村上春樹「鏡」
あらすじ…怪談会で、中学校の夜警をやっていた時の恐怖体験を語る。
鏡に映った自分が「僕以外の僕」(P327)だと悟り、しかも鏡なんて存在しなかったとのこと。
鏡の向こう側に見えるのは自分なのか? 無論、科学的見地に立てば自分の姿を映した鏡像であるに過ぎませんが、鏡が異界との境界を示していると考えれば、そこにいるのは異界のモノということになります。
それはさておき、物語の最後で、語り手の家には鏡が一枚もないことが明かされて幕を閉じます。これは、その時の恐怖体験がよほどトラウマになっていることを表わしているようです。
【参考文献】
東雅夫=編『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』角川書店
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