江戸川乱歩「指環」
あらすじ…汽車の中で女性から指環を掏ったスリの男が、どこに指環を隠したのかを語る。
「自作解説」によると、本作は、
「新青年」大正十四年四月号に「白昼夢」とならべて、「小品二題」という一括見出しをつけて発表したもの。「白昼夢」の方は大いに好評であったが、この「指環」は黙殺された。(P446-447)
黙殺される、というのはある意味、批判されるよりも悲しいのかもしれません。というのは、「レビューする価値なし」と言ってるようなものだからです。
とはいえ、レビューする側の人間だって、読んだものを一々取り上げる義理はないんだから(プロの批評家が仕事でやるのは別)、「なぜ○○を取り上げないのですか?」と責めるわけにはいかない。
さて、本作はAとBの会話だけで話が進みます。Bの方がスリですが、Aも指環を横取りしようとするあたりからして悪党ですな。
で、最後に指環の隠し場所を明かして終わり。実に呆気ない。どうせなら、「これがその指環でさあ」と言ってAの前に取り出して見せても…って、とっくに売り払っているか。犯罪者の心理としては、犯罪の証拠は一刻も早く処分したいものですから。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社
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