岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」
あらすじ…明治時代、岡山の遊郭。醜い女郎が客の男に自らの生い立ちを語る。
夏風邪で頭がボーッとなる中、このレビューを執筆しています。ところで、この寒気は夏風邪によるものか、あるいは本作の怖さが為せるものか、はたまた両者の相乗効果によるものか、ちょっとわかりません。
堕胎、近親相姦、父殺し、人面瘡…。夜語りの中によくもまあこれだけ色々と盛り込んだものだと、読み直してみて気付きました。本当は怖いので読み直す気はあまりなかったのですが、夏風邪で頭が充分に働かないせいか、細かいプロットを思い出せず、仕方なく(と同時に半ば怖いもの見たさで)読み直してみた次第です。
妾の友達いうたら、沢で腐っとる水子の死骸だけじゃ。それで妾はおままごとをしとった。(P20)
水子が人間扱いされていない価値観の社会だったとはいえ、死体と遊ぶのは異常であり、やはりこれも怖い。
そしてやはり怖いのは、これらのことを時には「ほほほ」と笑いながら話すところでしょうな。まともな神経の持ち主なら、凄惨な話を笑顔で語れません。
【参考文献】
岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』角川書店
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ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) 著者:岩井 志麻子 |
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