北杜夫「銭形平次ロンドン捕物帖」
あらすじ…シャーロック・ホームズの理解の範疇を超えた「隠れマント怪人事件」が発生した。そこでホームズは日本から銭形平次を呼び寄せた。
ホームズ・パロディ。銭形平次とホームズとでは時代が違うだろ、と誰もがツッコミを入れるだろうと作者は思ったのか、
こんなふうに昔の日英人二人のあいだで会話がスムーズに行われるはずもないのだが、そこが三文小説の便利なところである。むろんのこと、時代考証なども気にする必要もない。(P77)
などと開き直っている始末。もちろん、銭形平次が英語ペラペラなのも気にしてはいけません。
さて、今作では名推理を展開するのは専ら銭形平次の方で、シャーロック・ホームズは聞き役に回っています。というより、ホームズは全然冴えません。
ではなぜホームズがここまで劣化しているのかというと、コカインをやりすぎたから。
おいおい、そこはドクター・ワトスンが止めろよ…と思いましたが、今作ではワトスンは一切登場せず、ワトスンの役割をホームズが担っています。まあ、ワトスンにはこんなみっともない姿を見せられませんけどね。
【参考文献】
北原尚彦・編『日本版シャーロック・ホームズの災難』論創社
日本版 シャーロック・ホームズの災難 著者:柴田 錬三郎 |
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