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『世田谷マガジン ―トリコ― No.47 2011.4.28』

 世田谷発の無料情報誌。
 特集は「成城商店街特集」(P44-38)。何だ、うしろから読むのか。おまけに「成城学園前駅 北口&南口 夢の初コラボ」(P44)ってことは、今までの長い歴史の中でコラボをしたことがないか、したことを忘れているかのどちらかで、ひょっとしたら普段、北口商店街と南口商店街の仲が悪いのかな?
 ところで、本誌P41-40のMAPによると、成城の土産はモカロール(成城アルプス)と成城ハニー(宍戸園)だそうです。私が成城に滅多に行かないからかもしれませんが、そんなことは初めて知りました。

世田谷マガジン ―トリコ― No.47 2011.4.28

塩野七生・文、水田秀穂・絵『漁夫マルコの見た夢』ポプラ社

 この絵本のあらすじを簡単に説明すると、田舎から都会に出てきた青年が、お金持ちのマダムと楽しい一夜を過ごし、最後はお小遣いを貰って帰る、というものです。
 出会い系のスパムメールにこれと似たような話がありますな。寂しい人妻とセッ○スするだけで数万円もらえるとかいうやつです。
 そう考えると、舞台はヴェネツィアで時は謝肉祭という設定が飾りとなっているだけで、基本部分はスパムメールの与太話とあまり変わりがないんだなと言えます。
 え? そんなこと言われたら、本書のロマンチックさが台無しだって? すいませんねえ、私は漁夫マルコほどウブじゃないもんで。

 漁夫マルコの見た夢 漁夫マルコの見た夢
販売元:セブンネットショッピング(旧セブンアンドワイ)
セブンネットショッピング(旧セブンアンドワイ)で詳細を確認する

江戸川乱歩「蜘蛛男」

あらすじ…怪人「蜘蛛男」が若い女性を誘拐し、猟奇的な方法で殺害する事件が発生、東京を恐怖に陥れる。犯罪学者・畔柳博士と警視庁の波越刑事は事件解決に乗り出すが…。

 P333の刑事部長と波越刑事の会話によると、一寸法師が犯人だった事件に言及し、「あれからもう3年にもなる」(P333)とあることから、「一寸法師」から3年後という設定になっていることがわかります。
 それはさておき、明智小五郎が登場する前に、蜘蛛男の正体特定余裕でした。この程度の心理トリックなら、すっかり慣れてしまったからです。まあ、明智小五郎はたった一日で看破したぐらいですから、そんなに自慢することでもありませんね。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男』光文社

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江戸川乱歩(目次)

G・K・チェスタートン『ブラウン神父物語』嶋中書店

 「青い十字架」「秘密の庭」「奇妙な足音」「見えない人間」「折れた剣」「ペンドラゴン一族の悲劇」「銅鑼の神」「弦月荘の奇蹟」を収録。

 江戸川乱歩「恐怖王」をレビューした時に、三人の名探偵の名が挙がりました。明智小五郎、シャーロック・ホームズ、そしてこのブラウン神父です。明智とホームズは有名ですが、ブラウン神父となると…誰だっけ? 恥ずかしながら、知りませんでした。
 そこで近所の図書館で本書を見つけたのを幸い、借りて読んでみることにしました。
 で、実際に読んでみると、明智やホームズほど人気がない理由が何となくわかりました。以下、思い付くままに書き出してみることにします。

(1)冒険的要素が薄い
 少なくとも本書収録の諸短篇の中でブラウン神父は、一度も犯人と格闘したこともなければ変装したことさえありません。これら冒険的行為によって得られるハラハラドキドキ感が得られないのは残念。

(2)偶然の出会いが多い
 ブラウン神父は飽くまで司祭であって、プロの探偵ではありません。従って、名推理を必要とする難事件が彼のもとに持ち込まれるというよりも寧ろ、たまたま事件に遭遇してしまったというシチュエーションがどうしても多くなります。
 例えば「奇妙な足音」だって、たまたまその日にホテルの従業員が倒れなければ、たまたまその時に呼ばれたのがブラウン神父でなければ、そしてブラウン神父の居た場所が経営者の私室でなければ、…。「折れた剣」では自ら首を突っ込んでいますが、それ以外では偶然性が多かれ少なかれ作用しています。何というご都合主義!

(3)回りくどい言い方
 「奇妙な足音」ではシェイクスピアの『ハムレット』、「折れた剣」ではダンテの『神曲』に言及するくだりがありますが、そんなものは序の口。ブラウン神父の謎解きは実に回りくどい言い方で為されます。

 「ああ、そんな譬え話で語るのはやめてください」とフランボウが焦れったそうに叫んだ。「もっと簡単な、短い言葉で説明できないんですか?」(P230、「ペンドラゴン一族の悲劇」より)

 同じことを何度思ったことか…。まあ、それが彼の流儀なのでしょうけれど。

江戸川乱歩「押絵と旅する男」

あらすじ…「私」は魚津で蜃気楼を見た帰りの汽車の中で、押絵を持った老人と出会う。彼は、その押絵の由来を語る。

 手許の国語辞典(新明解)を引いてみると、

【押(し)絵】 綿を包んだ布地を、花・鳥・人物に象(カタド)り、羽子板などに張りつけたもの。

 とあります。ああ、羽子板市で見かけるやつか。
 さて、老人の話を要約すると、若い頃(明治28年)、彼の兄が押絵の女性(八百屋お七)に恋をしてしまい、ついには押絵の中に入り込んで一緒になってしまったとのこと。
 何と、こんな時代(明治28年)に、二次元の世界に旅立った人間がいたとは…。現代の、二次元の嫁がいるオタクちゃんたちにとっては羨ましい話かもしれません。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男』光文社

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江戸川乱歩(目次)
押絵と旅する男(2009年)

NIKITA/ニキータ 第1話(2010年、アメリカ)

出演:マギー・Q、
ソリンダ・クラーク、ソリンダ・クラーク、ザンダー・バークレイ、アーロン・スタンフォード、アシュトン・ホームズ、ティファニー・ファインズ

 映画「ニキータ」から3年後の続編だとか。とはいえ、映画を観ていなくてもオープニングでニキータが説明してくれるので多分大丈夫です。で、ストーリーを簡単に説明すると、暗殺組織を抜けたニキータが、恋人を殺された復讐のために戦いを挑むというものです。
 ちなみに、映画「ニキータ」は昔、テレビの放送で観た記憶があるのですが、その頃のニキータと較べると、大人びてウマヅラになっているという印象を受けます。

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販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2011/06/22
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グッド・ワイフ 彼女の評決 第1話

出演:ジュリアナ・マルグリーズ、クリス・ノース、アーチー・バンジャビ、ジョシュ・チャールズ、クリスティーン・バランスキー、マット・ズークリー
原題:the good wife
備考:法廷サスペンスドラマ

 「TSUTAYA海外TV先ドリDVD3」収録作品の中では唯一の吹き替えでした。私は字幕派ですので、字幕のほうが良かったなあと思いましたが、そもそも無料で視聴しているのだからこのくらいで文句は言えません。
 それにしても、法廷のシーンで検事が「異議あり!」と言う頻度が高いのが印象的でした。ここまで多くなると、話の腰が折られまくってなかなか先に進まない感じを与えますな。

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販売元:Paramount
発売日:2010/09/14
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V 第1話(2009年、アメリカ)

出演:ジェーン・バトラー、リチャード・ハード、ロバート・イングランド、マイク・ドノバン
備考:SFドラマ

 友好的に振舞って接近してきた宇宙人「ビジター」が、実は地球を侵略しに来ていた。それに気付いた少数の地球人が彼らとの暗闘を繰り広げるというもの。
 本作は1983~4年に製作されたテレビドラマのリメイクなのですが、あいにく私はそちらの方は観ていない(あるいは、観たという記憶をはっきり持たない)ので比較はできないのですが、観ていなくても一つだけ確信を持って言えることがあります。それは、今作ではCG(コンピューター・グラフィック)を存分に活用しているということです。巨大な宇宙船を世界中の都市の上空に浮かべるところなどは「どうだ」と言わんばかり。
 尚、第1話の終盤では宇宙人との戦闘があるのですが、地球人より遥かに優れた文明を持っているはずなのに、宇宙人の武器がちょっとショボい。周囲に針を飛ばすやつが出てきますが、せいぜいそれくらいで、返り討ちに遭う宇宙人も出てくる始末。
 まあ、あんまり強力な武器を使ってしまうと隠蔽できませんからねえ。

WHITE COLLAR(原題) 第1話(2009年、アメリカ)

出演:マット・ボマー、ティム・ディケイ、ティファニー・ティーセン、ウィリー・ガーソン
邦題:ホワイトカラー

 天才詐欺師がFBI捜査官と組んで事件を解決していくというもので、彼の要領の良さには苦笑を禁じえません。いきなり豪邸に居候を決め込むとは…。
 さて、第1話ではスペイン国債の偽造ですか。半世紀以上前に発行されたものがいまだに有効で、しかも利子がつきまくって金額が凄いことになっているとは驚きでした。まあ、私が金融の方面にそれほど詳しくないからなのでしょうが、それゆえに私は彼の思考についていくことは不可能でしょうな。

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販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2011/09/07
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TSUTAYA海外TV先ドリDVD3

 近所のTSUTAYAで、「TSUTAYA海外TV先ドリDVD3」を借りました。海外ドラマ4本の第1話が収録されたもので、お試し版ということで無料でした。
 尚、収録作品は以下の通り。

WHITE COLLAR(原題) 第1話
V 第1話
グッド・ワイフ 彼女の評決 第1話
NIKITA/ニキータ 第1話

 WHITE COLLARについては、「ホワイトカラー」という邦題が現在付いています。今後、それぞれのレビュー記事を発表します。

ハート・ロッカー(2008年、アメリカ)

監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ
原題:The Hurt Locker
備考:第82回アカデミー賞作品賞受賞

あらすじ…2004年イラク。アメリカ軍爆弾処理班が、見えない敵が仕掛けた爆弾を解除しようと奮闘する。

 最初に断わっておきますが、グロ描写注意。死体から爆弾を取り出すシーンなどがありますので、そういうのが苦手な人は観ない方がいいでしょう。
 又、爆弾処理の緊張感が長く感じられました。観賞当日の私の体調があまり良くなかったせいか、神経が耐えられずに気分が悪くなってしまいました。
 この感覚、前にもどこかで…とデジャヴ(既視感)を抱いていたら、映画「キングダム 見えざる敵」を観た時と近いなということに思い当たりました。「キングダム」も正体の見えないテロリストが敵で、舞台も中東でしたっけ。

 ところで、砂漠の中で一行が狙撃されるシーンがあるのですが、遠くの建物から狙われているということでそこにいる敵を何人か倒す。しかしまだ潜んでいるかもしれないと警戒して暗くなるまで待ち続けます。
 終わりがなかなか見えないという点では、イラクにおけるアメリカ軍の状況そのものと通じるところがあり、それを象徴させているのかもしれません。

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販売元:ポニーキャニオン
発売日:2010/09/02
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プレスリーVSミイラ男(2002年、アメリカ)

監督:ドン・コスカレリ
出演:ブルース・キャンベル、オシー・デイヴィス、エラ・ジョイス、ハイディ・マーンハウト、ボブ・アイヴィ
原題:Bubba Ho-tep
備考:B級バカ映画

あらすじ…プレスリーはテキサスの老人ホームで生きていた。プレスリーは、自分をJFKだと思い込んでいる黒人と共に、ミイラ男と戦う!

 レンタルビデオ店のホラーの棚にあったと記憶しているのですが、別に怖くはありません。寧ろニヤニヤ感が止まらないほどの馬鹿馬鹿しさがあり、その点では肩に力を入れないで観賞することができます。

 ところで、エルヴィス・プレスリーは1935年生まれ。この映画が公開された2002年に生きていたら67歳という計算になります。本稿執筆時の2011年だったら御年76歳。
 …え? そんな老いさらばえたプレスリーなんて見たくない? たしかにファンにとってはアイドルがそんな老醜をさらすのは正視に耐えないかもしれませんな(特にこの映画に登場するプレスリーは)。森繁久弥やショーン・コネリーのような魅力的な老い方もありますが、プレスリーについてはマイケル・ジャクソンと同様にそういう姿が想像しにくいものなあ…。

 それにしても、ここに登場するミイラ男は結構弱い。手にかけてきたのが今にも死にそうな老人たちばかりだし、最後に死にそうなジジイ2人に倒されるくらいですからね。

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販売元:クロックワークス
発売日:2007/05/25
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瀬川昌久監修『一冊でわかる ミュージカル作品ガイド100選』成美堂出版社

 国内外のミュージカル作品100本を紹介したもの。
 かくいう私は劇場に足を運んでミュージカルを観賞するというよりも寧ろ、ミュージカル映画を試写会かDVDのどちらかで観ることが多いです。
 どんなものを観て来たかというと、例えば「ヘアスプレー」だとか「紳士は金髪がお好き」などです。又、本書で紹介されている作品ならば、「スウィーニー・トッド」(P85)や「メトロに乗って」(P170)があります。
 とはいえ、ミュージカル映画は滅多に観ないので、名前だけは知っている有名作品のあらすじを、本書を通じて知ることができたのは収穫でした。

一冊でわかる ミュージカル作品ガイド100選
Book
一冊でわかる ミュージカル作品ガイド100選
販売元 成美堂出版
定価(税込) ¥ 1,365

江戸川乱歩「パノラマ島綺譚」

あらすじ…貧乏暮らしの人見廣介は、自分の理想郷を建設することを空想していた。そんなある時、自分と容姿がそっくりで財産家の菰田源三郎が死んだことを知り、奸計をめぐらせて源三郎に成りすまし、菰田家の財産を使って無人島に自分の理想世界を建築する。

 田舎の金持ちが有り余る財産を使って自分好みのテーマパークを建てるというモチーフは、「地獄風景」と共通します。
 ただし、こちらは地獄絵図の描写よりも犯人(人見廣介)の心理描写に比較的割いており、自分の正体がバレやしないかというビクビク感がよく伝わってきます。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚』光文社

パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫) Book パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫)

著者:江戸川 乱歩
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

江戸川乱歩「闇に蠢く」

あらすじ…洋画家の野崎三郎は、踊り子のお蝶と恋仲になる。そんなある日、お蝶に頼まれて、二人は駆け落ちするようにS温泉の籾山ホテルへ行く。

 後半、カニバリズム描写があるので注意。
 しかも、主要な登場人物が全員死ぬという救いのない結末ですので、これまたご注意を。
 …え? ネタバラシするなって? いえいえ、グロ描写に対する免疫が不十分な未来の読者に向けて警告を発しているんです。何しろ、人肉を喰らうんですからね。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚』光文社

パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫) Book パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫)

著者:江戸川 乱歩
販売元:光文社
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アドルフ・ヒトラー『わが闘争(下)』角川書店(4)

 第4章「人格と民族主義国家の思想」(P96-107)では民主主義的な多数決を否定し、

 最良の憲法と国家形式は、民族共同体の最良の頭脳をもった人物を、最も自然に確実に、指導的重要性と指導的影響力をもった地位につけるものである。(P105)

 と述べています。回りくどい表現なのでわかりにくいかもしれませんが、この後の文章の中に「決定は一人の人間だけがくだすのである」(P105)と書いてあることから、一人の人間による独裁体制が最もいいんだと言っているわけですな。
 まあ、独裁体制のメリットとデメリットについて論じていたらキリがないし、ナチス・ドイツの体制に限ったとしても著述に膨大な労力が必要になるのであまりくどくどと書きません。ただ、一つだけ言わせてもらうと、ベルリンで日々の政務をこなしながら、ドン河での戦闘を指揮できるでしょうか?

わが闘争(下)―国家社会主義運動(角川文庫) Book わが闘争(下)―国家社会主義運動(角川文庫)

著者:アドルフ・ヒトラー
販売元:角川書店
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『わが闘争』(目次)

ジュール・グラッセ『悪魔のヴァイオリン』早川書房

あらすじ…サン=ルイ島の教会の司祭が殺害される。ヴァイオリン奏者のジュリーに容疑がかけられるが、メルシエ警視は彼女の無実を信じる。

 GPSや携帯電話も登場する、実に現代的な舞台なのですが、その割には科学捜査がなおざりになっているような気がします。例えば、P16でピニュールが凶器に使われた司祭のステッキについて報告しているのですが、指紋についての言及は一切ありません。
 もしステッキに誰の指紋もついていないならば、犯人がステッキを拭いて指紋を消したと考えられるし、司祭の指紋しか発見されなければ犯人は手袋をはめていた可能性が高い。そして、もしも犯人のものと思しき指紋が検出されて、それを犯罪者データベースと照合していたとしたら…、おっと、これ以上はネタバレになってしまうのでやめておきます。

悪魔のヴァイオリン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) Book 悪魔のヴァイオリン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

著者:ジュール グラッセ
販売元:早川書房
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河村幹夫『ドイルとホームズを「探偵」する』日本経済新聞出版社

 シャーロッキアンの著者が、コナン・ドイルの生涯を辿りながらシャーロック・ホームズがいかに作られてきたかを述べたもの。
 私のこのブログでは『緋色の研究』『シャーロック・ホームズ傑作選』の書評をしているので、ここいらで一つ、ホームズの解説本も取り上げてみようと思った次第です。
 さて、本書を読んでみての感想。ホームズの生みの親、サー・アーサー・コナン・ドイルについては、医者であったことと心霊主義に傾倒していたことぐらいの貧弱な予備知識しかなかったので、ドイルの生涯をやや簡潔ながらも知ることができたのは収穫でした。

ドイルとホームズを「探偵」する (日経プレミアシリーズ) Book ドイルとホームズを「探偵」する (日経プレミアシリーズ)

著者:河村 幹夫
販売元:日本経済新聞出版社
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『ニュートン別冊 探査機が明らかにした太陽系のすべて』ニュートンプレス

 説明文は読まずとも、惑星や衛星の画像の数々を見ているだけでも充分に楽しい。例えば、木製の衛星イオなんて、黄色とオレンジの混ざった、毒々しい、腐った果実みたいです(P80-81)。
 それから、去年「はやぶさ」が帰還して話題になった小惑星イトカワ(P128-129)も載っています。この別冊は2006年に発行されたものですので、あの快挙には触れていないものの、「はやぶさ」が撮影した写真が使われており、「数センチメートルの小石」(P129)など興味深いものを見せてくれます。

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アドルフ・ヒトラー『わが闘争(下)』角川書店(3)

 第三章「国籍所有者と国家の市民」(P92-95)は、前章(第二章 国家)が重厚なのに較べてページ数が少なく、喩えるなら『源氏物語』の「葵」の後の「花散里」のような小休止的存在となっています。

 さて、本章を簡潔に要約するならば、以下の通り。

 民族主義国家は、その住民を三階級にわける。すなわち、国家市民、国籍所有者、および外人である。(P94)

 住民を三種類に分けるのではなく、三階級に分けるとあります。つまり、階級という言葉を使う以上、国家市民、国籍所有者、外人には上下関係が存在するということです。もちろん一番上には国家市民、次いで国籍所有者、そして一番下に外人が位置するわけですな。
 では、国家市民と国籍所有者の違いは何か? 「国籍をもつというだけでは、まだ公的な官職につく資格がなく、また積極的にも消極的にも、選挙へ関与する意味で政治的に活動する権利もない」(P94)とあることから考えるに、国家市民は公的な官職に就く資格と、参政権を持っているのに対し、ただの国籍所有者はそれらを持たないということなのでしょう。
 それではどうすれば国籍所有者が国家市民になれるのかというと、「非のうちどころのない健康な青年には、兵役義務の終了後その結果として、堂々と国家市民権が授与される」(P95)そうですから、男はまず軍隊へ行かないといけないようです(女性は別)。軟弱者には無理な話ですね。

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著者:アドルフ・ヒトラー
販売元:角川書店
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『わが闘争』(目次)

小柴昌俊『ようこそニュートリノ天体物理学へ』海鳴社

 小柴昌俊氏の講演を再構成して新書の形にしたもの。
 聴衆には高校生もいるとのことで、なるべくわかりやすく伝えようとしているのですが、それでもやはり文系人間の私にはハードルが高かったです。物理学の素養が不足しているのを痛感しました。
 物理学をやっている人にとっては既知のエリアでしょう。ちょっと物足りないかもしれません。

ようこそニュートリノ天体物理学へ Book ようこそニュートリノ天体物理学へ

著者:小柴 昌俊
販売元:海鳴社
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コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ傑作選』集英社

 「ボヘミア王家のスキャンダル」「赤毛連盟」「花婿の正体」「五つぶのオレンジの種」「ゆがんだ唇の男」「まだらの紐」の6篇を収録。
 このうちの「ボヘミア王家のスキャンダル」は、一般に「ボヘミアの醜聞」という題で知られているものです。この短篇の原題は「A Scandal in Bohemia」で、「ボヘミア王家のスキャンダル」はやや意訳を込めたものであり、「ボヘミアの醜聞」は直訳といったところです。
 どちらがいいかは各人の好みによると思いますが、Scandalの訳語として、カタカナの音訳「スキャンダル」にするのと、漢語の「醜聞」にするのと、どちらがふさわしいかと考えると、古めかしくて重々しい感じのする後者に軍配を上げたくなります。それにひきかえ、現代日本において「スキャンダル」という言葉はどこか安っぽいイメージがあります(芸能人の不倫や離婚問題などが安っぽさに大いに貢献している!)。

 さて、本書収録の短篇の中で、私の記憶にないのは「五つぶのオレンジの種」だけでした。他は既にどこかで読んでいたか、グラナダTV版をギャオで視聴していたかのどちらかです。
 「五つぶのオレンジの種」にはK・K・K(クー・クラックス・クラン)が登場するという顕著な特徴があり、読むか観るかしていればそのことが記憶に残っていたでしょうから、おそらくこれだけは未見だったのでしょう。それだけでも、この文庫本を読む価値はありました。

シャーロック・ホームズ傑作選 (集英社文庫) Book シャーロック・ホームズ傑作選 (集英社文庫)

著者:アーサー・コナン・ドイル
販売元:集英社
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塩野七生『日本人へ 国家と歴史篇』文藝春秋

 『ローマ人への手紙』で有名な作家のエッセイ。自著のことのみならず、政治や映画、ワインなど話題は多岐にわたっています。

 さて、今回取り上げるのは、「安倍首相擁護論」(P77-82)。
 …え? もう終わったやつのことなんかどうでもいいって? まあまあ、そんなに長々と述べないつもりなので少々ご辛抱あれ。
 この文章が書かれたのは2007年参議院選挙の直前。自民党の敗北は必定との情勢下で、安倍首相の続投が「今の段階で、とりうる最良の選択であると思っている」(P80-81)と主張しています。以下、その理由について。

 理由の第一は、猫の目の如く首相が代わっていた小泉以前の時代に再びもどることは、現在の日本はもはや耐えられない状態にあるということ。(P81)

 第二第三の理由は(もしあるのならば)紙幅の都合で書かれていません。いずれにせよ不幸なことに、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と1年ごとに首相がコロコロと交代し、さらに民主党政権になっても鳩山由紀夫が1年もたずに辞任。そして今また菅下ろしの風が吹き荒れるといった具合です。
 別に菅直人総理を擁護するわけではありませんが、いいかげんどこかでこの短命の連鎖を断たないといけません。
 小沢一郎が菅下ろしに動いているようですが、小沢は「神輿(みこし)は軽くてパーがいい」と思っている人で、事実彼が担ぎ上げた某首相は発言がブレまくって(軽いとこうなる)、ルーピー(愚か者という意味)と呼ばれる始末。今度は誰を担ぐのか知りませんが、どうせまた「軽くてパー」でしょうから、そいつが首相になると長期安定政権など望むべくもない。

 そういえば、本書で「拝啓 小沢一郎様」(P186-190)という提言があるので、私もそれにならって一つだけ提言させていただきます。
 拝啓 小沢一郎様。どうせなら自分とタメ張れるくらい強いやつを担いでみやがれ。

 日本人へ 国家と歴史篇

海野弘『秘密結社の日本史』平凡社

 日本史の中の秘密結社を取り上げたもの。
 日本における秘密結社といえば、真言立川流が思い浮かびましたが、本書にも第三章で取り上げています。
 ちなみに、本書ではどんなものが秘密結社、もしくは秘密結社としての要素を持つものとして挙げられているかといいますと、行基集団や浄土宗、浄土真宗、時宗阿弥教団、一向一揆、日蓮宗不受不施派、隠れキリシタン、等々。宗教絡みがおおいなあ…と思っていたら、エピローグでオウム真理教が出てきました。
 尚、宗教団体でない結社もあります。忠臣蔵やギロチン社、楯の会、連合赤軍など。なるほど、忠臣蔵が秘密結社か…、確かに彼らは秘密裏に行動していましたから、秘密結社といえますな。

 秘密結社の日本史

江戸川乱歩「一枚の切符」

あらすじ…富田博士夫人が列車に轢き殺される。当初は自殺かと思われたが、調べてみると夫人は毒殺されていたことがわかり、夫の富田博士が殺人容疑で逮捕される。左右田五郎は現場で拾った一枚の切符を手がかりにして博士の無実を証明する。

 語り手の左右田五郎にせよ、聞き手の松村にせよ、名前が途中から登場します。名探偵が自分の正体を明かすといったような演出ならともかく、この場合はお互いに相手の正体を知っているようだから、そのテの演出ではありません。
 推測するに、最初からキャラクター設定をしっかりと固めておかないうちに書き始め、書いている途中で名前を出した方がいいと判断して急遽拵えたのではないでしょうか。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社

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江戸川乱歩(目次)

江戸川乱歩「二銭銅貨」

あらすじ…「私」と松村武っは、極貧生活で行き詰っていた。一方、世間では泥棒が盗み出した5万円(当時としては大金)の所在がわからず話題になっていた。そんなある時、「私」が入手した煙草屋の釣銭(二銭銅貨)から、松村武が5万円の在り処を探り出そうとする。

 江戸川乱歩の処女作。学生時代に書いたという「火縄銃」の方が古いといえば古いのですが、あれは練習作といったところです。
 さて、この「二銭銅貨」についてですが、松村武の推理には随分とこじ付けが多いと感じました。暗号解読はいいとして、二銭銅貨がここまでたどってきた経路に問題があります。
 まず第一に、泥棒が外部の者と通信した、もしくは通信しようとしたのか不明だということです。5万円をどこか安全な場所に隠してしまっていたり、既に信頼できる誰かに預けてしまっている可能性があります。
 もし仮に外部と通信しようとして、そしてそこに5万円の在り処が記してあったとしても、それが松村武の手に渡るまでには天文学的な確率の偶然を積み重ねなければなりません。
 差し入れ屋が泥棒から託された二銭銅貨を「ついうっかり」妻の実家への援助に充てるというのも妙な話だし、それが釣銭として「私」の手許へ行くのも話が出来すぎています(客は他にもいっぱいいるし、そもそも釣銭にしないで買い物に使う可能性もある)。そしてそれを受け取った「私」が松村武の目に見えるところに置いておかず、ポケットか財布に入れっ放しにしていたら、さしもの彼も気付かなかったはずです。
 まあ、「窮乏のどん底にのたうち廻っていたのである」(P20)から、何としても金が欲しい。金が欲しい金が欲しい金が欲しい…。その執念が思考を鋭敏にさせると同時に周囲を見えなくさせてしまい、強引な推理を展開、そして最後はご覧の有様になったのでしょう。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社

【関連記事】
江戸川乱歩(目次)

江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」

あらすじ…ニートの郷田三郎は、退屈を持て余していた。そんなある時、下宿先の天井から屋根裏に行けることを知り、「屋根裏の散歩者」となって住人たちの生活を天井から覗き見するようになる。しかしそれだけでは飽き足らずに、遂には屋根裏を使って殺人をすることに…。

 やれやれだぜ。覗きだけにとどめておけばよいものを(それだっていけないことなのだが)、人を殺してしまうとはねえ。
 しかしながら殺人はさておいて、他人の秘密を覗き見する魅力があるのは事実です(自分の秘密を他人に見られるのは厭だけど)。ピーピング・トムが絶えないのは皆さんご承知の通り。
 であるからこそ、この「屋根裏の散歩者」は、その種の願望を刺激してくれるのです。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社

【関連記事】
江戸川乱歩(目次)

江戸川乱歩「幽霊」

あらすじ…金持ちの平田氏は、自分を付け狙っていた辻堂老人が死んだことを知って安堵する。しかし、死んだはずの辻堂老人が平田氏の前に幽霊のように出没する。

 ちょっとネタバレしておきますと、今回の事件では誰も死んでいません。辻堂老人ですら死にません。
 素人探偵明智小五郎の手際が良かったのと、作者の都合で誰も死なないうちに解決してしまったからなのでしょうが、それにしたって呆気ない終わり方ですな。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社

 江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者

江戸川乱歩「白昼夢」

あらすじ…ある日の午後、往来に人だかりができている。その人だかりの中心で、一人の男が演説していた。「俺は妻を殺した」と。

 「自作解説」によると本作は「狂人の幻想として発表」(P437)されたとのこと。狂人? ここでいう狂人とは誰のことを指しているのでしょうか?
 第一の候補者は、妻を殺してその死体を屍蝋に加工し店に飾った演説者です。なるほど、一連の行為を見ればたしかにこいつは狂人です。しかし、死体の方は幻想ではなく、「私」がちゃんと本物だと確認しています。
 だとすると、これら一連の怪奇な出来事を目撃した「私」の方が狂人なのかもしれません。冒頭に「あれは、白昼の悪夢であったか、それとも現実の出来事であったか。」(P429)とあるように、現実と非現実の区別も付いていないようですから。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社

 江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者

江戸川乱歩「指環」

あらすじ…汽車の中で女性から指環を掏ったスリの男が、どこに指環を隠したのかを語る。

 「自作解説」によると、本作は、

 「新青年」大正十四年四月号に「白昼夢」とならべて、「小品二題」という一括見出しをつけて発表したもの。「白昼夢」の方は大いに好評であったが、この「指環」は黙殺された。(P446-447)

 黙殺される、というのはある意味、批判されるよりも悲しいのかもしれません。というのは、「レビューする価値なし」と言ってるようなものだからです。
 とはいえ、レビューする側の人間だって、読んだものを一々取り上げる義理はないんだから(プロの批評家が仕事でやるのは別)、「なぜ○○を取り上げないのですか?」と責めるわけにはいかない。

 さて、本作はAとBの会話だけで話が進みます。Bの方がスリですが、Aも指環を横取りしようとするあたりからして悪党ですな。
 で、最後に指環の隠し場所を明かして終わり。実に呆気ない。どうせなら、「これがその指環でさあ」と言ってAの前に取り出して見せても…って、とっくに売り払っているか。犯罪者の心理としては、犯罪の証拠は一刻も早く処分したいものですから。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社

 江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者

コナン・ドイル『緋色の研究』新潮社

 シャーロック・ホームズの初登場作品。私はホームズの二次創作を何冊かレビューしてきましたが、「正典」を扱うのはこれが初めてだったりします。

 それはさておき、本書のP24-25にはワトスンがホームズを観察した結果の一覧表が掲載されております。ちょっと長くなりますが、引用してみます。

 シャーロック・ホームズの特異点
一、文学の知識――ゼロ。
二、哲学の知識――ゼロ。
三、天文学の知識――ゼロ。
四、政治上の知識――微量。
五、植物の知識――不定。ベラドンナ、阿片、その他一般毒物にはくわしいが、園芸に関してはまったく無知。
六、地質学の知識――限られてはいるがきわめて実用的。(略)
七、化学の知識――深遠。
八、解剖学の知識――精確ではあるが組織的ではない。
九、通俗文学の知識――該博。今世紀に起きた恐るべき犯罪はすべて詳細に知っている。
一〇、ヴァイオリンを巧みに奏す。
一一、棒術、拳闘および剣術の達人。
一二、イギリス法律の実用的知識深い。

 もちろんこれは二人が出会って間もない段階での観察の結果です。ホームズが「バリーツ」を使えることやコカインをやることなどは書いていませんし、「四、政治上の知識」だってホームズの名声が上がるにつれて政治家や王侯貴族から依頼が来るようになるとその方面の知識を増やしたはずです。又、解剖学の知識が組織的ではないということは、学校で組織的に学んだのではなく、独学で習得したものだと推測されます。

 緋色の研究

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