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中島敦「牛人」

あらすじ…魯の叔孫豹には傴僂の息子・豎牛がいて、豎牛は叔孫豹の秘書兼執事として働いていた。だが、豎牛は奸策を巡らせて叔孫豹の子で後嗣の孟丙を殺し、その弟・仲壬を追放。更には叔孫豹を餓死させる。

 本作の典拠はどこだろうかと気になってインターネットで調べてみたら、豎牛の話は『韓非子』第30篇 内儲説篇上七術 第7話、『春秋左氏伝』昭公四年の記事に出てくることがわかりました。う~ん、『韓非子』と『春秋左氏伝』かあ…、どちらかといえば『韓非子』の方が入手しやすいかもしれませんな。

 叔孫は骨の髄まで凍る思いがした。己を殺そうとする一人の男に対する恐怖ではない。むしろ、世界のきびしい悪意といったようなものへの、遜った懼れに近い。もはや先刻までの怒は運命的な畏怖感に圧倒されてしまった。今はこの男に刃向おうとする気も失せたのである。(P299)

 なんという絶望感。「運命的」とあることから、この事態は避けられないものと叔孫豹は感じていたようです。この時点では手遅れですが、実際にはリスクマネジメントや情報のクロスチェックなど、やるべきことをきちんとやっていれば未然に防止できたかもしれません。しかし、病み衰えた彼の頭ではそこまで思い至らなかったのでしょう。

【参考文献】
中島敦『中国小説集』ランダムハウス講談社

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