江戸川乱歩「火星の運河」
あらすじ…「私」はずっと森の中をさまよっていた。すると、森の中の沼へ出た。
タイトルだけ見るとSFっぽいのですが、内容はさにあらず。ネタバレ覚悟で言わせてもらうと(短篇だし、ミステリーのような謎解きもないのでいいですよね?)、夢オチです。
何だ、夢オチかよ! と突っ込みたくなりますが、よくよく読んでみると、夢であることを示唆する表現があることに気付きます。例えば、「音もなく、匂いもなく、肌触りさえない世界」(P106)とか、なぜか「私」が裸体(しかも女性の裸体!)だったりとか…。又、長い間森の中をさまよっているのに食料の心配が全然ないし、自らの体を傷付けた時に痛みを感じていたフシもありませんな。
勘のいい読者なら、最後まで読まずともこれらの非現実感から「これは夢の世界じゃないか」と推理できることでしょう。
【参考文献】
『江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣』光文社
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