コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ傑作選』集英社
「ボヘミア王家のスキャンダル」「赤毛連盟」「花婿の正体」「五つぶのオレンジの種」「ゆがんだ唇の男」「まだらの紐」の6篇を収録。
このうちの「ボヘミア王家のスキャンダル」は、一般に「ボヘミアの醜聞」という題で知られているものです。この短篇の原題は「A Scandal in Bohemia」で、「ボヘミア王家のスキャンダル」はやや意訳を込めたものであり、「ボヘミアの醜聞」は直訳といったところです。
どちらがいいかは各人の好みによると思いますが、Scandalの訳語として、カタカナの音訳「スキャンダル」にするのと、漢語の「醜聞」にするのと、どちらがふさわしいかと考えると、古めかしくて重々しい感じのする後者に軍配を上げたくなります。それにひきかえ、現代日本において「スキャンダル」という言葉はどこか安っぽいイメージがあります(芸能人の不倫や離婚問題などが安っぽさに大いに貢献している!)。
さて、本書収録の短篇の中で、私の記憶にないのは「五つぶのオレンジの種」だけでした。他は既にどこかで読んでいたか、グラナダTV版をギャオで視聴していたかのどちらかです。
「五つぶのオレンジの種」にはK・K・K(クー・クラックス・クラン)が登場するという顕著な特徴があり、読むか観るかしていればそのことが記憶に残っていたでしょうから、おそらくこれだけは未見だったのでしょう。それだけでも、この文庫本を読む価値はありました。
シャーロック・ホームズ傑作選 (集英社文庫) 著者:アーサー・コナン・ドイル |
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» 『シャーロック・ホームズ傑作選』 コナン・ドイル [じゅうのblog]
久しぶりに古典物のミステリーを読みたくなり、「コナン・ドイル」の『シャーロック・ホームズ傑作選』を読みました。
[シャーロック・ホームズ傑作選]
「シャーロック・ホームズ」モノは、2007年12月に読んだ『シャーロック・ホームズの事件簿』以来なので、ほぼ3年半振りですね。
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ミステリー界のスーパースター、「シャーロック・ホームズ」。
ロンドンを舞台に鮮やかな推理力と機敏な行動力で難事件を次々と解決する。
赤毛の男を募集する、という新聞広告の謎を追う『... [続きを読む]
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