アドルフ・ヒトラー『わが闘争(上)』角川書店(1)
本書の内容に取り掛かる前に言明しておくことがあります。それは、私(泉獺)がこのブログでヒトラーの著書を取り上げたことについて、「泉獺はナチズムの信奉者だ! ネオナチだ!」などと即物的に思うのは間違いであるということです。よもや賢明なる読者諸氏はそんな愚を犯すはずはないと信じておりますが、念のため。
さて、ナチズムの特徴の一つに「反ユダヤ主義」がありますが、もちろん本書の中でもそういう記述があります。ヒトラーがユダヤ人に対して嫌悪感を抱いているというくだりを一部、引用してみます。
一般に、この民族の道徳上の、あるいはその他の清潔さというもの自体が問題であった。水好きでないことが問題であることは、人々が外見を見ただけで、遺憾ながら往々にして、しかも目を閉じていてもわかる。その後わたしは幾度もカフタンをまとっているものの臭気で、気持ちが悪くなった。その上なお、きたない衣服をつけているし、外貌も雄々しくない。(P87)
これをわかりやすい言葉に直すと、こうなります。
「あいつらフケツだよな。汚い格好してるし、臭いし。気持ち悪いんだよねー」
こんなことを言うのは、現代日本なら小学生かDQNくらいでしょうか。
そして更にこんなことを述べています。
ユダヤ人がマルクス主義的信条の助けをかりてこの世界の諸民族に勝つならば、かれらの王冠は人類の死の花冠になるだろうし、さらにこの遊星はふたたび何百万年前のように、住む人もなくエーテルの中を回転するだろう。
永遠の自然はその命令の違反を、仮借なく罰するだろう。
だから、わたしは今日、全能の造物主の精神において行動すべきだと思う。同時にわたしはユダヤ人を防ぎ、主の御業のために戦うのだ。(P97)
マルクス主義(共産主義)はユダヤの陰謀であり、もしも世界中が共産化したら人類は滅亡してしまうぞと説く。ユダヤ陰謀論と人類滅亡!
その上、神まで持ち出して、「神がこんなことを許すはずがない!」→「自分は神と共にある!」→「神のためにユダヤ人と戦う!」と論理を飛躍させています。あれれ、ヒトラーはいつから神の啓示を受けて預言者になったんだ?
それにしても恐ろしいのは、反ユダヤ主義に唯一神の「御意向」(全能の造物主の精神)をふりかざしているということです。こうなると宗教戦争(聖戦)になってしまい、我々の目から見て不当と思えるユダヤ人への迫害も、彼らの目から見れば「正義」と映ります。
この「正義」の道の先にアウシュヴィッツがあるのか…。
さて、本書は重厚長大な政治書であり、内容も濃い。そのため私が読み進めるスピードは雪中行軍の如く遅々としています。安倍晋三『美しい国へ』や麻生太郎『とてつもない日本』とはえらい違いですな。
ともあれ、本書のレビューは一回で終わらせることが出来ないので、何回かに分けて送ります。ご了承下さい。
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