モーリス・ルブラン『ルパン対ホームズ』新潮社
P4の断り書きによると、「原作者のコナン・ドイルから強い抗議を受けたため」、原書ではシャーロック・ホームズとジョン・ワトスンの名前を変えてあるが、和訳に際しては諮問探偵の方はシャーロック・ホームズに戻し、その助手の方は原書のウィルソンのままにしたとのこと。
ちなみにこのウィルソンは、ルパンの偽手紙にまんまと引っかかったり(P138)、ルパンの目の前で呆然としたり(P115)と、本家のワトスンよりも幾分、愚鈍に描かれています。おまけに第一話では腕をへし折られ、第二話では刺されるという踏んだり蹴ったりの有様。これには私も同情せざるをえない。
一方、ホームズはというと、「遅かりしシャーロック・ホームズ」に較べれば活躍しています。盗まれた青ダイヤとユダヤランプを取り戻したし、P234「ルパン二度目の逮捕」ではすぐに逃げられたにせよ一応、ルパンの逮捕にこぎつけています。
とはいえ、建築技師デタンジの記銘板に気付く(P159)のに時間がかかっていたりと、こちらも本家よりは性能的に劣化しているようです。
ルパン対ホームズ (新潮文庫―ルパン傑作集) 著者:モーリス・ルブラン |
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