スティーヴン・L・レヴィット&スティーヴン・J・ダブナー『ヤバい経済学[増補改訂版]悪ガキ教授が世の裏側を探検する』東洋経済新報社
日本人の一人として大相撲の八百長を取り上げようかとも思ったのですが、せっかく[増補改訂版]を読んだのだから、この版で追加された部分から一つ述べてみることにします。
[増補改訂版]で追加された「オマケ」の話の冒頭で、年老いたホームレスが登場します。そして、そのホームレスがレヴィット教授が持っているのよりもいいヘッドホンをしていることが書かれています。
ボロを着たホームレスがなんで50ドルもするヘッドホンを持っている?(P260)
その疑問についてレヴィット教授はこう答えています。
ところで、ホームレスの男にはすぐに飽きてしまったようだ。「ひょっとすると」と彼は後日言っていた。「僕のほうがものすごくズボラなんで、欲しいヘッドホンも買えないってだけなのかもしれないね」。(P260)
あんまり答えになっていないようなので、代わりに私が考察して答えておくことにします。
経済学者風に言うならば、あのホームレスには50ドルのヘッドホンを買うインセンティブがあったが、レヴィット氏にはそのインセンティブがなかったということです。
そもそもレヴィット氏の経済状態からすれば、ポケットマネーから50ドルを捻出することはさして困難なことではありません。買おうと思えば買えるわけですが、買っていません。なぜか? そこまで欲しいとは思っていないから。もしも高いヘッドホンを強烈に欲しいと思っていたら、他の出費を抑えてでも(あるいは借金してでも!)購入していたでしょう。
一方のホームレスは、ひょっとしたらミュージシャンくずれで音楽には人一倍こだわりがあったのかもしれません。そんな人物ならヘッドホンに50ドル出してでも、高音質の音楽を聴こうとしてもおかしくはない。
まあ、これは統計から導き出したものではなく、ただの推論ですので、経済学の教授に提出するレポートにこんなことを書いたら赤点を食らうでしょう。
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ヤバい経済学 [増補改訂版] 著者:スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー |
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