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松原聰監修『鉱物の不思議がわかる本』成美堂出版

 不思議な形状・色彩を持った鉱物の数々を眺めているだけでも楽しい。立方体の結晶になっている黄鉄鉱(P118)とか、よく自然が作り出したもんだなと感心してしまいます。

 ところで、本書には錬金術に関する記述があり、水銀を金に変える方法が書かれています。

 原子番号80の水銀と原子番号79の金は、陽子の数が1つ異なるだけである。北海道大学の松本高明助教授の研究では、水銀に電子ビームを打ち込んでガンマ線を発生させ陽子をはじき出すと、金に変えることができるという。(P49)

 ただし、時間とコストがかかりすぎるため、この方法でお金儲けはできないようです。
 どこかのバカ成金が採算度外視でやってくんないかなー。成功したら、「世界で初めて本物の錬金術に成功した本物の錬金術師」という名誉が歴史に刻まれるかも…。

図解サイエンス 鉱物の不思議がわかる本―色・形・性質はどうして違うのか?150種以上の鉱物・宝石をビジュアル解説 Book 図解サイエンス 鉱物の不思議がわかる本―色・形・性質はどうして違うのか?150種以上の鉱物・宝石をビジュアル解説

販売元:成美堂出版
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『インフォレストMOOK オールザッツバカ画像』インフォレスト

 バカ画像を集めたもの。ここに掲載されているバカ画像の何割かはネット上で見たことがありますが(例えばP36の実写版バッファローマンなんて何度見たことか…)、未見のやつもあったのでそれなりに収穫でした。まあ、収穫といっても、別に役に立つ知識が得られるわけではないんですけどね。
 ともあれ、疲れて難しいことを考えたくない時にでもどうぞ。

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販売元:ブックセンターいとう
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ニール・ドグラース・タイソン『かくして冥王星は降格された 太陽系第9番惑星をめぐる論争のすべて』早川書房

 冥王星が発見され、その冥王星がアメリカ人の心にいかに根付き、そして冥王星が惑星か否かという論争の末、ついに準惑星(矮惑星)に「降格」された経緯を綴ったもの。
 論争について言えば、8歳や9歳の子供の手紙などが引用されており、学者のみならず子供たちをも巻き込んだ形になっていることがわかります。まあ、子供たちの言葉は稚拙で学問的とは呼べないものですので、こちらは目の保養程度に捉えておいたほうがいいでしょう。
 それにしても、だ。日本にいる私なんぞは、冥王星降格の報に接した時、「ああそうか」と思っただけでさしたる深い印象は残っていません。一方、アメリカではこんなに喧々囂々とやりあっていたわけですが、ここまで論争をしていたとは知りませんでした。
 ぶっちゃけて言うと、私はこの論争にさして興味があるわけではないし、もしも興味を持つとしたらそれは宇宙のロマン的な何かでしょう。たとえ分類が変わろうとも、冥王星は冥王星であり、依然として神秘的な存在なのですから。

かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて Book かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて

著者:ニール・ドグラース タイソン
販売元:早川書房
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H.G.ウェルズ「新加速剤」

あらすじ…ジバーン教授は他人の数百倍もの速さで動けるようになる薬を発明し、「ぼく」と一緒にそれを飲んで町へ出る。

 実はこの記録は薬を飲んで、一気呵成に書き上げたのだ。と言っても途中でチョコレートを少し齧ったが。六時二十五分に書き出し、今は三十一分になろうとしている。この薬のおかげで、多忙な日でも仕事にうちこめる相当な時間を得られるというのは実に便利なことである。(P175)

 だがちょっと待って欲しい。それだけ短時間に活動していれば、肉体に疲労が蓄積しないわけがない。というより、体が壊れてしまうんじゃないでしょうか。
 ひょっとしたら、薬の副作用で神経が昂ぶってしまって疲労を感じていないのかもしれません。

【参考文献】
H.G.ウェルズ『タイム・マシン 他九篇』岩波書店

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) Book タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

著者:H.G. ウエルズ
販売元:岩波書店
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アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』早川書房

あらすじ…名探偵エルキュール・ポワロのもとに、殺人を予告する挑戦状が届く。そして予告通り、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺害される。そして第二第三の挑戦状が届き…。

 今回は犯人を当てることができませんでした。う~ん、残念。
 詳細はネタバレになるのであまりハッキリしたことは言えませんが、犯行の動機が快楽殺人ではなく別のところにあったのを見抜けなかったのは痛恨のミスでした。

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) Book ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

著者:アガサ・クリスティー
販売元:早川書房
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H.G.ウェルズ「奇妙な蘭」

あらすじ…ウインター・ウェダーバーンは即売会で奇妙な蘭を買ってきて温室で育て始める。

 ネタバレ注意。
 この後、その蘭は順調に育って、ついにはウェダーバーンを食おうとするのですが、駆けつけた家政婦に退治されています。家政婦強いなあ…。

【参考文献】
H.G.ウェルズ『タイム・マシン 他九篇』岩波書店

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) Book タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

著者:H.G. ウエルズ
販売元:岩波書店
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H.G.ウェルズ「ザ・スター」

あらすじ…太陽系の外から未知の惑星がやってきて海王星と衝突、両者は一つの巨大な白い星となって地球に接近してくる。

 こんな記述がありました。

 書斎に座っている大数学者が用紙を前へつき出した。やっと計算が終わったのだ。小さな白い薬瓶にはまだ薬が少し残っていた。覚醒剤を飲んで四日も徹夜したのだ。(P238)

 惑星の軌道の計算を紙に書く(筆算!)というのも時代を感じさせますが、覚醒剤を飲んで徹夜するというのも同じく時代を感じさせます。本作は1899年発表だそうですが、その頃はまだシャブが合法だったということですな。

【参考文献】
H.G.ウェルズ『タイム・マシン 他九篇』岩波書店

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) Book タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

著者:H.G. ウエルズ
販売元:岩波書店
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H.G.ウェルズ「マジック・ショップ」

あらすじ…男が、息子と共にとあるマジック・ショップ(手品のアイテムを売る店)に入り、そこで不思議体験をする。

 本作は推理小説ではなく、現代的なファンタジーに近い短篇です。従って、この店の中で展開されるマジックの一つ一つにどんなタネがあるのか、それらを全て解明できなくたって構わないでしょう。
 それにしても、店が請求書を送ってこないとは妙ですな。商品の仕入れをクリアーしたとしても、店の家賃や光熱費など諸々の出費はあるはず。だとすると、この店は営利目的よりも寧ろ店主の道楽なのかもしれませんな。

【参考文献】
H.G.ウェルズ『タイム・マシン 他九篇』岩波書店

タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) Book タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

著者:H.G. ウエルズ
販売元:岩波書店
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コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの思い出』新潮社

 ホームズの第二短編集。
 ウィキペディアの「シャーロック・ホームズ」の項に、「黄色い顔」でホームズがコカインをやるという記述があったのが記憶に引っかかっていたので、本書収録の「黄いろい顔」(P51-82,原題:The Yellow Face)の該当箇所を探してみたら、ありました。

 ときどきコカインこそやるが、ほかにこれぞという悪習もない。そのコカインとても、手ごたえのある事件が少しもなく、新聞にも面白いことの出ていないとき、生きていることの単調さをまぎらすため、手をだすにすぎないのだ。(P52)

 しかし幸いなことに世間がこの名探偵を放っておかず、本書収録の「最後の事件」(P316-342,原題:The Final Problem)においてライヘンバッハの滝に落ちた後も、「実は生きていた」ということで復活させられているし、更には作者(ドイル)の死後も二次創作(ホームズ・パスティーシュ)で各方面に引っ張り出される始末です。私は未読ですが、ホームズが日本に来たという話もあるとか。
 とてもコカインなんてやっている暇は(21世紀に入った今でも)ないんじゃないかと思えてきます。

シャーロック・ホームズの思い出 (新潮文庫) Book シャーロック・ホームズの思い出 (新潮文庫)

著者:コナン・ドイル
販売元:新潮社
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加藤廣『安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録』文藝春秋

 「藤吉郎放浪記」「安土城の幽霊」「つくもなす物語」の中篇3つを収録したもの。
 「藤吉郎放浪記」は若き日の秀吉(松下家出奔から薪炭奉行まで)を、「安土城の幽霊」は服部半蔵が安土城に潜入して織田信長に嫌がらせをしようとするさまを、そして「つくもなす物語」では茶器「つくも茄子」の変遷を描いています。

 ちなみに「安土城の幽霊」では服部半蔵が何度も何度も安土城の奥深くに潜入していますが、ここまで来るとザル警備にもほどがあるだろ…。半蔵と彼の主君・徳川家康には信長を殺す気はなかったようですが、敵の多い信長のことだから、彼を亡き者にしようとする輩は多いはず。それなのにこのザル警備とは意外ですな。

 尚、『信長の棺』や『秀吉の枷』では徳川家康が本能寺の変に何らかの関与をしていたことが示唆されていますが、本書収録の三作品ではその辺については明らかにされておりません。
 ということは、著者はまだまだ「本能寺三部作」の番外編を書くつもりなのでしょう。

安土城の幽霊―「信長の棺」異聞録 Book 安土城の幽霊―「信長の棺」異聞録

著者:加藤 廣
販売元:文藝春秋
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【関連記事】
信長の棺
秀吉の枷(上)
秀吉の枷(下)
明智左馬助の恋
空白の桶狭間

ALCOTT TIMES 5 May 2011

 三越新宿アルコット(新宿区新宿3-29-1)のカタログ。
 P01-04が婦人用シューズ、P05-06が婦人用Tシャツの紹介となっていることから、これが女性向けであることがわかります。そういえば私がこれを入手した時、地下道から地上へ出るために新宿アルコットの店内を通過したのですが、目に付いたのは婦人物ばかりだったような印象がありますな。
 それはさておき、HAWAII T-SHIRTが8925円(P05下段右端)とかって、結構高いんですねえ。新宿の三越という「ショバ代」も含まれてるんですかね?

ALCOTT TIMES 5 May 2011

エドガー・アラン・ポー「盗まれた手紙」

あらすじ…宮中の某貴婦人のもとから手紙が盗まれた。盗み出したのはD大臣で、警視総監Gが密かに手紙を探すものの、隠し場所が巧妙らしく見つからない。困り果てた警視総監はデュパンのところへ相談に訪れる。

 デュパンが問題の手紙を「書物机の抽斗」(P234)から取り出して渡すという展開は劇的で結構なのですが(それでも、警視総監がこの事件をデュパンのもとに持ち込んでから「一月ほど」(P231)も経過しているのですが…)、そこから実際に手紙がどこに隠してあったのかを明かすのはずっと先になります。丁半ゲームだとかラテン語だとか色々な能書きを持ち出してきて、なかなか核心部分に辿り着けません。
 もっと簡潔に伝えられるはずで、冗長と言えば冗長ですな。

【参考文献】
ポオ作『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』岩波書店

黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1) Book 黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1)

著者:ポオ
販売元:岩波書店
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エドガー・アラン・ポー「マリ・ロジェエの迷宮事件」

あらすじ…香水屋の売子マリ・ロジェエが突如として失踪し、数日後、セーヌ川で死体になって浮かんでいるのが発見された。当初はすぐに犯人が見つかるだろうと思われたが、事件は迷宮入り。そこで警視総監Gがデュパンに捜査を依頼する。

 副題に「『モルグ街の殺人事件』続篇」とあり、「この事件は、モルグ街の惨劇から、二年ほど後のことだった」(P140)とあるので、「モルグ街の殺人事件」の2年後という設定です。
 で、この時デュパンは何をしていたかというと、「僕」との共同生活を続けています。そして、

 僕らは、ある研究に、全心を傾けて没頭していたので、二人とも、ほとんど一月間というものは、外出一つしなければ、来客一人迎えたこともない。(P143)

 どう見てもヒキコモリです。本当にありがとうございました。

 さて、今回の推理でもデュパンの独り語りが延々と続くのですが、捜査手法がちょっと変わっています。新聞各紙の記事を検証し、そこに潜む推測や誤った思い込みなどを入念に排除しながら推理を展開しています。
 新聞記事からそこまで読み取ってくれるのはいいとして、同時に誤りも遠慮なく指摘してくれるから、記者としてはありがた迷惑かもしれませんな。

【参考文献】
ポオ作『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』岩波書店

黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1) Book 黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1)

著者:ポオ
販売元:岩波書店
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エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人事件」

あらすじ…「僕」はパリ滞在中、ふとしたことでC・オーギュスト・デュパンと出会い、意気投合。共同生活を送るようになる。そんなある日、モルグ街でレスパネェ夫人母娘が惨殺される事件が起こる。デュパンが捜査に乗り出す。

 エドガー・アラン・ポーが作り出した名探偵デュパンとは何者か? 少々長くなりますが、本文から彼について述べた部分を引用します。

 この青年紳士は、立派な家柄――むしろ名家といってもよい家柄の出だったが、いろいろ不運な出来事が重なって、ひどい貧乏になり、ために生来の気力も挫けて、今ではもう、世の中へ出て活動する気も、家運挽回の念も、全くなくなってしまっていたのだった。幸い、債権者たちの好意で、親の財産が、まだ少しばかり残っていたもので、それから上る収入を頼りに、ひどくつつましい節倹をして、余計な贅沢さえ考えなければ、どうやらその日の糧に事欠くようなことは、まずなかった。事実、書物だけが、唯一の贅沢だったが、それくらいならば、パリでも、容易に手に入った。(P82)

 今の言葉で言うならば、デュパンはニートですな。ホームズやポワロなどは依頼人から報酬を得て生活していたプロの探偵ですし、ブラウン神父は探偵は副業で、本業は司祭でした。一方のデュパンは、これといった仕事に就いているわけではないし、今回の「モルグ街の殺人事件」では自ら首を突っ込んでいるので依頼人は存在せず(この時点でデュパンは無名の存在であるし、私立探偵の看板を掲げているわけでもない)、報酬を手に入れた形跡もありません。
 ここで思い出したのが、江戸川乱歩「D坂の殺人事件」で初登場する明智小五郎です。この時の明智は書生という設定になっていますが、実態はニートです。デュパンと明智小五郎にこんな共通点(?)を見出せるとは思いませんでした。乱歩が「モルグ街の殺人事件」をどれだけ意識して「D坂の殺人事件」を書いたか調べてみるのも一興ですが、その栄光ある作業は他者に譲ることにします(両作品ともその方面では有名ですので、既に比較論考している方も多いでしょう)。

 さて、デュパンの「名推理」について特徴があるので一つ指摘しておきます。それは、彼が自分の推理を展開する時、「一種の忘我状態に入」(P106)って、「独語のように、ひとり喋りつづけ」(P106)ることです。例えば104ページ6行目から126ページ15行目まで、間に「僕」の言葉が少々挟まっているものの、殆どはデュパンの長い長いセリフが延々と続きます。正直言って、これは読んでいて辛い。
 シャーロック・ホームズにはドクター・ワトスンという聞き手がいて、ホームズの話をいかにうまく引き出しているか、そしてホームズもいかに簡潔に伝えているかが、この「他山の石」でわかったような気がします。

【参考文献】
ポオ作『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』岩波書店

Clip 05 2011.May No.042

 下北沢の某所で入手しました。
 いわゆるアダルトビデオのカタログです。表紙を飾るのはAV女優の秋吉ひな。もちろん彼女の出演作品(P03「ドリシャッ!!」)も紹介されています。
 さて、今回私が注目したのは、「世界一と世界二のチ●ポに薬漬けされて白目むくまでガン突きFUCK!!!」(P10, 出演:あずみ恋、ウェル・スミス、ヘンゼル・ワシントン)です。どうでもいいけど長いタイトルですな。
 ええと、アレの長さが40cmと39.7cmですか。さすがにここまでのサイズとなると、正直言って引かざるを得ない。寧ろグロテスクですらあります。

Clip 05 2011.May No.042

エドガー・アラン・ポー「天邪鬼」

あらすじ…ある男が、ロウソクに毒を仕込むという方法によって人を殺し、その男の財産を相続する。完全犯罪成功と思われたが、ある時、彼は「天邪鬼」の発作に襲われ、犯行を自白してしまう。

 わずか11ページほどの短篇なのですが、そのうちの7ページ半ほども使って長々と能書きをたれています。「ひどく冗長だったかもしれない」(P71)と述べていますが、たしかにその通り。
 冗長な部分を削るか、あるいは後半の(割を食って薄くなってしまった)物語描写をもう少し肉厚にしてもよかったかもしれませんな。例えば殺された被害者は、「彼」という語を用いていることから男性であり、加害者が遺産を相続したことから彼の親族である可能性が高いものの、それ以上の詳しいことはわからないといった有様です。

【参考文献】
ポオ作『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』岩波書店

黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1) Book 黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1)

著者:ポオ
販売元:岩波書店
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エドガー・アラン・ポー「ウィリアム・ウィルソン」

あらすじ…ウィリアム・ウィルソン(仮名)は、寄宿学校で自分と同姓同名の人物に出会い、嫌悪感を抱く。寄宿学校を脱け出した後、ウィリアムが何か決定的な悪事を働こうとするたびに彼が出現して邪魔するようになる。そんなある時、ナポリの仮装舞踏会で彼を捕まえ、決闘の末に剣で刺すが、そこにいたのは鏡に映った血まみれの自分の姿だった。

 冒頭の引用文を孫引きになりますが引用します。「そも良心とは? わが行手に立ち阻む、恐ろしの影、良心とは? チェンバレン『ファロニーダ』」(P21)
 つまり、もう一人のウィリアム・ウィルソンとは、オリジナルのウィリアム・ウィルソンの良心を具現化したものだったというわけですか。
 また、「恐ろしの影」とあることから、ユング心理学のシャドウの概念からこれを考察してみるのも面白いかもしれません(私は心理学から離れているのでやりませんが)。

 最後に蛇足を一つ。寄宿学校の描写が少々冗長であったように感じました。

【参考文献】
ポオ作『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』岩波書店

黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1) Book 黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1)

著者:ポオ
販売元:岩波書店
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エドガー・アラン・ポー「黒猫」

あらすじ…動物好きの男が、酒に溺れるようになって動物を虐待するようになる。そんなある日、彼は飼っていた黒猫を殺して木に吊るす。

 ネタバレ注意。
 男は妻を殺した後、死体を地下室の壁に塗り込めるのですが、その時なぜか黒猫(最初に殺した黒猫とは別の猫)を生きたまま一緒に塗り込めてしまっています(しかもそれとは気付かずに!)。
 いくらなんでも気付くだろうに…。いや、ひょっとしたらその程度のことにも気付かないくらい錯乱していたのでしょうか。黒猫を見たくないという心理が作用して無意識的にこのような行動に取ったのだ、と見ることもできます。

【参考文献】
ポオ作『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』岩波書店

黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1) Book 黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編 (岩波文庫 赤 306-1)

著者:ポオ
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一校舎社会研究会・編『昭和のニッポン』永岡書店

 60年余りに渡って続いた昭和という時代を、文庫本の容量でざっと振り返ってみる、というものです。
 政治経済、社会情勢、風俗流行、…色々詰まっていますな。とはいえ、それゆえに総花的で浅い掘り下げ具合となっています。
 さて、本書で取り上げられている大抵の事件を既に知っているものばかりでしたが、例外的に知らなかった事件を発見しました。それは「渋谷の街でライフル乱射事件」(P117)というもので、昭和40年7月当時18歳だったガンマニアの少年が、神奈川県で警官を射殺した後、東京渋谷の銃砲店に立てこもって銃を乱射したとのこと。
 渋谷に銃砲店があったのか…。

昭和のニッポン―あの日、あの時…振り返ってみたい (コスモ文庫) Book 昭和のニッポン―あの日、あの時…振り返ってみたい (コスモ文庫)

著者:一校舎社会研究会
販売元:永岡書店
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ポール・アンダースン「火星のダイヤモンド」

あらすじ…地球から火星に輸送中のダイヤモンドが突如として消えた。グレグ警部は火星人の私立探偵シァロックに調査を依頼する。

 この火星人シァロック、どう見てもモデルはシャーロック・ホームズです。例えば彼の部屋の描写の中で、「一ヵ所に、彼の愛国心をあらわして、現在の女王陛下をあらわす浮彫像が、弾痕で射ち出されてある」(P276)というのは、シャーロック・ホームズがピストルの弾痕で作ったヴィクトリア女王のイニシャル“V.R.”に対するリスペクトでしょうな。
 他にも色々とありますが、シャーロッキアンたちにそれらを探し出す楽しみを残しておきます。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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JOL 2011 spring No.06

 表紙の右上に「ティーンのためのライフデザインマガジン」とある無料情報誌。「次世代女子育成講座」(P34)や「ティーンのためのビューティー講座」(P68)など、内容からして10代女子向けです。
 ところで、今号のインタビュー記事をチェックしてみると、吉高由里子、中川翔子、桐谷美玲、栗山千明、千紗(GIRL NEXT DOOR)、SUPER★GiRLS、Happinessの合計7組。しょこたん(バラエティー番組「溜池NOW」を観ていました)と栗山千明(映画「死国」に出演)しか知らない…と、こんな状態では、私なんぞは10代の女子とは殆ど話が合わないものと思われます。

Jol

フランク・R・ストックトン「女か虎か」

あらすじ…昔々、あるところに半未開人の王様がいました。その王国の重罪人は、闘技場の二つの扉のうちの一つを選びます。一方は虎で、こちらを開けたら虎に食い殺され、もう一方は女で、こちらを開けたらその女と強制結婚。ただしどっちがどっちだか罪人にはわかりません。ある日、王様は自分の一人娘と恋仲になっている若者の存在を知り、彼をこの審判にかけることにするのですが…。

 中学生の頃、英語の授業で読んだことを思い出しました。もちろん中学生の英語力で理解できる範囲内で簡略化された文章でしたが。
 たしか、最後はどうなったかわからない終わり方をしていたはずですが、改めて本作を読んでみると、やっぱり結末は不明。「作者は、すべての解釈を読者にゆだねることにする」(P254)とのこと。王女の決断も、若者の行く末も、読み手の判断に丸投げしています。
 まあ、そういったことを推理してもいいんですが、私は面倒なので作者と同じく他の読者に丸投げします。悪しからず。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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C・B・ギルフォード「探偵作家は天国へ行ける」

あらすじ…探偵小説家のアリグザンダー・アーリントンは、死んで天国へ行くが、ミカエル天使長から自分が何者かに殺されたことを知らされる。アリグザンダーは真相を知るために、最後の日をもう一度繰り返すことにする。

 物語の最後で、天国に名探偵のグループがいることが明かされます。ミカエル天使長によれば、「エドガー、アーサー卿、G・K・Cといった顔ぶれ」(P244)だそうです。
 推理小説をある程度読んできた経験から、実在の探偵小説家を微妙に変えたものだな、とピンと来ました。エドガーはエドガー・アラン・ポー(近代推理探偵小説の祖)、アーサー卿はサー・アーサー・コナン・ドイル(シャーロック・ホームズの作者)、G・K・CはG・K・チェスタートン(ブラウン神父の作者)ですな。

 ところで、アリグザンダーが人生最後の日に戻って周囲を観察してみると、周りにいる人間のどいつもこいつも自分を殺す動機を持った人たちばかりでした。この探偵小説家、人徳がないんですかね。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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ジョン・D・マクドナルド「懐郷病のビュイック」

あらすじ…テキサスの田舎町に、銀行強盗の一団が押し入る。強盗団は金を盗んで逃走するが、その際に強盗の一人が町の住人によって射殺され、一台のビュイックが残された。警察は捜査を開始するが、足取りが杳として知れなかった。

 今作で登場する探偵役は、「ピンク・ディーという十四歳の少年」(P188)です。で、この少年探偵は何をするかというと、証拠品のビュイックのラジオをチェックして、そこから推理を展開しています。
 しかしながら、所詮は14歳だからせいぜいできることと言えば捜査官にアドバイスすることぐらい。まあ、地道な捜査や銃撃戦はディーには無理。警察に任せておいた方がいいでしょう。

 それにしても、さすがはテキサスだと思った点が一つ。強盗団が逃走した時、当然警察が追跡するのですが、「その後には、怒り狂った町の野次馬たちが、ヘンリー・ウィロウズの店から武器供与をうけて従っていた」(P181)とのこと。実に戦闘意欲旺盛な野次馬たちだ。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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アーサー・ウイリアムズ「この手で人を殺してから」

あらすじ…南アフリカ。養鶏場を営むウイリアムズのもとに、自分を捨てた元婚約者のスーズンが転がり込んでくる。自分の生活をかき乱されると危惧したウイリアムズはスーズンを殺し、死体を処理して何食わぬ生活を送る。とそこへ、警察が捜査にやって来る。

 舞台は南アフリカですが、話の内容はアメリカでもイギリスでも、田舎の養鶏場があるところならどこでも起こりうる。
 そして、本作で重要な要素となっている死体の処理についても、どこでも問題になります(ここではどうやって処理したのかはネタバレになるので伏せます)。例えばマンションの一室から異臭がするので調べてみたら腐乱死体が見つかったといったことがあるように、死体を放ったらかしにするわけにもいかない。また、運ぶにしても誰かに目撃されてはまずいし、殺害現場に痕跡を一切残してはいけない(ルミノール反応すらも!)、そして死体を誰にも発見されない工夫も凝らさないといけない。厄介なもんですなあ。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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クレイトン・ロースン「天外消失」

あらすじ…刑事たちが汚職疑惑のある判事を尾行していたが、彼は電話ボックスの中で忽然と姿を消した。マジック用品店店主のマリーニーがトリックの解明に挑む。

 今作で登場するのは「奇術師探偵マリーニー」(P126)。なるほど、手品の種を知り尽くしている人間なら、犯罪のトリックを見破るのもある面では得意かもしれません。とはいえ、例えばアガサ・クリスティの『スタイルズ荘の怪事件』のように薬品の知識がないと解明できないトリックもあるので、その方面は不得手かもしれませんな。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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エリック・アンブラー「エメラルド色の空」

あらすじ…亡命チェコ人のジャン・チサール博士がロンドン警視庁のマーサー副総監のもとを訪れ、ブロック・パーク事件の真相を解き明かす。

 こんなところに埋もれた名探偵がいたのか…と思いましたが、P90の著者紹介によるとチサール博士シリーズは本作を含めてたったの6篇。しかも著者のアンブラーはスパイ小説の方面で有名らしい。…なるほど、これならチサール博士の知名度が低くて当然か。
 さて、今作では被害者の腎臓から砒素が発見されていますが、そこからさらにサルヴァルサンや亜砒酸ナトリウム、亜砒酸銅なんて名前が出てくると、化学の知識に乏しい私にはお手上げです。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
販売元:早川書房
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ジョルジュ・シムノン「殺し屋」

あらすじ…メグレ警部たちは、殺し屋スタンを含むポーランド人盗賊団と目される一団が泊まるホテルを張り込んでいた。そんなある時、メグレの前に、自殺願望のポーランド人男性が現われる。

 メグレ警部(後に警視)シリーズは今まで読んだことがなかったので、これが私にとっての初メグレ体験となります。
 で、今回のメグレ警部は盗賊団一味の検挙に成功するものの、殺人防御に失敗しています。詳しいことはネタバレになるので伏せますが、メグレ警部が最後の方で「解決に長い時間をかけすぎてしまった」(P87)と嘆いているように、読んでいてもどかしさを感じてしまう状態となっています。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
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エドガー・ライス・バロウズ「ジャングル探偵ターザン」

あらすじ…類人猿の雌チーカが何者かに攫われた。ターザンと類人猿の雄タウグが、チーカを奪還すべく追跡する。

 ここに登場するターザンは、結構ワイルドです。

 かれのわき腹には物入れ袋がぶら下がっている。今までに殺した何人とも知れぬ人間たちの一人から奪ったものだ。(P17)

 ターザンは自分のことを人間だとは思っていないようだし、我々人間が持つ一般的な社会性(汝殺すなかれ!)とは無縁の生活を送っていることから、人間を殺して持ち物を奪うというのも、獲物(もしくは外敵)を狩って戦利品を手に入れたぐらいの認識なのでしょう。

 さて、本作の「ジャングル探偵」は、足跡や臭いなどを手がかりにしてチーカを攫った他の群れの雄を追いかけています。なるほど、ジャングルでは「臭跡」なのか。そういえば警察犬が犯人の足取りを追うのも、犯人の「臭跡」をたどっているんでしたな。

【参考文献】
早川書房編集部・編『天外消失<世界短篇傑作集>』早川書房

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819) Book 天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

著者:クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他
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小林司・東山あかね『図説 シャーロック・ホームズ』河出書房新社

 シャーロック・ホームズの解説本。
 P125「貨幣制度と物価」に、ホームズの時代の貨幣が現代の日本円でいくらぐらいなのかを推計した一覧表が載っているので、ちょっと紹介します。

1ポンド=20シリング=24,000円
1シリング=12ペンス=1,200円
1ギニー=21シリング=25,200円
1ペニー=100円(2以上の単位はペンス)

 そういえば伝説のクソゲー「シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件」では街の人間を倒すと30ポンド入手できますが、これは現在の貨幣価値に換算すると72万円。まあ、あのゲームソフトは色々とおかしなところがあるので、この程度で驚いてはいけない。

図説 シャーロック・ホームズ[改訂新版] (ふくろうの本) Book 図説 シャーロック・ホームズ[改訂新版] (ふくろうの本)

著者:小林 司,東山 あかね
販売元:河出書房新社
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レジナルド・ヒル、E・D・ホック他『シャーロック・ホームズ クリスマスの依頼人』原書房

 シャーロック・ホームズの二次創作(ホームズ・パスティーシュ)で、クリスマスにまつわる14の短篇集。
 どうやらシャーロッキアンたちはホームズ(とワトスン)にクリスマス休暇を許さないらしく、次から次へと難事件を持ち込んでホームズに解決させています。…過労死するぞ。
 さて、本書に収録された「事件」は以下の通り。尚、カッコ内は作者名です。

クリスマスの依頼人(エドワード・D・ホック)
クリスマス・ツリーの冒険(ウィリアム・L・デアンドリア)
過去のクリスマスの探偵(バーバラ・ポール)
冬の醜聞(ギリアン・リンスコット)
クリスマスの幽霊事件(ビル・クライダー)
クリスマス・シーズンの出来事(ジョン・ステースル)
犬の腹話術師(ジョン・L・ブリーン)
イヴの鐘(アン・ベリー)
笑わない男の事件(J・N・ウィリアムソン)
三人の幽霊(ローレン・エスルマン)
十二夜の盗難(キャロル・ネルソン・ダグラス)
国境地方の冒険(グウェン・モファット)
天使のトランペット(キャロライン・ホイート)
イタリアのシャーロック・ホームズ(レジナルド・ヒル)

 このうちの「クリスマスの幽霊事件」と「三人の幽霊」は、ディケンズの『クリスマス・キャロル』を下敷きにしています。詳細はネタバレになるので伏せておきますが、スクルージ氏の前に現われた幽霊たちも、シャーロック・ホームズの手にかかるとただのトリックによる幻覚になってしまいます。まあ、ホームズなら仕方あるまい。
 ちなみに、「クリスマスの依頼人」の依頼人はルイス・キャロル(『不思議の国のアリス』の作者)で、犯罪の黒幕は登場しないけれどモリアーティ教授(ホームズの宿敵)です。ホームズが叩き潰した、モリアーティ教授の悪企みのうちの一件、といったところでしょうか。
 又、「冬の醜聞」ではアイリーン・アドラー(正典「ボヘミアの醜聞」に登場)が出てきます。ただし、ここで彼女がしたことといえばスイスのホテルへやってきて、そこのリンクでスケートを滑るくらいのもの。ホームズを出し抜いた時のような活躍は望むべくもないほど老いてしまったのか…と、思っていたら、「十二夜の盗難」で…おっと、ここから先は読んでみてからのお楽しみとしましょう。

シャーロック・ホームズ クリスマスの依頼人 Book シャーロック・ホームズ クリスマスの依頼人

著者:レジナルド ヒル,E.D. ホック
販売元:原書房
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