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江戸川乱歩「一寸法師」

 この作品の冒頭に、いわゆるハッテン場の描写が出てきます。それはこの作品の主人公、小林紋三が「春の夜の浅草公園」(P497)を散歩しているくだり。

 その間を奇妙な散歩者が歩くのだった。寝床を探す浮浪人、刑事、サーベルをガチャガチャいわせて三十分ごとに巡回する正服巡査、紋三と同じ様な猟奇者、などがその主なものであったが、外にそれらのいずれにも属しない一種異様の人種があった。彼等は一寸その辺のベンチに腰をおろしたかと思うと、じきに立上って同じ道を幾度となく往復した。そして木立の間の暗い細道などで外の散歩者に出逢うと、意味ありげに相手の顔をのぞき込んで見たり、自分でもそれを持っている癖に、相手のマッチを借りて見たりした。彼等は極めて綺麗にひげをそって、つるつるした顔をしていた。縞の着物に角帯など締ているのが多かった。
 紋三は以前からこれらの人物に一種の興味を感じていた。どうかして正体をつきとめて見たいと思った。彼等の歩きっぷりなどから、あることを想像しないでもなかったが、それにしては、皆三十四十の汚らしい年寄りなのが変だった。
(P500-501)

 その後、遊び人風の男と、小役人のような男が「ボソボソと話し合って」(P503)、「ベンチから立上り、ほとんど腕を組まんばかりにして山を下りて行くのだった」(P504)とあります。
 そして、本書の註釈によると、「後述の遊び人風の男と小役人風の男の二人を含むここの描写は、同性愛者のナンパ・スポット(いわゆるハッテンバ)のことと思われる。」(P739)とのこと。
 P699の「解題」によると、「一寸法師」の連載は大正15年~昭和2年ですので、その頃には既にハッテン場が存在していたことになります。こんな時代からあったとは…。

 ちなみに本作品を映画化した「盲獣VS一寸法師」(石井輝男監督)では、この二人のホモは男娼と客に置き換えられています。ハッテン場よりも、男同士の売買春の方がまだ一般的にわかりやすいのでしょう。
 ともあれ、夜の公園というだけでも異界的雰囲気を漂わせているというのに、その上さらに同性愛者の世界とすることでその異界的雰囲気を倍加させ、この後の一寸法師(女の生腕を持った、小人症の男)の登場をより怪奇なものに演出しているようです。

最後に一言:私はノンケです。

【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚』光文社

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