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池波正太郎「応仁の乱」

 応仁の乱に際し、全く無力であった室町幕府八代将軍・足利義政の苦悩を描いた中篇。
 ところでシミュレーションゲーム「信長の野望 天道PK」では「朝敵砲」なる必殺技が登場しますが(※)、本書でも「[山名持豊討伐]の院宣」(P143)という形で朝敵砲が発動されています。ただし、その後も戦いが終息せずにダラダラと続いているところを見ると、戦局を決定付けるほどの力は無いようです。
 まあ、無力さという点では全然イニシアチブを発揮できない足利義政も負けず劣らずといったところですが。

【参考文献】
池波正太郎『賊将』新潮社

賊将 (新潮文庫) Book 賊将 (新潮文庫)

著者:池波 正太郎
販売元:新潮社
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※正確には朝廷に働きかけて敵対勢力を「朝敵」に指定してもらうというもので、本作の院宣と同様、物理的なダメージを相手に与えられるわけではない。

レギオン(2010年、アメリカ)

監督:スコット・スチュワート
出演:ポール・ベタニー、ルーカス・ブラック、タイリース・ギブソン、エイドリアンヌ・パリッキ
原題:Legion
備考:PG-12

あらすじ…神は人類を粛清するために、天使の軍団(レギオン)を地上に派遣する。その命令に背き堕天したミカエルは、砂漠のダイナーへ行き、ウェイトレスのチャーリーが身ごもっている「人類最後の希望」を守るべく戦う。

 この映画を観終わった直後の感想は、「低予算で作ったな」というものでした。俳優はそんなに有名じゃないし(私は一人も知らない)、ロケ地も少ない、CGだって控えめです。
 いえいえ、別に低予算でも面白ければいいんですよ。そう、面白ければ…。まあ、つまらなければ「つまらない」ってブログに書くからそれはそれで結構なのですが。
 では、この映画は面白かったのかというと、う~ん、どうなんでしょうねえ。キリスト教徒でない私には、あのような黙示録的状況は知識の上では理解できなくもないが、キリスト教の信仰を持たないがゆえに今一つピンと来ない。
 とはいえ、キリスト教的終末の雰囲気は堪能できるので、その点は収穫かもしれません。

 ちなみに、レギオン(Legion)とは古代ローマの軍団のことで、大量の、とか大軍、を意味する語ですが、そのタイトルの通り、天使の大軍が地上にやって来て人間に憑依し、襲い掛かってきます。
 ただし、あまり統制が取れていないらしく、老婆やアイスクリーム屋のように単騎で突っ込むバカ(?)もいます。
 尚、新約聖書を読んだことがあれば、レギオンと聞いて次の話を想起するかもしれません。ちょっと長くなりますが、引用します。

 一行は、ガリラヤの向こう岸にあるゲラサ人の地方に着いた。イエスが陸に上がられると、この町の者で、悪霊に取りつかれている男がやって来た。この男は長い間、衣服を身に着けず、家に住まないで墓場を住まいとしていた。イエスを見ると、わめきながらひれ伏し、大声で言った。「いと高き神の子イエス、かまわないでくれ。頼むから苦しめないでほしい。」イエスが、汚れた霊に男から出るよう命じられたからである。この人は何回も汚れた霊に取りつかれたので、鎖でつながれ、足枷をはめられて監視されていたが、それを引きちぎっては、悪霊によって荒れ野へと駆り立てられていた。イエスが、「名は何というか」とお尋ねになると、「レギオン」と言った。たくさんの悪霊がこの男に入っていたからである。そして悪霊どもは、底なしの淵へ行けという命令を自分たちに出さないようにと、イエスに願った。
 ところで、その辺りの山で、たくさんの豚の群れがえさをあさっていた。悪霊どもが豚の中に入る許しを願うと、イエスはお許しになった。悪霊どもはその人から出て、豚の中に入った。すると、豚の群れは崖を下って湖になだれ込み、おぼれ死んだ。
(ルカ福音書 8.26-33)

 新約聖書でのレギオンは悪霊たちでしたが、この映画でのレギオンは天使たちとなっています。でもまあ、人間から見れば、いきなり人間に取り憑いて殺戮に向かわせているのですから、彼らも悪霊には違いありませんな。

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発売日:2011/02/23
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池波正太郎「黒雲峠」

あらすじ…玉井伊織とその助太刀の一行が、父の仇・鳥居文之進を山道で待ち受けていた。だが伊織は、文之進の方が正しいということをわかっているため、テンションが上がらない。

 仇討ちの一行は出発時は8人。そのうちやる気があるのは佐々木久馬と伊之助の2人。伊織を含め6人は仕方なく…といったところです。
 それでも壮絶な殺し合いに発展するわけですから、大したものです。

【参考文献】
池波正太郎『賊将』新潮社

賊将 (新潮文庫) Book 賊将 (新潮文庫)

著者:池波 正太郎
販売元:新潮社
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アガサ・クリスティー「黄金の玉」

あらすじ…金持ちの伯父エフレム・レッドベターと喧嘩したジョージ・ダンダスは、女友達で社交界の花形メアリー・モントレッサーに誘われて郊外へドライブに行く。しかし出かけた先でピストルを持ったならず者がいて…。

 「黄金の玉」(The Golden Ball)と聞いて、「すわキ○タマか?」と思いましたが、よくよく本作を読んでみると、出世や経済的な成功の比喩的表現として用いられているようです。キン○マは無関係ですし、「黄金の玉」という財宝が物体として登場するわけでもありません。
 それはさておき、ネタバレになりますが、ピストルを持った大男はメアリーが雇った友人で、メアリーは自分が連れてきた男たちが危機的状況でどう対応するかテストして結婚相手の品定めをしていました。で、ジョージは10人目とのこと。
 10回もやったのかよ…。テストに付き合わされる友人の大男(とその妻)も大変だったでしょうなあ。…いや、10回も続けられたということは、かえって楽しんでやっていたのかもしれません。
 ちなみにどうでもいいことですが、もしもならず者役を演じるのが友人ではなくメアリーの父親で、しかも最後に登場して「気に入った。娘と結婚してよろしい」とでも言ったならば、聟入り難題譚の変形バージョンに分類されていた…わけないか。

【参考文献】
アガサ・クリスティー『リスタデール卿の失踪』早川書房

アガサ・クリスティー「日曜日にはくだものを」

あらすじ…日曜日、郊外にドライブに出かけたカップルは、さくらんぼを購入して食べるが、そのかごの底にネックレスがあった。二人はそれが、盗まれた5万ポンドのネックレスだと思い…。

 もしもそのネックレスが本当に盗品だったのなら、犯人はなぜ見ず知らずの男女に託したのかサッパリわかりません。それだったら埋めるなり何なりしてほとぼりが冷めるまで隠すか、国外に逃亡してイギリス当局の手の届かないところで売り払うでしょう。
 まあ、実際に二人が入手したネックレスは盗品ではなかったのですが、真相が明らかになっても、「奇妙な新手の宣伝」(P294)のゆえに、本当かよ、と思ってしまいます。

【参考文献】
アガサ・クリスティー『リスタデール卿の失踪』早川書房

WAJIMANURI 輪島塗ガイドブック

 能登半島名産の漆器「輪島塗」の解説パンフレット。

 漆器は完成まで長い時間を要します。例えば輪島塗のお椀ができるまでどれほどの月日を要するかといえば、(中略)合計すると4年以上になってしまいます。(P15)

 4年以上とは悠長な…。いやしかし、それだけ時間がかかるということは、機械による大量生産には不向きなわけですな。
 いえ、別に非難しているわけではありませんよ。これはそういうもんだってことで許容するしかない。もし納得できないのならば、技術革新で漆を即座に乾燥させる技術でも開発すればいい。

http://www.city.wajima.ishikawa.jp/

WAJIMANURI 輪島塗ガイドブック

[アート&グルメ ふれあいの町]信州新町

 長野県信州新町の観光パンフレット。

むかし、夜なべして手袋を編んでくれた
かあさんのやさしさ、あたたかさが、
今も息づいている、「かあさんの歌」発祥の町 信州新町。
(P1)

 なるほど、あの歌は信州新町が発祥の地でしたか。
 少々心無いことを言いますが、工業化の進展した現代では、睡眠時間を削って手作業で手袋を編むよりも、ユ○クロとか西○とかジャ○コとかで買ってきた方が手っ取り早いし、下手な手製よりも品質がよかったりします。
 このことを考えた時、この「かあさんの歌」は現代日本ではリアリティーを喪失していることに気付きました。

[アート&グルメ ふれあいの町]信州新町

季刊 旅ムック 熊本版 Vol.76

 P54-57「夜のくまもと ナイトスポット」では熊本市内の「夜の店」(パブ、スナック、クラブ、キャバクラ、ショーパブ)を紹介しています。しかも、その後のP58-61はキャバクラの広告に充てられており、キャバ嬢たちがズラッと並んでいます。
 最後の方にあるとはいえ、こういうのが載っているのを見ると、
「これは大人向けなんだぞ! 子供が見ちゃダメだぞ!」
 と言っているような気がします。と、ここまで書いてきて、フト思ったことが一つ。
「そういえば、子供向けのものって載ってたかな?」
 そこでこの旅ムックをパラパラとめくって調べてみると、観光地情報では子供向けのアミューズメント施設は見当たらないし、熊本土産も子供向けの玩具・菓子は見当たらない。やっぱり大人向けですな。

http://www.tabimook.com/

季刊 旅ムック 熊本版 Vol.76

『みやざき oh! 元気!』(社)宮崎市観光協会

 宮崎県宮崎市の観光パンフレット。
 表紙を飾るのは、宮崎市観光イメージキャラクター「ミッシちゃん」。頭に木が生えている幼女です(詳しい設定は調べていないので知りませんが、胸の膨らみがないのと、2~2.5頭身であること、頬に赤みが差していることミッシちゃんは幼女であると判断します)。
 ちなみに、P16-17に宮崎の「味・お土産」が紹介されているのですが、チキン南蛮とか冷や汁って、新宿南口にある宮崎県のアンテナショップで食べることができたはずです。それから、肉巻きおにぎりは下北沢で売っていたような記憶があります。

http://www.miyazaki-city.tourism.or.jp/

みやざき oh! 元気!

『ふるさと自慢文庫 おんでやぁせ八戸』はちのへ観光誘客推進委員会

 文庫本サイズの八戸市観光情報冊子。128ページの大作で、頒布価格は200円(税込)ですが無料で入手しました。
 ちなみにP90-100に「ふるさとゆかりの人々(文化・芸術)」では、八戸市にゆかりのある文化人・芸術家を紹介しているのですが、その人物となると…。例えば八戸城下町に居住した安藤昌益(思想家)や八戸市出身の三浦哲郎(作家)はかろうじて知っているものの、羽仁もと子(教育者)、北村小松(作家)、小国英雄(シナリオライター)原信子(声楽家)、佐々木泰南(書家)となるとサッパリです。地元では有名人かもしれませんし、あるいはその分野の世界では知られて存在の人もいるかもしれませんが、さすがに私のところまでは知られていないのです。
 さて、せっかく観光情報誌を取り上げているので、その中から観光スポットを一つ紹介させていただきます。
 青葉湖畔に立つ「蛇口伴蔵之像」(P22)。…誰? 冊子によると、蛇口伴蔵胤年(1810-1866)は八戸藩士で、水利事業に取り組んだとのこと。なるほど、地元の英雄といったところでしょうか。

ふるさと自慢文庫 おんでやぁせ八戸

プレスブログ終了のお知らせ

 本日、久しぶりにメールチェックしてみたら、プレスブログが終了する旨のメールが届いていました。プレスブログよ、お前もか…。

ふながた

 山形県舟形町の観光パンフレット。
 表紙を飾るのは、舟形町キャラクター八頭身土偶のビーナちゃんです。P17に八頭身土偶「縄文のヴィーナス」が掲載されていますが、ビーナちゃんはこの土偶をもとに考案されたものだということがわかります。ただしビーナちゃんは八頭身じゃありません。せいぜい、2~2.5頭身といったところです。

http://www.town.funagata.yamagata.jp/

ふながた

岩井志麻子「岡山は毎晩が百物語」

あらすじ…岩井志麻子が岡山の寺で百物語をする。

 話の枕が凄い。乱交パーティーに出るのと百物語に出るのとではどちらの機会と回数が多いのかを云々しています。しかも、作者はどちらも経験済みとのこと。
 百物語はともかく、乱交パーティーを引き合いに出してくるとは…さすがはスケベおばさんだ。

 それにしても岩井志麻子の百物語かあ…。下ネタが多そうだな。

【参考文献】
東雅夫=編『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』角川書店

闇夜に怪を語れば―百物語ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
Book
闇夜に怪を語れば―百物語ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
著者 阿刀田 高,京極 夏彦,倉阪 鬼一郎,杉浦 日向子,岩井 志麻子,高橋 克彦,福澤 徹三,村上 春樹,若竹 七海
販売元 角川書店
定価(税込) ¥ 660

江戸川乱歩「黒蜥蜴」

あらすじ…女賊・黒蜥蜴(くろとかげ)と名探偵・明智小五郎が対決する!

 「黒蜥蜴」は三島由紀夫脚本、美輪明宏主演の演劇が有名ですが、これはその原作になります。ちなみに映画化もされていますが映画も演劇も私は未見です。
 未見ですが、美輪明宏の当たり役ということは知っていましたので、本作を読む際の黒蜥蜴のセリフは美輪明宏の声で脳内再生しました。ただし、現在の老いた声ではなく、若い頃の声で。
 黒蜥蜴の一人称が時々「僕」になることがあったり、男性に変装したりするシーンがあったりするので、その点では中性的な人物の方が似合っているのかもしれません。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴』光文社

【関連記事】
江戸川乱歩(目次)

浅暮三文「悪魔の背中」

あらすじ…ある男が、自分を捨てた女に復讐するために悪魔を召喚しようとする。

 今作で使われている悪魔の召喚方法は合わせ鏡(※)ですか。私は悪魔の召喚については詳しくないのですが、合わせ鏡を使ったやり方は初めて知りました。多分、この作者(浅暮三文)の創作でしょう。
 ひょっとしたら、本当にそんな方法があるのかもしれませんが、だとしても試してみる気にはなれませんな。生き人形遊びやこっくりさんと同じく、呪術は軽々しくやるもんじゃない。
 良い子のみんなはやっちゃダメだよ!

※本書の記述によると、「まず鏡を二つ用意」(P222)し、それを「向かい合わせに置く」(P222)。午前零時に「悪魔が片方の鏡からやってきて反対の鏡へと通り抜ける」(P223)ので、「その瞬間を見計らって鏡をずらす」(P223)。そこで悪魔はこの世に留まり、魂の契約を…というわけです。簡単すぎて信憑性が低い。

【参考文献】
『午前零時 P.S.昨日の君へ』新潮社

午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫) Book 午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫)

著者:鈴木 光司,朱川 湊人,恩田 陸,貫井 徳郎,坂東 眞砂子
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

岩井志麻子「死神に名を贈られる午前零時」

あらすじ…通販番組の雛壇に座る程度の仕事しかないタレントの山本直子(芸名:やまもと菜穂子)は、午前零時を過ぎると、「もう一人の自分」がふうっと虚空に浮かび上がる。

 岩井志麻子といえば明治時代の岡山を舞台にしたホラーが有名ですが(例:「ぼっけえ、きょうてえ」)こちらは現代の関東が舞台となっています。そのため、山本直子の周辺には田舎の民俗や極限状態の貧困といったものがなく、その方面での怖さがない分、他の要素で怖さを紡ぎ出さないといけません。では、他のホラー要素となると…。
 それはさておき、私は今、ローカルテレビ局の通販番組を観ながらこのレビューを書いています。ローカル局は予算が少ないから、このような通販番組をしょっちゅうやっているのです。
 で、私が観ている番組には雛壇に座ったタレントたちこそいないものの、画面に映らない観客たちの「ああ~」とか「おお~」とかのわざとらしい声が耳につきます。ちなみに扱っている商品はスチームで清掃をする道具ですが…。
 と、ふと気付いて読み直してみたら、この作品は通販番組が舞台なのにも関わらず、肝心の商品が一つも登場しないことに気付きました。おそらく、作者(岩井志麻子)にとっても、主人公(直子)にとっても、商品なんてどうでもいいのでしょう。

【参考文献】
『午前零時 P.S.昨日の君へ』新潮社

午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫) Book 午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫)

著者:鈴木 光司,朱川 湊人,恩田 陸,貫井 徳郎,坂東 眞砂子
販売元:新潮社
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恩田陸「卒業」

あらすじ…夜、5人の少女が狭い部屋に立てこもるが、一人また一人と殺されてゆく。

 物語の背景についての説明がないのでよくわかりませんが、少女たちの会話から推測すると、彼女たちはどこかの閉鎖的な施設にいたが脱走して残虐な殺人ゲームに参加したらしい。そのゲームとは、午前零時まで生き残っていれば解放されるというもので、少女たちがこの部屋にたどり着くまでに既に惨死した者もいる。
 う~ん、よくわからん。よくわからんが、カオリが死んだらしいのはわかるような気がします。

【参考文献】
『午前零時 P.S.昨日の君へ』新潮社

午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫) Book 午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫)

著者:鈴木 光司,朱川 湊人,恩田 陸,貫井 徳郎,坂東 眞砂子
販売元:新潮社
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朱川湊人「夜、飛ぶもの」

あらすじ…小3の女の子が午前零時にプテラノドンらしきものを目撃する。

 プテラノドンかあ…。それよりアダムスキー型UFOだとでも言った方が、まだしも信じる人がいるんじゃないでしょうか。
 ちなみに本文をよく読んでみると、「プテラノドンっていうやつじゃないかしら」(P59)と述べており、断定を避けています。つまり、小学三年生の少女がそれをプテラノドンのようだと認識したことは事実だとしても、実際に飛んでいたのがプテラノドンだとは限らないというわけです。

【参考文献】
『午前零時 P.S.昨日の君へ』新潮社

午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫) Book 午前零時―P.S.昨日の私へ (新潮文庫)

著者:鈴木 光司,朱川 湊人,恩田 陸,貫井 徳郎,坂東 眞砂子
販売元:新潮社
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岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」

あらすじ…明治時代、岡山の遊郭。醜い女郎が客の男に自らの生い立ちを語る。

 夏風邪で頭がボーッとなる中、このレビューを執筆しています。ところで、この寒気は夏風邪によるものか、あるいは本作の怖さが為せるものか、はたまた両者の相乗効果によるものか、ちょっとわかりません。

 堕胎、近親相姦、父殺し、人面瘡…。夜語りの中によくもまあこれだけ色々と盛り込んだものだと、読み直してみて気付きました。本当は怖いので読み直す気はあまりなかったのですが、夏風邪で頭が充分に働かないせいか、細かいプロットを思い出せず、仕方なく(と同時に半ば怖いもの見たさで)読み直してみた次第です。

 妾の友達いうたら、沢で腐っとる水子の死骸だけじゃ。それで妾はおままごとをしとった。(P20)

 水子が人間扱いされていない価値観の社会だったとはいえ、死体と遊ぶのは異常であり、やはりこれも怖い。
 そしてやはり怖いのは、これらのことを時には「ほほほ」と笑いながら話すところでしょうな。まともな神経の持ち主なら、凄惨な話を笑顔で語れません。

【参考文献】
岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』角川書店

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Book ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

著者:岩井 志麻子
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』早川書房

あらすじ…国際列車オリエント急行で、金持ちの老人が殺される。その列車に乗り合わせていた名探偵ポアロが捜査に乗り出す。

 ネタバレを回避するため犯人についてはあまり詳しくは語れないのですが、各人に堅牢なアリバイがあるのならば単独犯ではなく複数犯(犯人は二人以上)を疑ってみた方がいいでしょう。例えば赤の他人と目されるAとBが犯行時刻に別の場所で同室していて、互いのアリバイを証言していたとしても、実はAとBがグルだったら証言の信憑性は崩れます。
 しかしそれにしても複数犯と見当をつけていましたが、まさか○○○○○だったとは…。

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
Book
オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
著者 アガサ クリスティー
販売元 早川書房
定価(税込) ¥ 861

ブライアン・フリーマントル『シャーロック・ホームズの息子(下)』新潮社

あらすじ…ドイツ大使館でのレセプションの後、セバスチャンは、アメリカの武器弾薬を密かにドイツに運ぶ船があることを知る。

 上巻では腹の探り合いが多かったのですが、下巻になると刺客に襲われたり(P51)、船が爆発したり(P211)、銃撃戦になったり(P317)と、アクション要素がグッと増えます。
 上巻が静なら、下巻は動、といったところです。

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ブライアン・フリーマントル『シャーロック・ホームズの息子(上)』新潮社

あらすじ…第一次世界大戦直前。シャーロック・ホームズの息子セバスチャン・ホームズは、ドイツと接触して莫大な利益を得ようと目論むアメリカ実業家の秘密結社を突き止めるべく、単身渡米する。

 一応、ホームズ・パスティーシュ(シャーロック・ホームズの二次創作)ですが、推理小説というよりもスパイ小説です。それから、シャーロック・ホームズ(とワトスン)も登場しますが、主役は寧ろセバスチャンの方であり、セバスチャンの活躍を中心に描かれます。
 尚、スパイ小説といっても、ジェームズ・ボンドのようにド派手なアクションがあるわけではなく(少なくとも上巻では)、腹の底が知れない連中を相手にしての腹の探り合いが続きます。こういうやり取りは緊迫感がありますが、これが続くとなると胃もたれがしてきますな。

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宮地佐一郎『長宗我部元親』学陽書房

 KOEIのゲームソフト「信長の野望」のプレイ動画をニコニコ動画で観るのですが、長宗我部元親は四国では必ずと言ってよいほど大きな存在感を放ちます。ただし全国レベルのチート武将を前にすると少々霞んでしまいますが…。ええと、たしか織田信長は彼を「鳥無き島の蝙蝠」と評していたんでしたっけ。
 そんな長宗我部元親とは何者だったのかをざっと知っておこうと思い、本書を手に取ってみた次第です。

 さて、長宗我部元親といえば「一領具足」という制度が有名です。

 日常は土佐七郡の田園山野に棲んで、鋤、鍬をとって働く百姓土豪であった。元親は体力のある耕地を持つ、富農を武士に組み入れ、軍団を倍加して、戦闘能力に生かした。(P65)

 これは織田信長・豊臣秀吉・徳川家康が推し進めた「兵農分離」とは全く逆です。この後の時代で兵農分離が定着したことを考えると、一領具足は時代に逆行する制度だと見ることもできます。
 一領具足のメリット・デメリットについて論じていたら長文を覚悟しなければならないので、欠点を一つだけ挙げておきます。それは、農繁期には兵を動かせないということです。農閑期に出兵して、農繁期になる前に兵を農村に帰さないといけない。さもなくば、農業生産が大打撃を受ける。一領具足は普通に徴兵するよりも徹底して多くの人手を集めるから、戦死や戦闘の長期化などで農村に人が戻らなかった時のダメージはそれだけ大きいわけですな。

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著者:宮地 佐一郎
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ズールー大戦争(2001年、アメリカ)

監督:ジョシュア・シンクレア
出演:デヴィッド・ハッセルホフ、カレン・アレン、ヘンリー・セレ、ジェームズ・フォックス、オマー・シャリフ
原題:SHAKA ZULU: THE CITADEL
備考:戦争アクション

あらすじ…19世紀南アフリカ。ズールー族の王シャカは、イギリスの大砲の力を借りてマサニ族の砦を落とす。その夜、シャカはアラブ人に拉致されて奴隷として売り飛ばされるが何とか脱出し帰還。ズールー族の大軍を率いてイギリス人植民の集落へと迫る。

 まず最初に断わっておきますが、これは1879年のズールー戦争とは別物です。時代的にはズールー戦争よりも一世代前です。
 ちなみに、少々調べてみたところ、シャカは実在の人物ですが、彼が奴隷にされた事実はないなど、実際の歴史とは異なる点が多いようです。私は南アフリカ史には詳しくないので、史実との相違を指摘する作業は他者に譲りますが、さすがにシャカが拉致されて奴隷にされることは考えにくい。
 シャカはズールー族の王であり、この時点で既に大勢力を築いていました。それを拉致したことがバレたら、ズールー族の大軍が怒って攻めてくるかもしれない。又、王には護衛が近侍しており、彼らの抵抗に遭って仲間が死ねば収支が釣り合わなくなる。これらの政治的・経済的リスクを考慮すれば、ストーリー展開に無理があると言わざるを得ないでしょう。
 まあ、おそらくはこの当時の奴隷貿易の実態も描き出したかったからこのようになったのではないかと推察いたします。

 最後に、ネタバレ覚悟で一つ言わせていただきます。タイトルに「大戦争」とありますが、大戦争ではありません。冒頭でマサニ族の砦を落とすシーンが出てきますが、本格的な戦争はこれだけ(これだって大戦争と言えるような規模ではない)。イギリス人植民者の集落への進軍だって結局は…と、さすがにこれだけは伏せておきましょうか。
 ともかく、大規模な戦闘を期待して観るとガッカリするかもしれません。

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加藤隆『一神教の誕生――ユダヤ教からキリスト教へ』講談社

 本書の内容を以下に簡潔に紹介しようかと思っていたら、本書あとがきに丁度いい説明がありましたので引用します。

 本書は、ごく普通のタイプの民族宗教だったユダヤ教がどのようにして本格的な一神教的宗教となったのか、その問題との関連でキリスト教の成立はどのような意味をもっているのかについて、できるだけ簡潔に示そうとしたものである。(P290)

 イスラム教はガン無視ですか。まあいいや、イスラム教についてはイスラム学の専門家に譲るということなのでしょう。
 ちなみに、ユダヤ教が「ごく普通のタイプの民族宗教だった」と述べていることについて違和感を持つ方もいるかもしれませんが、本書によると「ヤーヴェ崇拝の成立とそれに続く時期におけるユダヤ教は、御利益宗教的なものである」(P56)とのこと。どうして御利益宗教的と言えるのか、そしてなぜ今はそうでなくなったのかについては、説明すると長くなるので知りたい方は本書をお読みくださいとしか言いようがない。しかしいずれにせよ、時代によって変容していることがわかります。

一神教の誕生−ユダヤ教からキリスト教へ (講談社現代新書) Book 一神教の誕生−ユダヤ教からキリスト教へ (講談社現代新書)

著者:加藤 隆
販売元:講談社
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柴田錬三郎「吸血鬼」

あらすじ…精神病理学者の加田三郎は、ある女性から手紙を受け取る。そこには、加田の親友・野呂俊作が愛妻を失って異常になっている様が綴られていた。加田は直ちに野呂邸へ赴く。

 ネタバレしてもうしわけないのですが、今作では吸血鬼のせいにされています。もちろんこれは正常な判断力を失った野呂俊作だから通用したことです。例えば、

 「ぼ、ぼくの、心臓を、……何か、鋭い、メスで、なんども、なんどもつき刺したんだ」(P265)

 と俊作は言っていますが、それなら胸に傷痕が付いているはずで、ちょっと冷静に考えればそれが無いことなどすぐに看破できます。というより、心臓を刺されたら死んでしまいます。

【参考文献】
東雅夫=編『血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選』角川書店

血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
Book
血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
販売元 角川書店
定価(税込) ¥ 660

リタ・タルマン『ヴァイマル共和国』白水社

 ドイツ第二帝国と第三帝国の間に位置する民主政体、ヴァイマル共和国(ワイマール共和国)とは何だったのか? ヒトラーの『わが闘争』を読み進めて行く中で、それが書かれた時代について知っておく必要があると思い、本書を手にとってみました。
 ただし、あまり初心者向けではないようです。当時の人名がバンバン出てくるのはともかくとして、彼らについての説明が全く不足しているので、予備知識がないと誰が誰やらわからなくなるのです。
 さて、ヴァイマル体制はたったの14年しかもちませんでしたが、本書では以下のように分析しています。

 当時のドイツの民主主義が脆弱だったのは、帝政時代から引き継いだ遺産があまりにも大きかったことと、共和制支持勢力が多くの派に分裂していて、そうした分裂状態をどうしても解消できなかったことによるものであった。(P140-141)

 そして「第六章 共和制の危機と終焉」では、失業者が増大する中で政局が昏迷を続けている様が描かれ、暗澹たる気持ちになります。政局の昏迷具合について言えば、ついつい今日の日本と重ね合わせて見てしまうからです。
 私は別に当時のドイツ人のようにヒトラーを待望するわけではありませんが、警告は発しておきます。議会がまともに機能しないならば、ヒトラーのように議会を無視する人が出てきますよ。国会議員の皆さんは、それでいいんですか?

【参考文献】
リタ・タルマン著、長谷川公昭訳『ヴァイマル共和国』白水社

ヴァイマル共和国 (文庫クセジュ) Book ヴァイマル共和国 (文庫クセジュ)

著者:リタ タルマン
販売元:白水社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

江戸川乱歩「猟奇の果」

あらすじ…猟奇者で退屈を持て余していた青木愛之助は、靖国神社の招魂祭で、友人の品川四郎と瓜二つの男を目撃する。

 前半と後半とで作風が大きく異なる作品。なぜそうなってしまったかについては本書P598-602の「自作解説」に書いてあるのでそちらへ譲るとして、ともかくも「困った時には明智小五郎」というスタンスが感じられます。
 明智小五郎とは便利な存在ですな。作品が途中でグダグダになって、物語が続かなくなってしまいそうになったら、彼を投入して解決させればとりあえずは収まりがつくのですから。
 私はRPGツクール2000で作品を制作しているから少しはわかるのですが、こういうキャラクターを保持しているのは実にありがたいことです。作家にとっては財産ですぜ。嗚呼、私もこんなキャラが欲しいものだ。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼』光文社

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫) Book 江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫)

著者:江戸川 乱歩
販売元:光文社
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百目鬼恭三郎「日本にも吸血鬼はいた」

 『今昔物語』『伽婢子』『耳袋』など各種の資料を持ち出して、日本の吸血鬼っぽいものを列挙しています。
 でも、P325-327で取り上げられている、「芸州藩に出入りする祈祷の僧」(P325)は吸血鬼とは関係ないでしょう。彼がやったのは瀉血もしくは催眠術に過ぎないのですから。

【参考文献】
東雅夫=編『血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選』角川書店

血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
Book
血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
販売元 角川書店
定価(税込) ¥ 660

江戸川乱歩「吸血鬼」

 特にこれといったストーリーはなく、吸血鬼伝説、そして「早すぎた埋葬」の恐怖を語っています。
 それにしても作品の冒頭で、「出題者の心持は、風変りな死に方の見聞録でも書かせようというわけなのであろうが」(P239)云々と、いきなりのメタ発言には恐れ入りました。

※尚、江戸川乱歩には同名のタイトルで明智小五郎が登場する長編小説「吸血鬼」があります。そちらのレビューも近いうちに発表いたします。

【参考文献】
東雅夫=編『血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選』角川書店

血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
Book
血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
販売元 角川書店
定価(税込) ¥ 660

中井英夫「影の狩人」

あらすじ…青年は近所のスナックで、不思議な男と出会う。

 ホモ・セクシャルの香りがしますな。

 青年は自分が燔祭の羔に選ばれたことを知ったが、それは明らかに恍惚感を伴ったものだった。あるいは『青頭巾』の僧と美童のように、貪り食われることの快美感を期待しながら、青年は眠りに落ちた。(P32)

 私は腐女子ではないので、このシチュエーションはどうということはない。しかしよくよく考えてみると、吸血鬼の中にホモがいてもおかしくないし、吸血鬼のターゲットにホモが選ばれることがあってもおかしくない。別に吸血鬼がノンケである必要性はないのですから。

【参考文献】
東雅夫=編『血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選』角川書店

血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
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血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
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定価(税込) ¥ 660

三島由紀夫「仲間」

あらすじ…ロンドンを徘徊する父子がいた。ある晩、一人の男と出会い、その男の家に招待される。

 本作品収録の文庫本が副題に「吸血鬼ホラー傑作選」とあることから、この謎の父子が吸血鬼らしいということは言えます。しかし、彼らが吸血鬼だとしても、子供が煙草を吸ったり、外套を脱ごうとしないなどの理由を説明しきれるものではありません。
 又、本作は子供の視点で描写されているため、大人たちの込み入った会話は省かれており、それがさらに謎を増進する効果を持っています。
 …え? 謎の解明? それならロンドンにはシャーロック・ホームズがいるから彼に頼むといいでしょう。あるいは吸血鬼退治なら、ヴァン・ヘルシング教授がいい。

【参考文献】
東雅夫=編『血と薔薇の誘う夜に 吸血鬼ホラー傑作選』角川書店

血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
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血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選 (角川ホラー文庫)
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定価(税込) ¥ 660

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