江戸川乱歩「地獄風景」
あらすじ…とある金持ちが、M県南部のY市郊外に遊園地を造り仲間たちを集めて享楽に耽っていた。しかしそこで、連続殺人事件が起こる。
江戸川乱歩のミステリーに多少は慣れてきたせいか、今回はクライマックス(カーニバル祭)前に犯人の目星を付けることができ、しかもそれが的中しました。ネタバレになるので真犯人の名は伏せておきますが、大鯨の中で真犯人が餌差宗助を取り逃がしたのはわざとであって、これは餌差が協力者(どこまで知らされていたかは不明)で、しかも後で用済みとばかりに消されたのだとすれば納得が行きます。
ところで、今作の探偵役を務めるのは、地元の警察の木島刑事という人物なのですが、これが実に情けない。何百人(!)も死なせてしまった挙句、犯人には逃げられています。殺人防御にも犯人逮捕にも完全に失敗、後に残されたのは無残な地獄絵図ばかり…。だめだこりゃ。
まあ、作者(江戸川乱歩)は探偵の活躍よりも、エログロ怪奇な「地獄風景」を描き出したかったのかもしれません。少なくともここでは。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪』
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