宮地佐一郎『長宗我部元親』学陽書房
KOEIのゲームソフト「信長の野望」のプレイ動画をニコニコ動画で観るのですが、長宗我部元親は四国では必ずと言ってよいほど大きな存在感を放ちます。ただし全国レベルのチート武将を前にすると少々霞んでしまいますが…。ええと、たしか織田信長は彼を「鳥無き島の蝙蝠」と評していたんでしたっけ。
そんな長宗我部元親とは何者だったのかをざっと知っておこうと思い、本書を手に取ってみた次第です。
さて、長宗我部元親といえば「一領具足」という制度が有名です。
日常は土佐七郡の田園山野に棲んで、鋤、鍬をとって働く百姓土豪であった。元親は体力のある耕地を持つ、富農を武士に組み入れ、軍団を倍加して、戦闘能力に生かした。(P65)
これは織田信長・豊臣秀吉・徳川家康が推し進めた「兵農分離」とは全く逆です。この後の時代で兵農分離が定着したことを考えると、一領具足は時代に逆行する制度だと見ることもできます。
一領具足のメリット・デメリットについて論じていたら長文を覚悟しなければならないので、欠点を一つだけ挙げておきます。それは、農繁期には兵を動かせないということです。農閑期に出兵して、農繁期になる前に兵を農村に帰さないといけない。さもなくば、農業生産が大打撃を受ける。一領具足は普通に徴兵するよりも徹底して多くの人手を集めるから、戦死や戦闘の長期化などで農村に人が戻らなかった時のダメージはそれだけ大きいわけですな。
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長宗我部元親 (人物文庫) 著者:宮地 佐一郎 |
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