山川行夫「お守り」
あらすじ…建築会社に勤め、団地に住んでいる関口二郎は、ふとした事件から自分が規格品の人間になっているとの強迫観念に取り憑かれ、自分の独自性・個性を持つために、お守りとしてダイナマイトを持ち歩く。
近代の工業化は製品の規格化をもたらしました。規格を定めて作った方が、大量生産には都合がいいからです。
しかし、人間にもそれを持ち込むとなると、無理というか反発が生まれてきます。十人十色といいますが、それだけ人間は様々ですからね。もしも十人一色にしたければ、クローン人間を工場で培養することですな。
それはさておき、関口がダイナマイトを持ち歩くという、手段としては問題がありますが、独自性を発揮したいとの欲求は、人間を規格化しようという時代の空気への反発だと理解できます。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
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