説を読むと、犯人が誰だかわかってしまいます。私は解説の方を先に読んでしまったので犯人を当てるどころではありませんでした。
 従って、未読の方に一つアドバイスするならば、解説は後回しにしておくように、ということです。

 さて、今回の事件で犯人の正体が明らかになるくだりは意外と呆気ないもので、犯人がその「証拠」を隠そうとしていないふしがあります(犯行に失敗した時は凶器やマフラーなどをちゃんと捨てているのに!)。
 それから、動機は…精神異常ですか。短篇だから心理を深く掘り下げる紙幅がないという事情があるにせよ、精神異常で片付けるのは安易かもしれません。

【参考文献】
コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集1』東京創元社

コナン・ドイル「消えた臨時列車」

あらすじ…1890年6月3日、ムシュウ・ルイ・カラタルらを乗せた臨時列車が忽然と姿を消した。警察と鉄道会社が捜査するが行方は杳として知れない。

 本作の途中で「当時名声を博していた素人推理家」(P196)が自分の推理を開陳しているのですが、その中の「不可能なことを取り除いていけば、残ったものがどんなにありそうもないことであっても、その中に真実がある、ということは実践的推理における初歩的原理だ」(P196)という一文はシャーロック・ホームズを想起させます。
 しかし、彼はシャーロック・ホームズではあるまい。というのは、ホームズは素人推理家ではなく玄人の推理家だからです。
 おそらくこの人物はホームズの熱烈なファン(いわゆるシャーロッキアン)であり、ホームズを真似てみたのでしょう。又、「当時名声を博していた」とあることから、それまでに推理を幾つも的中させていたものと思われます(今回の事件では推理は大外れでしたけどね!)。

【参考文献】
コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集1』東京創元社

コナン・ドイル「まだらの紐――シャーロック・ホームズの冒険」

 「まだらの紐」の戯曲版。小説版との違いは執事や家政婦などの使用人がいることやジプシーの一団がいないことなどが挙げられますが、何よりも大きいのはイーニッドの姉ヴァイオレットの検死審問から始まるということです。これによって、犯罪の奥行きを増しているようです。
 又、「犯人は二人」の恐喝王ミルヴァートンがチョイ役で登場します。ストーリーの本筋とは関係ないので、ファンへのサービスカットといったところでしょうか。ミルヴァートンは「最後の事件」のモリアーティ教授や「ボヘミアの醜聞」のアイリーン・アドラーほど人気はないものの、それなりにキャラが立っていますからね。

【参考文献】
コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集1』東京創元社

コナン・ドイル「ワトスンの推理法修行」

あらすじ…ある日の朝、ワトスンがホームズの推理法を使ってホームズの状態を推理してみせる。

 シャーロック・ホームズ譚のショート・ショート。「競技場バザー」よりも短いです。
 で、今回のワトスンは推理をことごとく外して道化役を演じる羽目に陥っています。おいおい、ホームズが「投機に入れ込んでる」(P181)という推理なんておかしいですよ。ホームズと長らく同居していれば、ホームズが資産運用に興味がないことぐらいわかるでしょうに。

【参考文献】
コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集1』東京創元社

リチャード・マシスン「こおろぎ」

あらすじ…コオロギの翅の音が実は暗号で、死者の名前だと気付いた男が、コオロギの大群に襲われて死ぬ。

 どんな暗号が使われているのかというと、

「トン、トンツートン、トントンツートン……」(P16)

 モールス信号かよ! まあ、たしかにモールス信号はわからない人にはわからないから、暗号の一種といえますけど。だけどコオロギがそんなの使うんでしょうかねえ。コオロギならコオロギ独自の暗号を使えば解読される危険が減るでしょうに。

【参考文献】
仁賀克雄・編『幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる』早川書房

コナン・ドイル「競技場バザー」

あらすじ…ワトスンがエディンバラ大学のバザーに協力して欲しいと頼まれていることをホームズが見抜き、その推理を披露する。

 ベイカー街221Bの何気ない一日のうちの1コマを描いたショート・ショート。
 特にこれといった事件が起こるわけでもなく、登場人物もホームズとワトスンの二人だけ。実に平和です。
 それにしても、同居人の一挙手一投足をきっちり観察しているホームズもホームズですが、その変人に付き合ってるワトスンもワトスンだ。

【参考文献】
コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集1』東京創元社

コナン・ドイル「王冠のダイヤモンド――シャーロック・ホームズとの一夜」

 コナン・ドイルが書いた、シャーロック・ホームズの戯曲。ストーリーは正典の「マザリンの宝石」とほぼ同じなのですが、敵役がシルヴィアス伯爵ではなくモラン大佐となっています。
 モラン大佐は「空き家の冒険」に登場する人物で、彼は空気銃を使って殺人事件を起こしていますが、こちらの戯曲では空気銃は話に出てくるだけで舞台上には登場しません。
 さて、ここでふと考えたのですが、あの貴重な宝石を盗み出す犯人として、小説版のシルヴィアス伯爵と戯曲版のモラン大佐とではどちらがふさわしいでしょうか? 一般的に大佐よりも伯爵の方が社会的地位が高く、貴顕に接する機会が多いということを考えると、伯爵に軍配を上げておくことにします。

【参考文献】
コナン・ドイル『まだらの紐 ドイル傑作集1』東京創元社

ロバート・ブロック「ルーシーがいるから」

あらすじ…某所に監禁状態に置かれている女性ヴィーは、親友ルーシーの手助けで脱出するが…。

 P110の解説によると、著者のロバート・ブロックはヒッチコックの映画「サイコ」の原作者で、「ブロックはそれ以前からしばしばサイコを主人公にした短篇を書いてい」て、「本篇はそのサイコ短篇の代表作」とのこと。
 私は映画「サイコ」をきちんとした形で観ていないものの、犯人の正体についての知識があったので(有名な作品ですからね!)、本作のルーシーの正体はヴィーが着替えたあたりで気付きました。でも、勘の良い読者ならもっと早い段階で気付くことでしょう。

【参考文献】
仁賀克雄・編『幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる』早川書房

レイ・ラッセル「宇宙怪獣現わる」

あらすじ…脚本家の男が、映画館でB級SFホラー映画を観るという夢を見る。

 夢オチという手法があります。物語が展開して最後は全部夢でした、で幕切れとなるものです。夢だから話が多少支離滅裂でも許されるし、とんでもない展開があっても構わない、というメリットがあります。
 さて、今回の夢で観た映画も…いや、一応、話はまとまっているな。バカ映画としてだけど。でもまあ、何人もの女性が死んでいるのに、犯人(宇宙人)はこれといったお咎めなしで地球人の女性科学者を「お持ち帰り」して地球を去ってハッピーエンド、というのはやっぱり変ですな。

【参考文献】
仁賀克雄・編『幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる』早川書房

コナン・ドイル「危険! ジョン・シリアス艦長の航海記録より」

あらすじ…小国ノーランドが大英帝国と戦争をすることに。ノーランドのジョン・シリアス大佐には勝算があった。それは潜水艦8隻を率いて、イギリスへ食料を運ぶ商船を片っ端から沈めて兵糧攻めにするというものだった。

 小国が大国に立ち向かう場合、まともにぶつかっても勝てないので、汚い手段も辞さないし、相手の弱点もガンガン突く。ここでのイギリスの弱点は、食糧を海外からの輸入に依存していたこと(並びに備蓄が貧弱)で、相手をたかが小国と侮って対策が不十分だったことも事態を悪化させています。

 では、イギリスはどんな手を打てばよかったのか? 私は軍事の素人ですが、作戦を一つ考えてみました。

(1)護送船団方式で地上軍をノーランドへ運ぶ。潜水艦は商船ばかりを狙い、軍艦との戦闘は極力避けています。兵員の輸送船に軍艦の護衛がついていたら、おいそれとは手が出せない。
(2)上陸した地上軍でノーランドの首都を陥落させる(なるべくなら速攻で)。陸軍については本作ではよくわかりませんが、ノーランドが小国である以上、陸軍も小規模であると思われます。物量で押し切ってやりましょう。

 この作戦の問題点の一つは兵站の確保ですが、食料や燃料ならばフランスやスペインなどから購入し、運搬にはヨーロッパ大陸に張り巡らされた鉄道網を使えばいい。

【参考文献】
コナン・ドイル『ラッフルズ・ホーの奇蹟 ドイル傑作集5』東京創元社

コナン・ドイル「新発見の地下墓地」

あらすじ…古代ローマの遺跡と遺物の研究者・ケネディーは、同じ研究者のユリウス・ビュルガーが地下墓地(カタコンブ)を新たに発見したことを知り、場所を訊ねる。ビュルガーは、ケネディーがかつて一緒に駆け落ちしたものの破局したミス・メアリー・ソーンダースンとの関係について教えてくれたらという条件を出す。

 このレビューには本作の結末について若干のネタバレがあります。

 この後、ビュルガーはケネディーを地下迷宮の如き「新発見の地下墓地」に連れて行き、そこへ置き去りにしてケネディーを餓死させるという「完全犯罪」を成し遂げています。
 ただし、この方法には問題点があります。
 もしもこの時、ケネディーがペンとメモ帳をポケットの中に入れていたら、ケネディーは事の顛末を簡略にメモしていたかもしれないのです。例えば「ビュルガーにこのカタコンブへ連れてこられたけど置き去りにされた」と。
 全くの暗闇で字が書けるのかと思う人もいるかもしれませんが、物を書くのに慣れていれば多少は字が汚くなってもできないことはない。ましてやケネディーは研究者ですから、暗い遺跡の中でメモを取る作業くらい経験しているはずです。
 で、そのメモをパンツの中にでも隠しておく。もしも死体の第一発見者がビュルガーで、彼が他者を呼ぶ前にボディーチェックをしたとしてもそこまでは探らないだろうから、発見の段階で犯行は露見しない。しかし検死の段では死体を丸裸にするので、ここで初めてメモが明らかになり、ビュルガーへの告発状となります。

 残念ながらケネディーは手ぶらで来てしまったようです。迂闊迂闊。

【参考文献】
コナン・ドイル『ラッフルズ・ホーの奇蹟 ドイル傑作集5』東京創元社

コナン・ドイル「昇降機」

あらすじ…リア充のスタンゲイト空軍中佐は恋人とのデート中に嫌な予感に襲われる。気を取り直して展望塔へ上ろうとするが、昇降機が途中で泊まって立ち往生してしまう。

 本作の主人公スタンゲイト氏をリア充と述べた理由は以下の通り。

(1)美人の恋人(メアリー・マクリーン)がいる。
(2)「戦争は怪我もなく無事に乗り切った」(P210)、つまり健康体だということ。
(3)「実戦中の英雄的行動により名声も勝ち得た」(P210)、つまり社会的にはリアルヒーローだ。
(4)「三十歳になったばかり」(P210)で既に中佐。

 こんなリア充が主人公では、少なくとも今の私では共感を持って読み進めることはできませんな。
 又、これと相対するバーンズはマジキチの狂信者で、こちらは理解不能です。バーンズのバックボーンをもう少し描いてやれば少しはわかるかもしれませんが、本作の描写だけでは材料が少ないと言わざるをえません。それでも敢えて分析してみると、次のようになるでしょうか。
 バーンズの主張するところによると、「罪深き世代に予兆を示さんがためにそなたはここにある――主のおわすこと、そして罪業の上に審判あらんことを彼らに示すべき予兆なり」(P229)という神の声を聞いたとのことで、どうやら預言に従って一人ハルマゲドン(?)を実行しようとしたようです。

【参考文献】
コナン・ドイル『ラッフルズ・ホーの奇蹟 ドイル傑作集5』東京創元社

水木しげる『水木しげるの憑物百怪(下)』小学館

 上巻のレビューでは記事の内容について言及していなかったので、今回は一つ取り上げてみることにします。
 P172-175の「迷わし神」について。「姿は見えないが、これに取り憑かれると道に迷ってしまう」(P174)とのこと。イラストでも道に迷って難儀している男の後ろにいる樹木が人の顔のようであり、これがどうも迷わし神(迷い神)のようですが、散漫に眺めていたらただの風景だと見過ごしてしまうでしょう。
 さて、迷わし神ですが、私も取り憑かれた経験があります。ある時、墓参りをしようと思い立って、少々遠くにある寺院へ歩いていったことがあるのですが、どうしたわけか別の場所(神社)に二度も行き着いてしまいました。これは「今は行くな」という意味なのだろうと解釈して帰途に着いた(帰りは別に迷わなかったと記憶している)のですが、今にして思えば迷わし神に憑かれていたのでしょう。

【参考文献】
水木しげる『水木しげるの憑物百怪(下)』小学館

コナン・ドイル「ブラウン・ペリコード発動機」

あらすじ…発明家兼電気技師フランシス・ペリコードと機械技師ジェレミー・ブラウンは羽ばたき式の飛行機械を発明するが、ブラウンが抜け駆けして特許を単独で取ってしまう。

 プロペラではなく羽ばたき式の飛行機ですか! イラストが掲載されていないのが惜しまれます(「ロスアミゴスの大失策」では挿絵がたくさんあるのに!)。
 そうだ、ないなら自分で描いてしまえばいい。たとえ下手くそでも、ないよりはマシってものです。ではどうぞ。

ブラウン・ペリコード発動機

 …これじゃ飛びそうにないな。

【参考文献】
コナン・ドイル『ラッフルズ・ホーの奇蹟 ドイル傑作集5』東京創元社

コナン・ドイル「ロスアミゴスの大失策」

あらすじ…アメリカの都市ロスアミゴスには大きな発電所があった。そんなロスアミゴスで、発電所の電気を大量に使用して死刑囚を処刑しようとするが…。

 結局、電気椅子に座らせてバリバリと電流を流したら、死刑囚(ダンカン・ウォーナー)は死ぬどころか、縛り首でも銃撃でも死なない超人のできあがり。なぜそうなったのかというと、

「私だけが事情を知っておるのです。(中略)君らはあの電気ショックによって、何世紀も死を寄せ付けぬほどに、この男の生命力を増強させてしまったのですぞ」
「何世紀もですと!」
「そう、君らが彼に浴びせかけた莫大な神経エネルギーを消耗し尽くすには、何百年もかかります。電気とは生命そのものであり、きみらはそいつを極限まで詰め込んでやったんですぞ。(中略)」
(P192-193)

 という説明がなされています。もちろん現代の科学知識をもってすれば、人体に微弱な電気こそ流れてはいるものの、「電気とは生命そのもの」ではないことは容易にわかるでしょう。
 コナン・ドイルの時代には、電機の中に生命を見出していたんですかね。

【参考文献】
コナン・ドイル『ラッフルズ・ホーの奇蹟 ドイル傑作集5』東京創元社

水木しげる『水木しげるの憑物百怪(上)』小学館

 こちらは近所の図書館で借りた文庫本ですが、イラストや文書のいくつかを、所有している新書で見た記憶があります。ただ、その新書が部屋のどこにあるのか、その書名が何というのかがわからなくなっているので確かなことは言えません。
 ちなみにこれを書いている時点ではまだ上巻を読破してるだけですが、少なくとも先述の新書版より項目数・文量ともに多い。

 それにしても、憑物を絵にするのは大変でしょうな。「のっぺらぼう」や「ろくろ首」などの妖怪ならば身体的特徴が明示されていていますが、憑物となるとそうでない場合が多い。それでも狐憑きなら狐の姿をイメージできますが、何だかよくわからないものに憑かれているとなるとどうイメージしていいものか困ってしまいます。
 その点を考えると、ここまで絵にして見せた著者の手腕には恐れ入る次第です。

【参考文献】
水木しげる『水木しげるの憑物百怪(上)』小学館

社団法人日本建設業連合会『2011建設業ハンドブック』

 エコプロダクツで入手しました。
 中を見てみると棒グラフや折れ線グラフ、円グラフなど、表やグラフのオンパレードで、解説文は申し訳程度に添えてあるだけです。これは読み物というより資料ですな。
 とはいえ、資料を見て分析・評論したりはできます。
 例えばP2-3の「主要指標の推移」をチェックしてみます。GDPや建設投資額、大手建設会社・建設工事受注総額などのデータが2002年度から2010年度にかけてずらっと並べられているのですが、伸び率の数値のところに▲の表記がたくさんあります。寧ろ▲がない方を探すのが難しいくらいで、建設業就業者数に至ってはずっと▲が付いています。
 この▲とはマイナスの意味であり、従って▲だらけのこの表は、建設業が没落し続けていることを示しています。没落という表現が不穏当だというのなら縮小傾向にある、と言い換えてもいい。

2011建設業ハンドブック

山田風太郎「黄色い下宿人」

あらすじ…シャーロック・ホームズはクレイグ博士から依頼を受ける。隣に住む金持ちの老人が失踪したという。ホームズはワトスンを連れてクレイグ博士のところへ行くが、そこには黄色い日本人がいて挙動不審だった。

 山田風太郎が書いたホームズ・パスティーシュ。
 ここに登場する日本人の正体については明かさない方がいいですかね。あ、でも、ヒントだけは言っても差し支えないでしょう。

「いや、よくきて下さった。これは日本人の留学生で、ジューブジューブ氏――」
「え?」
「ジューブジューブ――棗さ、まだ未熟で黄色いが」
(P239)

 この時代にロンドンに留学していて、「なつめ」という日本人といえば…。そういえば私は以前、このジューブジューブ氏がロンドン留学時のことを書いた文章を読んだ記憶がありますな。たしかロンドン塔を見物して種々の幻(亡霊)を見るという趣でしたっけ。

 さて、この「黄色い下宿人」という作品自体の出来についても述べておくと、最後にジューブジューブ氏が活躍しすぎるきらいはあるけれど、なかなか上手に仕上げているなという印象を受けます。ホームズ・パスティーシュの中には「いくら何でもその設定には無理があるだろ」という作品もありますが、本作にはそういったところが(少なくとも私の目には)見受けられませんでした。

【参考文献】
山田風太郎『奇想小説集』講談社

山田風太郎「自動射精機」

 自動射精機とは、自動販売機のように街のそこかしこに置いてあり、男が自分のイチモツを自動射精機の穴に入れ、コインを投入すると穴が動いて一発抜いてくれるというものです。
 男同士が酒の席で話すような馬鹿話なのですが、よくよく考えてみると自動射精機には色々と欠点があるように思えてきます。
 例えば衛生上の問題。不特定多数の男性が同じ穴を使っていれば、性病感染のリスクがあります。この時代(巻末の解説によると本作の初出は昭和41年)にエイズは認知されていなかったとしても、梅毒や淋病などは知られていたはずですからね。よく厚生省が黙っていたものだ。

【参考文献】
山田風太郎『奇想小説集』講談社

中島らも「DECO-CHIN」

あらすじ…雑誌の副編集長の松本は、取材先で出会った奇形人間たちのバンド「ザ・コレクテッド・フリークス」にすっかり魅了され、彼らの仲間に入りたいと申し出るが、奇形でないと入れないと拒否される。そこで松本は友人の外科医に頼み込んで自分を奇形人間にしてもらい、奇形バンドのメンバーになる。

 松本は「スーツを着てネクタイをしめて」(P461)いる。これはこっちの社会、カタギの世界に生きているということです。と同時に、「インディーズ系ミュージック、ドラッグ、アブノーマル・セックスを三本柱とした」(P456)雑誌の副編集長として、アチラの世界とも交渉があります。マージナル・マンといえるでしょう。
 此岸から彼岸へ移住する素地があったのは、松本の「奇形化をエスカレートさせていく連中を羨ましく思うこともある」(P461)という発言からも明らかでしょう。
 しかし、だからといって「両手、両脚を根元から切断し、陰茎にケイ素樹脂を注入して永久勃起化し、さらにその陰茎を切断し、穴を開けた額の中央に移植手術する」(P491)というのはヤリすぎってもんじゃないか。何でこうも極端に走るかなあ…と思っている私なんぞはまだまだ此岸の住民です。

【参考文献】
監修 井上雅彦『蒐集家 異形コレクション』光文社

江戸川乱歩「超人ニコラ」

あらすじ…ニコラ博士と名乗る謎の老人が、玉村家の人々の偽者を拵えて、本物とすり替えてゆく。

 江戸川乱歩最後の小説作品。
 「猟奇の果」の焼き直しなのですが、「猟奇の果」が前半と後半とで趣を大いに異にしているのに対して、こちらの「超人ニコラ」は怪人二十面相による窃盗(および少年探偵団&明智小五郎への復讐)で一貫しています。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵』光文社

江戸川乱歩「妖星人R」

あらすじ…R彗星が地球に接近し、世界中が騒然となる。そんなある日、銚子にカニ怪人が出現し、R彗星から来たR星人だと名乗る。

 カニ怪人が推古仏を盗み出した後、明知探偵事務所で明智小五郎と小林少年がカニ怪人について話し合うくだりがあるのですが(P225-226)、明智小五郎はどうやら怪人の正体について感付いているようです。
 一方の小林少年は「まだよくわかりません」(P226)とのこと。
 …人間が怪人のコスプレをして少年の目の前に現われ、美術品を盗むと予告し、予告通りに盗み出す奴なんて、予想がつくだろうに。小林君は何度も二十面相と戦ってきているはずなんですがねえ。

妖星人Rのマーク

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵』光文社

『ライオン 120の「エコ」のおはなし』ライオン株式会社

 ライオン株式会社が、いかにエコロジーなことをしているかをアピールした小冊子。
 120項目もよく列挙できたものだなと思いますが、最後が「その120 創業120年を迎えました」(P32)って、それはエコロジーと関係ないじゃん。一応、「これからも環境対応先進企業として持続可能なくらしの実現に取り組んでいきます」(P32)と、殊勝なことを言って取り繕ってはいますが…。
 あ、でも、タイトルの「120」は創業120年から来ているのがここからわかるようにつくってあるのか。

『ライオン 120の「エコ」のおはなし』ライオン株式会社

http://www.lion.co.jp/

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