江戸川乱歩「白昼夢」
あらすじ…ある日の午後、往来に人だかりができている。その人だかりの中心で、一人の男が演説していた。「俺は妻を殺した」と。
「自作解説」によると本作は「狂人の幻想として発表」(P437)されたとのこと。狂人? ここでいう狂人とは誰のことを指しているのでしょうか?
第一の候補者は、妻を殺してその死体を屍蝋に加工し店に飾った演説者です。なるほど、一連の行為を見ればたしかにこいつは狂人です。しかし、死体の方は幻想ではなく、「私」がちゃんと本物だと確認しています。
だとすると、これら一連の怪奇な出来事を目撃した「私」の方が狂人なのかもしれません。冒頭に「あれは、白昼の悪夢であったか、それとも現実の出来事であったか。」(P429)とあるように、現実と非現実の区別も付いていないようですから。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社
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