江戸川乱歩「心理試験」
あらすじ…大学生の蕗屋清一郎は、金貸しの老婆を殺害し金を奪う計画を入念に練り、これを実行に移す。計画はまんまとうまく行き、しかもその家に間借りしていた友人の斉藤勇が殺人の容疑で逮捕される。しかし不審を抱いた笠森判事は、蕗屋・斉藤の両名に心理試験をすることに。
本作はドラマ「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」と同様に、観客(読者・視聴者)には最初から犯人がわかっていて、探偵役の者がいかにして切り崩すかが見せ場となっています。尚、ここでの探偵役は笠森判事の他に明智小五郎が加勢してくれています。
ちなみに、心理試験の内容はというとこれが2種類あって、長くなるので引用は避けますが、今でいうところの嘘発見器と自由連想法です。
ただし、これらの心理試験の結果だけで蕗屋の犯行を決定付ける証拠とはなりえず、本作ではテストの結果をもとに罠を張っています。ネタバレになるので罠の内容は伏せますが、蕗屋が殺害の下手人でなければ知りえない情報を用いています。
心理試験はともかくとして、「犯人でしか知りえない情報」を使って犯人を自白に追い込むというやり方は、推理モノでは珍しくないですけどね。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社
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