太宰治「待つ」
あらすじ…若い女性が、買い物帰りに駅のベンチに座ってひたすら何かを待つ。
不安心理を描いたショート・ショート。何を待ち続けているのかわからぬまま(当の女性にもわからぬまま)話が終わっています。
本文中に、「大戦争がはじまって、何だか不安で」(P298)とあり、第二次世界大戦による社会不安が影響していると見ることができますが、社会レベルでの不安のみならず個人レベルでの不安もあるような気がします。というのは、待つ相手の候補に挙げられた(と同時にすぐに否定された)のが「旦那さま」「恋人」「お友達」「お金」「亡霊」(いずれもP298)と、社会よりも彼女個人と関係するようなものたちばかりですから(亡霊の場合、菅原道真のような大怨霊だったら別でしょうが)。
【参考文献】
太宰治『新ハムレット』新潮社
新ハムレット (新潮文庫) 著者:太宰 治 |
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