エドワード・D・ホック他『シャーロック・ホームズの大冒険(上)』原書房
コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズシリーズを「正典」と言いますが、その正典の中で言及されているものの正典自体には収録されていない事件が少なからず存在します。
本書はそのような事件を「再構成」した二次創作(ファン・フィクション)で、この上巻ではホームズの学生時代から1890年代までを扱っています。
ちなみに、「キルデア街クラブ騒動」(P53-77、著:ピーター・トレメイン)ではモリアーティ教授がちょっとだけ登場します。モリアーティ教授はこのクラブの盗難事件には関わっておらず(事件発生前にさっさと退場している)、別に登場しなくても問題はない。とすると、教授の登場は読者へ向けてのサービスカットなのでしょう。
尚、登場こそしないものの、本書の作品中で言及される同時代の有名人もいます。オスカー・ワイルド(P56)とキュリー夫人(P425)です。特に、オスカー・ワイルドについては次の文章が目を引きました。
親しい学友に詩人のオスカー・フィンガル・オフレアティ・ウィルズ・ワイルドがいるが、彼はこれを書いている今でもレディング監獄で惨めな暮らしを余儀なくされている。(P56)
オスカー・ワイルドは男色裁判で有罪になった(つまり、同性愛者だと公式に認定された)人物です。
まあ、女性嫌いで有名なシャーロック・ホームズにホモ疑惑が付いて回るのは当然かもしれませんが(例:ホームズ×ワトスン)、まさかオスカー・ワイルドとおホモだち…じゃなかった、お友だちだったとはねぇ。
シャーロック・ホームズの大冒険 上 著者:エドワード D.ホック他 |
« 柘植久慶『核の迷路』集英社 | トップページ | スペンサー・ジョンソン『チーズはどこへ消えた?』扶桑社 »
「書評(小説)」カテゴリの記事
- 福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(6)ボズワースの戦い(2024.06.06)
- 福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(5)第二の求婚(2024.06.05)
- 福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(4)処刑と暗殺(2024.06.04)
- 福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(3)アン・ネヴィルへの求婚(2024.06.03)
- 福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(2)クラレンス公ジョージ(2024.06.02)
コメント