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松岡和子訳『ヘンリー六世 全三部』筑摩書房(4)

 第三部は薔薇戦争真っ盛り。戦争のシーンがいくつも出てきます。おかげで、読み終わる頃にはどの戦いで誰が死んだのか思い出せず、巻末の「『ヘンリー六世』関連年表」を繰り返しチェックすることになりました。
 で、第二部でちょっとだけ登場したリチャード(ヨーク公の息子、後のリチャード三世)が、第三部ではグロスター公となって活躍します。しかも、なかなか腹黒い。

 クレランス、用心しろ、お前のせいで俺は日陰の身だ、
 だが、お前のために暗黒の一日を用意してやる。
 まず、エドワードの命が危ないという予言の噂を
 そこらじゅうに撒き散らし、それから
 その恐れを取り除くという名目で、俺がお前の死に神になる。

(P593、第五幕第六場)

 これはグロスター公リチャードのセリフですが、この部分が『リチャード三世』でのクレランス公ジョージ(リチャードの兄)の「謀殺」につながるわけですな。なるほど、あのよからぬ噂を広めたのはリチャードでしたか。やっぱりというか、さもありなんというか…、この後の『リチャード三世』でのドス黒さを見た者としては納得せざるを得ない。

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