江戸川乱歩「火縄銃」
あらすじ…「私」は友人の橘梧郎と共に、同じく友人の林一郎が逗留しているA山麓Sホテルへと赴く。しかし林一郎は銃で胸を撃たれて死んでいた。仲の悪い義弟に嫌疑が掛けられるが…。
江戸川乱歩が学生時代に書いた「未発表の処女作」(P370)。
それだけに、未熟だと思わせる部分が目に付きます。例えば死体の描写。
寝台の上には、上衣を脱いだ胴衣一枚の林一郎が、左胸に貫通銃創を受けて横たわっていた。生々しい血潮は、胴衣から流れて白いシーツを紅に染め、まだ乾ききらず血の匂いを漂わしている。私はこの意外な林の姿を見ると、もう何も考える力もなく、なかば放心の態で、ボンヤリ橘の動作を見まもっていた。(P373)
江戸川乱歩にしては、アッサリとしたものです。江戸川乱歩ならもっとおどろおどろしく書いていい。又、死体の表情がどうだったか書いてないのもマイナスポイントでしょう。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪』
【関連記事】
江戸川乱歩(目次)
« 東京都知事選挙 選挙公報(2011年)2 | トップページ | 東京都知事選挙 選挙公報(2011年)3 »
「書評(小説)」カテゴリの記事
- マーク・トウェイン「名探偵誕生」(2023.09.07)
- W・ハイデンフェルト「<引立て役倶楽部>の不快な事件」(2023.09.06)
- アンソニイ・バウチャー「テルト最大の偉人」(2023.09.05)
- オーガスト・ダーレス「怯える准男爵」(2023.09.04)
- アガサ・クリスティー「消えた貴婦人」(2023.09.03)
コメント