スペンサー・ジョンソン『チーズはどこへ消えた?』扶桑社
本書は入れ子型の構造になっています。シカゴのある集まりでマイケルが「チーズはどこへ消えた?」という物語を語り、その後みんなでディスカッションするという形式です。
物語の中で教訓めいた格言が大書され、更にその後のディスカッションでその教訓に即した具体例が幾つも語られています。これは親切設計ですな。
ところで、私はひねくれ者なので変化云々の諸教訓とは別の部分について考察してみることにします。本書を読んで疑問が浮かびました。
(1)そもそも、なぜ迷路が存在するのか?
(2)そして、誰がチーズを置いたのか?
(1)については、「ここはそういう設定の世界なんだから」と言ってしまえばそれまでなのですが、それで済ませてしまえば実に薄っぺらい世界になります。まあ、本書自体が薄いので奥行きのない世界でもいいのですが。
次に、(2)について。そもそもチーズは自然発生するものではなく、誰かがチーズをそこに置いたはずです。そして、その「何者か」がチーズを置いたのなら、同時に取り去ることも可能なはずだと推理できます。
では、誰が? そんなことができるのは「神」ではないかと推察いたします。唯一神といった概念ではなく、二人の小人と二匹のネズミにとっては神のような存在、すなわち恵み(チーズ獲得)や災い(チーズ消滅)をもたらす者ではないか。
とまあ、ここまで来ると宗教の話になってしまいますね。語り手のマイケルが意図した方向とは別のところへ行ってしまいましたな。
チーズはどこへ消えた? 著者:スペンサー ジョンソン |
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