小松左京「くだんのはは」
あらすじ…戦時中、家を焼け出された中三の少年は、とある縁で大きな邸宅の離れに居候することになった。しかしその邸宅に住んでいたのは…。
一般的な件(くだん)と本作の「くだん」は異なる点がいくつか見受けられます。まず前者が人頭牛身であるのに対して後者は牛頭人身、そして寿命も前者よりも後者の方がかなり長いようです。
なぜ作者は執筆に際してそのように設定したのか? 姿についていえば、人頭牛身より牛頭人身の方が人間の服を着せることができ、その服を少年の目に触れさせる(P71)という演出効果を期待できます。他に理由があるような気がしますが、とりあえず思いつくのはこれくらいです。
又、寿命が長いことに関しては、もしも三日の寿命であれば、出産から子供の隔離、少年の来着と探偵を三日間で終えねばならないという無理が生じます。むしろ、くだんを長生きさせて、予言を小出しに的中させて行った方が、不気味さが長続きします。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
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