アドルフ・ヒトラー『わが闘争(下)』角川書店(2)
第2章「国家」(P27-91)はちょっと長い。
で、この章の前半は民族主義国家とはどんなものであるか、そして後半は教育論、そして最後に労働の価値について述べています。
さて、本章の教育論について。
そもそも教育を自己のイデオロギーの浸透手段として活用しようというのは、古今東西、右翼左翼を問わずやっていることで、珍しいことではありません。例えば右翼は愛国教育の必要性を訴え、左翼は反戦平和教育の重要性を説いているのは皆さんご承知の通り。
もちろんヒトラーも、この例に漏れず、教育によってドイツ人の若者たちを訓育すべきであると説いています。その教育内容はさておいて、教育って、政治宣伝のツールとしては便利な存在なんですねえ。
ちなみに、この章の人種差別についても取り上げておきます。ヒトラーは黒人が「弁護士、教師、そのうえ牧師やそればかりでなくりっぱなテナー歌手」(P82)などになることは気に入らないようで、こんなことを述べています。
最高の文化人種に属する幾百万のものが、まったくくだらない地位にとどまっていなければならないのに、生まれつきなかばサルのようなものを長い間調教して、弁護士にしあげたと信ずることが、犯罪者的荒唐無稽だということを考えないし、ホッテントットやズール族が知的職業にまで調教されているのに、最も天分のある幾十万という人々を、今日プロレタリアの泥沼の中に堕落させるならば、永遠の造物主の意思を冒涜しているのだということを考えもしないのだ。(P82-82)
ここでいう「最高の文化人種に属する幾百万のもの」とはドイツ人を指し、「生まれつきなかばサルのようなもの」とは黒人を指す。これだけでも侮蔑的なのですが、その上更に、後者に対して「教育」という言葉を使わず、「調教」という表現を用いています。これじゃあ黒人は動物扱いじゃないか…と思ったら、この引用部分のすぐ後に、「プードル犬の調教とまったく同じ」(P83)との表現が。
ゲルマン民族を人間の世界では至高の存在に置こうとすればするほど、他の民族は「劣等民族」としてその地位をどんどん貶めることにつながり、ついに黒人に至っては畜生道(動物の世界)にまで追いやられてしまったようです。
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わが闘争(下)―国家社会主義運動(角川文庫) 著者:アドルフ・ヒトラー |
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