江戸川乱歩「海底の魔術師」
あらすじ…怪人二十面相が海底に沈んだ金塊を狙う!
ええと、今回の二十面相のかぶり物は「鉄の人魚」と「おばけガニ」ですか。
もはや変装というレベルではなく、変身といった方がいいのかもしれません。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯』光文社
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江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
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あらすじ…怪人二十面相が海底に沈んだ金塊を狙う!
ええと、今回の二十面相のかぶり物は「鉄の人魚」と「おばけガニ」ですか。
もはや変装というレベルではなく、変身といった方がいいのかもしれません。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯』光文社
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江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
あらすじ…世捨て人のウイリアム・レグランドが、新種の黄金虫(スカラビアス)を拾った時に入手した羊皮紙には謎の暗号文が隠されていた。レグランドはそれを解読し、海賊キャプテン・キッドが隠した財宝を掘り当てる。
この作品は暗号解読という点で有名です。しかし私はその方面はあまり得意ではないので、別のことを取り上げておくことにします。
海賊キャプテン・キッドの隠し財宝というのはわりと有名な伝説で、日本でいうところの徳川埋蔵金や奥州藤原氏の隠し金と相通ずるものがあります。
尚、宝探しの題材としてはメジャーである分、使い古された感がなくもない。しかし知名度が高いので、一般の読者に受け入れやすいのかもしれません。
【参考文献】
西崎憲編訳『エドガー・アラン・ポー短篇集』筑摩書房
第八章「強者は単独で最も強い」では、自分たちの理念をパクった(とヒトラーが思っている)新党が次々とでき上がってきたことを非難しています。
とつぜん、残るくまなくわれわれの綱領を書きうつした綱領ができあがり、われわれから借りた諸理念が闘いとられ、われわれがすでに数年来闘ってきた目標がたてられ、国家社会主義ドイツ労働者党がすでに長いあいだ闘ってきた道がえらばれたのだ。人々は国家社会主義ドイツ労働者党が長く存続してきたにもかかわらず、新党を設立せざるをえなかった理由を、あらゆる手段で基礎づけようとするのである。ただしかれらがその高貴な動機をこじつければこじつけるほど、その空語はますます真実さを失ったのだ。(P185-186)
先達としての矜持・誇りといったものが感じられます。
となると、本章のタイトル「強者は単独で最も強い」の「強者」は自分たち(国家社会主義ドイツ労働者党)のことであり、「単独で最も強い」はパクリ政党に対して「お前らと手を組む気なんかねーよ」と言い放っているようなものですかねえ。独裁者らしいといえば独裁者らしい。
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わが闘争(下)―国家社会主義運動(角川文庫) 著者:アドルフ・ヒトラー |
アメリカのロージャー・スカーレット「エンジェル家の殺人事件」を江戸川乱歩が手がけたもの。
実は私は子供の頃、子供向けに書き直された『三角館の恐怖』を読んだ記憶が残っており、P380の住人一覧をチェックして「名前はすっかり忘れてしまっていたが、たしかこいつが犯人だったな」と碌に読まないうちから犯人探しの作業を放棄することができました。
それにしても、どうしてこの作品のことを憶えていたんだろう? 色々考えてみた結果、犯行の動機が意外なところにあったという、ある種のどんでん返しが子供心に印象に残っていたのではないかと思い至りました。犯行のトリックはすっかり忘却していたのに対し、犯行の動機はボンヤリと憶えていたからです。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖』光文社
【関連記事】
江戸川乱歩(目次)
あらすじ…少年たちが野球をしていたところへ魔法博士と名乗る怪人物が現われ、マジックの数々を見せる。そして数日後、魔法博士は子供たちを館に集めてマジックショーを披露するが、天野勇一君と共に姿を消してしまう。
魔法博士の正体は例によって例の如くなのですが、明智小五郎をいきなり襲わずに、彼よりも知力・体力の劣る子供から攻めるというのも、いつも(?)の通り。
それはさておき、今回の明智小五郎は病気療養中ということで捜査に乗り出すのは後の方となっています。そのまま床に伏せったままで指示を出してベッド・デテクティブとして活躍するのも悪くはないな…と思いましたが、さっさと回復しやがりました。大冒険の数々で鍛えられているから、回復力も強いんでしょうねえ。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖』光文社
【関連記事】
江戸川乱歩(目次)
あらすじ…時計ばかりを盗む青銅の魔人が東京都内に出没し、市民を恐怖に陥れる。そんなある日、手塚昌一君の前に青銅の魔人が出現し、昌一の父・手塚龍之介が所有する「夜光の時計」を盗むという予告状を出す。
江戸川乱歩の戦後第一作目がこれ。終戦直後とあって浮浪児たちが登場します。
それはさておき、本作の中で小林少年と明智小五郎はこんな会話を交わしています。明智事務所に依頼人がやって来る直前のことです。
「先生、少年探偵団の連中が、僕にやかましくいってくるんです。なぜ先生は何もしないで、だまっていらっしゃるのかって僕をせめるんですよ」
(中略)
「そんなにさわがなくても、今に僕の所へ依頼者がやってくるよ。青銅の魔人といわれているやつは、機会だか人間だか、えたいの知れない怪物だ。敵にとってふそくはないね。小林君、久しぶりで大いに腕をふるうんだね」(P36-37)
少年探偵団がなぜせっつくのか、そして明智小五郎は意欲を見せているにも関わらず依頼人が来るまで動こうとしないのはなぜなのか、両方ともわかる気がします。
まずは少年探偵団の方から。青銅の魔人は盗みを働く悪者であり、名探偵明智小五郎は正義の味方である。正義の味方が悪者を滅ぼすのは当然である。一刻も早くそうすべきである。
一方、明智小五郎は、探偵事務所を経営する身です。たしかに悪者を放置しておいていいはずがない。しかし、捜査には金がかかるし、妻の文代と助手の小林少年を養っていかねばならない。依頼人がいなければ依頼料が入らないし、誰も依頼していない段階で首を突っ込めば全て自分の持ち出し、つまりは大赤字。私立探偵なんかやっていられなくなる。
両者の論理の差異は、少年探偵団が非営利の組織であるのに対し、明智探偵事務所は営利組織であるという違いに発するものと思われます。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖』光文社
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江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
あらすじ…病み衰えた旧友ロデリック・アッシャーの招きに応じて私はアッシャー家に逗留していたが、やがてロデリックの妹レディー・マデラインが死に、彼女の死体を二人で地下室に運ぶ。7~8日後の嵐の夜、妹はよみがえり、兄を死に至らしめる。私は逃げ出し、旧い街道からアッシャーの屋敷が崩れ落ちるのを目撃する。
さて、この作品をどう評したらいいのだろうか、ちょっと思案に暮れてしまいました。というのは、どいつもこいつも病んでいるような気がして、何だか私もその狂気の影響を受けてしまいそうになるからです。
それから、広大な屋敷が舞台なのに使用人の気配が感じられない。この時代の地方の旧家ならばメイドや執事、従僕などがいてもおかしくないのですが…。というより、病弱なマデラインとロデリックだけで家事をこなせるとは思えない。
まあ、これはちょっと読んだだけでも噴出してくるたくさんの不明瞭な諸点の一つに過ぎないのですが、このような疑問点を洗い出すのは…ちょっとしんどいですかね。
【参考文献】
西崎憲編訳『エドガー・アラン・ポー短篇集』筑摩書房
【関連記事】
・アッシャー家の崩壊(1928年、アメリカ)
・アッシャー家の末裔(1928年、フランス)
津原泰水「蘆屋家の崩壊」
あらすじ…第二次世界大戦下の日本。五十嵐東三博士は東京―ニューヨーク間を5時間で飛ぶ飛行機の設計図を作り上げ、秘密裏に開発することになる。アメリカ政府はこの計画を嗅ぎつけ、これを妨害しようとする。
推理小説というよりスパイ小説です。韮崎邸の地下室の描写など江戸川乱歩らしいところが散見されますが、戦時下のプロパガンダ色の強さを見ると「やはり時代が時代なんだな」と思わざるを得ません。私は別にプロパガンダを軽蔑するつもりはありませんが、乱歩の持ち味はそっちの方にはないから、作品としては面白味に欠けます。
ところで、スパイに関しては佐藤優氏の著書を読みかじった程度の知識しか持っていないのですが、それによるとインテリジェンス(諜報)には大別して4種類あるとのこと。
(1)情報収集
(2)破壊工作
(3)防諜
(4)宣伝工作
五十嵐博士の息子・新一や望月憲兵少佐が任に当たっていたのが(3)防諜ですが、対するアメリカのスパイ「F3号」は何と(1)(2)(4)の三種もやってのけています。発覚のリスクを考えると、いくらなんでも手を広げすぎだろと思ってしまいますが、ひょっとしたら乱歩はスパイについてそんなに詳しくなく、だからこうなってしまったのかもしれません。
そういえば、乱歩の作品にスパイ小説って、他にありましたっけ?
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第14巻 新宝島』光文社
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新宝島―江戸川乱歩全集〈第14巻〉 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
あらすじ…海の上に突如として出現する巨大な渦「メールシュトレームの大渦」。それに巻き込まれて九死に一生を得た老漁師がその時のことを語る。
そういえば今年の夏、川の渦に巻き込まれて渡し舟が転覆し、死者が出たという事件がありましたっけ。もちろん本作のメールシュトレームの大渦に較べれば圧倒的に小規模なのでしょうが、それでも人命を奪っているのだから油断はできない。
それはさておき、語り手の老人が最後に「あんたがこの話を信じるとはおれは思っていない」(P151)と言って話を締めくくっています。ひょっとすると今までにこの体験談を様々な人に話してきて、あんまり信じてもらえなかったので、「そうせこいつに話しても信じちゃくれねえだろ」と思ったんじゃないかと推測します。
【参考文献】
西崎憲編訳『エドガー・アラン・ポー短篇集』筑摩書房
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エドガー・アラン・ポー短篇集 (ちくま文庫) 販売元:筑摩書房 |
あらすじ…エルネスト・ヴァルドマール氏の臨終の際に催眠術を施したら大変なことになったでござるの巻。
グロ描写注意。
それにしても、「ほぼ七箇月に渡る期間」(P94)も催眠術をかけっ放しとは…。よくそれだけ長く引っ張ることができましたねえ。
【参考文献】
西崎憲編訳『エドガー・アラン・ポー短篇集』筑摩書房
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エドガー・アラン・ポー短篇集 (ちくま文庫) 販売元:筑摩書房 |
国家を人間に喩えて、興隆している時期を「若い」、衰退する時期(本書では「低成長にあえぐ時代」(P003)と表現)を「老い」とするならば、中国は「老い」の兆候が見え始めているという。
その具体例として、一人っ子政策による超高齢化社会、凄まじい環境破壊、経済のバブル崩壊、等々が挙げられています。
さて、その中で「民工荒」という言葉が目をひきました。
上海周辺の外資系企業の場合、いまはまだ賃金を上げさえすれば、労働者を確保することが可能である。しかし、沿海部でも労働条件の悪いところでは、労働者の確保にも苦労するところが現れている。いわゆる「民工荒」と呼ばれる現象である。(P32)
劣悪な労働条件だと人が集まらなくなっているという事態は、いいことです。労働者にとっては労働条件の改善につながるからです。一方、ブラック企業にとっては嬉しくないでしょうけど。
え? マトモな企業だって賃金が上がるんだから嬉しくないだろうって? そりゃあ確かにそうでしょうが、そもそも経済成長すれば賃金が上昇することは火を見るよりも明らかだし、その経済成長に手を貸しているのはユニクロなどの企業たちなんですよ。今になって「中国に進出する時は、中国人の給料が上がるなんて思ってもみなかった」なんて馬鹿なこと言ったりしませんよね?
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老いはじめた中国 (アスキー新書 049) 著者:藤村 幸義 |
江戸川乱歩が戦争中に「小松竜之介」の変名で書いたもの。
一太郎という少年が知恵を使って日常の小さな問題を解決したり、大人から虫の雑学を教わったり、工場見学したり…。ともかくも一話読み切りなので、どの話から読み始めても差し支えありません。
尚、「智恵の一太郎」は少年向けの教育的な作品であるため、犯罪もエログロ描写も一切ありません。又、謎解きも単純なものばかり(これだけ短いと複雑なものは無理)。正直言って、江戸川乱歩の作品として読むとつまらないです。
ちなみに、最後の工場見学記(P322-330)はプロパガンダ色が強い。アッツ島玉砕を聞いて一太郎が涙を流す(P322)くだりは、彼が軍国少年として成長していることを如実に表わしています。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第14巻 新宝島』光文社
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新宝島―江戸川乱歩全集〈第14巻〉 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
あらすじ…長崎で海賊に誘拐・拉致された少年3人(琴野一郎、前田保、西川哲雄)は、隙を突いてボートで脱走するものの、嵐に巻き込まれて南洋のとある島に漂着する。その島でサバイバル生活をするのだが…。
少年たちは動物を連れて探検しています。犬のポパイは狩猟や行方不明者の捜索などで結構活躍するのですが、メガネザルとオウムは特にこれといった活躍を見せることなく死んでいます。
何だよ、犬はともかく猿と鳥は役に立ってねーじゃんかよ…と、ここで気付いたのが犬・猿・鳥の組み合わせ。これって『桃太郎』ですな。
ちなみに、メガネザルとオウムについて少々弁護しておきます。犬のポパイは自ら志願した形で仲間に加わっているのでモチベーションが高い。それにひきかえ、メガネザルとオウムは少年たちが捕まえてヒモでくくりつけて無理矢理連れ回している(海賊が少年たちにやったことと同じようなことをしているが、当然ガキどもは無自覚)から、少年たちのために何かしてやろうなんて気は別にない。寧ろ隙あらば逃げ出したいと思っていたことでしょう。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第14巻 新宝島』光文社
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新宝島―江戸川乱歩全集〈第14巻〉 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
あらすじ…小学6年生の宮瀬不二夫君の家に泥棒が入った。盗まれたのは、埋蔵金の在り処を記した暗号文の断片だった。不二夫の父・宮瀬鉱造が明智小五郎に解決を依頼する。
前半の盗難ではアルセーヌ・ルパンが使ったトリックが流用されていますが、今に始まったことではないのでまあいいでしょう。
それから小林少年を誘拐した手口も、乱歩作品の中で前にも出てきたような記憶があるし、後半の宝探しは「孤島の鬼」と類似しています。
…既視感が半端ない。
最後に一つ、どうでもよいことを。賊に首領にしかるべき名前をつけてやるべきでしたな。
一応、彼女は「今井きよ」(P626)という表の名前を持っているようですが、「黒蜥蜴」や「盲獣」、「二十面相」のようなインパクトのあるネーミングが欲しかった。そうした方がキャラが立ちますから。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師』光文社
【関連記事】
江戸川乱歩(目次)
あらすじ…車から落ちた石膏像の中から死体が発見される。
迂闊でした。石膏像の中の女性の死体の顔が潰されていたことに留意すべきでした。どういうことかと説明すればネタバレになってしまうので伏せておきますが、とあるトリックのフラグだということは述べておきます。
それはさておき、巻末の註釈*29~33(P733)は本作の推理パートのツッコミとなっています。時間経過にチグハグなところがあったり、共犯者がすっかり忘れ去られたり、…。
推測するに、こんなことになってしまったのは細かい部分まできちんと設計していなかったからではないでしょうか。まあ、それはそれでツッコミどころになるので結構ですけどね。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師』光文社
【関連記事】
江戸川乱歩(目次)
あらすじ…女が田辺刑事に、夫を呪い殺したと自供する。
たとえ自白があったとしても、裁判所は呪殺なんて非科学的なものを認めないから、有罪判決は出ないでしょう。寧ろ、気の毒な未亡人の狂った妄想と片付けるかもしれません。
え? 腕の症状? 何かの病気ってことで。
とまあ、科学的に片付けようとすればこうなるでしょうが、オカルト的に見るなら「同じ呪わば穴二つ」ってところですな。
【参考文献】
都築道夫『都築道夫恐怖短篇集成Ⅰ 悪魔はあくまで悪魔である』筑摩書房
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日本人の一人として大相撲の八百長を取り上げようかとも思ったのですが、せっかく[増補改訂版]を読んだのだから、この版で追加された部分から一つ述べてみることにします。
[増補改訂版]で追加された「オマケ」の話の冒頭で、年老いたホームレスが登場します。そして、そのホームレスがレヴィット教授が持っているのよりもいいヘッドホンをしていることが書かれています。
ボロを着たホームレスがなんで50ドルもするヘッドホンを持っている?(P260)
その疑問についてレヴィット教授はこう答えています。
ところで、ホームレスの男にはすぐに飽きてしまったようだ。「ひょっとすると」と彼は後日言っていた。「僕のほうがものすごくズボラなんで、欲しいヘッドホンも買えないってだけなのかもしれないね」。(P260)
あんまり答えになっていないようなので、代わりに私が考察して答えておくことにします。
経済学者風に言うならば、あのホームレスには50ドルのヘッドホンを買うインセンティブがあったが、レヴィット氏にはそのインセンティブがなかったということです。
そもそもレヴィット氏の経済状態からすれば、ポケットマネーから50ドルを捻出することはさして困難なことではありません。買おうと思えば買えるわけですが、買っていません。なぜか? そこまで欲しいとは思っていないから。もしも高いヘッドホンを強烈に欲しいと思っていたら、他の出費を抑えてでも(あるいは借金してでも!)購入していたでしょう。
一方のホームレスは、ひょっとしたらミュージシャンくずれで音楽には人一倍こだわりがあったのかもしれません。そんな人物ならヘッドホンに50ドル出してでも、高音質の音楽を聴こうとしてもおかしくはない。
まあ、これは統計から導き出したものではなく、ただの推論ですので、経済学の教授に提出するレポートにこんなことを書いたら赤点を食らうでしょう。
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ヤバい経済学 [増補改訂版] 著者:スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー |
監督:アーロン・ウルフ
出演:イアン・チーニー、カート・エリス、マイケル・ポーラン
原題:King Corn
備考:ドキュメンタリー
あらすじ…大学を卒業したイアンとカートは、甘味料や家畜の飼料など様々なところでトウモロコシが使われていることを知り、アイオワ州で1エーカーの土地を借りてトウモロコシを育ててみることにした。
炭酸飲料に使われるシロッぷはトウモロコシを原料とするコーン・シロップだと聞いて、「まさか」と思いました。というのは、この映画を観た日に、某有名ファストフード店で、某有名コーラを飲んだからです。
その某有名コーラを作っている会社のサイトから原材料をチェックしてみると、砂糖と「果糖ぶどう糖液糖」の名前が。砂糖はサトウキビですが、では後者は? wikiで調べてみると果糖ぶどう糖液糖はジャガイモやトウモロコシなどのでんぷんから作られており、原料は主にトウモロコシだとか。
ということは、あの時に飲んだコーラもトウモロコシからできていたということですか。う~ん、知らなかった。
ところで、本作ではこれ以外にも、農業の大規模化の進行によって中小の農家がやっていけなくなり、農業をやめて他の土地へ去るという問題が出ています。
日本でも国の政策として農業の大規模化が推し進められており(例:企業が農業に進出する際の規制の緩和)、将来日本もこうなる可能性があります。つまり、おじいちゃん、おばあちゃんが自営業でやっている農家がガンガン潰れて行くわけですな。
このドキュメンタリー映画は娯楽性に乏しいのですが、日本人の私でも色々と考えさせてくれる問題点を幾つも提起してくれています。
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キング・コーン [DVD] 販売元:紀伊國屋書店 |
あらすじ…野口が黒川に相談する。願いを3つかなえてやる代わりに死後の魂をいただくという契約を悪魔と結んでしまったが、何を願えばいいのだろうか?
P19の悪魔のイラストなら見覚えがあります。バフォメットだ。
それはさておき、相談を受けた黒川は、野口が「悪魔のトリック」(P14)に引っかからないように色々と知恵を絞ってあげるのですが、後で欲に駆られて自分が悪魔と契約する段になると、見事に引っかかっています(どんなトリックかは本作を読んでお確かめください)。欲で目が曇ったんでしょうかねえ。
【参考文献】
都築道夫『都築道夫恐怖短篇集成Ⅰ 悪魔はあくまで悪魔である』筑摩書房
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あらすじ…父の死を契機に、二度と戻らないと思っていた故郷に帰ることになったが、頭の中にあるのはサキ姉(死んだ兄の妻)のことだった。次第に封印されていた記憶がよみがえる…。
「オサキサマがお前と一緒に戻るって……」(P453)
このセリフは結婚フラグだな、主人公とサキ姉の。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
戦略・戦術の視点から日本の戦争史を読み解いたもの。
例えば本能寺の変(P113-119)では明智光秀の戦術ミス(例:織田信忠のいる妙覚寺に兵を配置していなかった)から、謀反は「計画性のない、発作的なもの」という説を支持しています。
誰それが実は黒幕だったという説よりはつまらないせいか、大抵の歴史小説でこの説は採用されていないのですが、本能寺の変以後の明智光秀の生彩の無さを考えると、この説もあながち否定できないような気がします。
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真実の「日本戦史」戦国武将編 (宝島SUGOI文庫) 著者:家村 和幸 |
あらすじ…伊志田一家を惨劇が襲う!
最初の殺人が起こるか起こらないかの段階で、ネット上にある「暗黒星」のレビューを少々調べていたら、2件目ほどで犯人のネタバラシをした文章に出くわしました。従って犯人を的中させることはできませんでした。
とはいえ、犯人のパターンとしては絶無というほどではないし、江戸川乱歩の他の作品でも何度か使われている(具体的な作品名を明かすとネタバレになるので伏せておきます)ので、犯人を当てるのはそんなに難しいことではないでしょう。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師』光文社
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地獄の道化師―江戸川乱歩全集〈第13巻〉 (光文社文庫) 著者:江戸川 乱歩 |
近所のTSUTAYAで入手しました。2011年後半にリリーズ(予定)の海外ドラマDVDのパンフレットです。
「V」(P4)、「ホワイトカラー」(P6)、「NIKITA/ニキータ」(P10)、「ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間」(P13)は第1話をお試し版で観賞した記憶があります。
ちなみに私が注目したのは「SPARTACUS: BLOOD AND SAND(原題)」(P16)。ローマに反逆した剣奴スパルタカスを主人公にしたドラマです。歴史劇+セックス&バイオレンスのようで、私の興味を惹きます。本パンフレットが出された段階ではまだ邦題が付けられておらず、しかも「リリーススケジュールは後日発表」とのこと。…もう発表されているかな?
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Spartacus: Blood & Sand: Season 1 [Blu-ray] [Import] 販売元:Starz / Anchor Bay |
あらすじ…日曜日、会田耕平が三戸部ミサを探す。
いいかげん、捨てられたんだってことに気付けよ、このストーカー男。おっと、この作品の舞台となっている高度経済成長期の日本にはまだストーカーの語はなかったんでしたっけ。だったら、未練タラタラのつきまとい野郎、と言った方がいいのかもしれません。
え? 辛らつすぎるって? どうもすいませんねえ。ミサちゃんの気持ちを考えると、ついついそう思ってしまうのです。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
あらすじ…昔、市助という男がいて、市助の三歳になる息子が、夜になるとタンスの上に座って夜明けまでそのままでいるという奇行を続けていた。市助はビックリして止めるが、他の家族の者はなぜか放っておく。そのうち、他の子供たちもタンスに上るようになり…。
なぜ夜になるとタンスの上へあがって座るのか? 語り手によると、「そやけど、よう言えんわ。かくしとるのやのうて、言葉ではよう言いきかせられんのや」(P252)とのこと。
想像するに、タンスの上に座っていれば、日常生活で起居している状態よりも高い視点で部屋の中を見ることができます。そこは見慣れた光景なのに、いつもと違う。しかも時は夜です。日常風景の中に異界性を見てしまい、そちらの世界に心をとらわれてしまうのではないでしょうか。
あ、ちなみに私は試してみようとは思いませんよ。私がタンスに上ったら、重すぎてタンスが壊れてしまうでしょうから。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
「僕ガ比熊山ノ古塚ヲ探検シタノハ」(P87)云々と、仮名の部分は平仮名ではなく片仮名になっています。擬古調を出したかったのかもしれませんが、それにしては現代的な文章になっているのはチグハグな感じがしないでもない。
さて、本作の元ネタは江戸時代の『稲生物怪録』ですが、よく読んでみると、「氷菓子」(P95)と書いて「アイスキャンデー」とルビを振ったものが稲生邸の近くで売られていたとか。江戸時代にアイスキャンデー?
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
あらすじ…戦時中、家を焼け出された中三の少年は、とある縁で大きな邸宅の離れに居候することになった。しかしその邸宅に住んでいたのは…。
一般的な件(くだん)と本作の「くだん」は異なる点がいくつか見受けられます。まず前者が人頭牛身であるのに対して後者は牛頭人身、そして寿命も前者よりも後者の方がかなり長いようです。
なぜ作者は執筆に際してそのように設定したのか? 姿についていえば、人頭牛身より牛頭人身の方が人間の服を着せることができ、その服を少年の目に触れさせる(P71)という演出効果を期待できます。他に理由があるような気がしますが、とりあえず思いつくのはこれくらいです。
又、寿命が長いことに関しては、もしも三日の寿命であれば、出産から子供の隔離、少年の来着と探偵を三日間で終えねばならないという無理が生じます。むしろ、くだんを長生きさせて、予言を小出しに的中させて行った方が、不気味さが長続きします。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
あらすじ…建築会社に勤め、団地に住んでいる関口二郎は、ふとした事件から自分が規格品の人間になっているとの強迫観念に取り憑かれ、自分の独自性・個性を持つために、お守りとしてダイナマイトを持ち歩く。
近代の工業化は製品の規格化をもたらしました。規格を定めて作った方が、大量生産には都合がいいからです。
しかし、人間にもそれを持ち込むとなると、無理というか反発が生まれてきます。十人十色といいますが、それだけ人間は様々ですからね。もしも十人一色にしたければ、クローン人間を工場で培養することですな。
それはさておき、関口がダイナマイトを持ち歩くという、手段としては問題がありますが、独自性を発揮したいとの欲求は、人間を規格化しようという時代の空気への反発だと理解できます。
【参考文献】
紀田順一郎・東雅夫編『日本怪奇小説傑作集3』東京創元社
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日本怪奇小説傑作集 3 (創元推理文庫) 販売元:東京創元社 |
あらすじ…村のお金持ち、ロジャー・アクロイド氏が殺された。しかも最有力容疑者である彼の義子ラルフ・ペイトンは行方不明だった。村で隠居生活を送っていた名探偵ポアロが、シェパード医師を従えて捜査に乗り出す。
ビンゴ! 私はアガサ・クリスティーとは相性が悪くて、彼女の作品では犯人を当てたことが一度もなかったのですが、今回は犯人を当てることに成功しました。以下、ネタバレにならない範囲内で、どうやって真犯人にたどり着いたのかを述べてみることにします。
まず、この作品を読む前に『アクロイド殺し』は犯人について賛否両論が激しく巻き起こったという予備知識を持っていました。だとすれば、犯人はとても意外な人物に違いないと判断しました。
それでは、この物語の中で、犯人として意外性を持つ人物とは誰でしょうか? 真っ先に思いついたのがエルキュール・ポアロ。しかし彼はその後も名探偵として活躍しているから、ここで殺人を犯すことはありえない。
次いで考えたのがアクロイド氏が他殺に見せかけた自殺説。しかしこれはナイフを刺した位置などから否定できる。
次は、最も疑わしいラルフ・ペイトン。一番疑わしい人間が犯人じゃなかったというパターンの裏を突いて…というものですが、そのテは『スタイルズ荘の怪事件』で使用済みだから賛否両論で揉めるなんて特記されることはない。
それでは、物語中でちょっとしか出番を与えられていないチョイ役たちは…意外性に欠ける。
そうやって消去法で探して行くと、最後に残っているのはこの人物くらいだなと見当をつけて読み進めてみたら、的中してしまったという次第です。
以上、長々と自慢気に書きましたが、それというのもアガサ・クリスティーの作品で犯人を当てることができてテンションが上がってしまったからなのです。
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アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 著者:アガサ クリスティー |
豊臣秀吉と真田幸村の甲冑(もちろん複製品)を展示。なぜこの二人なのかよくわかりませんが、一緒に展示されていた十文字槍とかを間近に見られたのは収穫でした。
【追伸】
ちなみに、10月10日(月)にはウルトラマンが、10月16日(日)には仮面ライダーオーズがここ(オークラランド住宅公園)にやってくるそうです。詳細はこちら。
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