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安田元久『後白河上皇』吉川弘文館

 平家物語やその他諸文献によってある程度の知識はあったものの、本書を読んで驚いたことが一つあります。それは後白河法皇が平清盛に比叡山を攻撃させようとしていたということです。
 後白河院と比叡山延暦寺との対立の経過は長くなるので省略。

 そこで法皇は、さらに謀反人追捕という名文をたてて、清盛を福原から呼び出し、叡山攻撃を要請した。清盛は、はじめこれを受諾するのに躊躇したものの、明らさまに法皇に抵抗する情況でもなかったのであろうか、ついには出兵を承諾した。ここに平氏軍と延暦寺僧兵とを戦わせようとする法皇の計画、すなわち延暦寺と平氏一門との結託を破らせようとする法皇及びその近臣たちの策謀が、一まず成功するかに見えた。(P116-117)

 しかしこの直後、鹿ケ谷陰謀事件が「発覚」して、攻撃は沙汰止みになりました。
 もしも平家の叡山攻撃が行なわれていたならば、平家物語の中で挙げられる平清盛の罪状に、奈良の大仏焼き討ちと並んで比叡山攻撃が入っていたことになるでしょう。そうなれば、この数百年後に行なわれた織田信長による比叡山焼き討ちの評価も…おっと、空想が行き過ぎてしまいました。

【参考文献】
安田元久『後白河上皇』吉川弘文館

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