中島岳志『ヒンドゥー・ナショナリズム 印パ緊張の背景』中央公論社
「序章 ヒンドゥー・ナショナリズムの現場から」でいきなり、著者はヒンドゥー・ナショナリスト団体RSS(民族奉仕団)の懐に飛び込んでいます。しかも、ヒンディー語を話しながら。「現場」にそこまで踏み込むとは、やるなあ。
ところで、著者(中島岳志)は左派の論客であるためか、
RSSにおいては、ダルマの本来持っている深遠な思想が、「国民規範」へと限定化され、国民動因のイデオロギーへと転化してしまっているところに問題がある。(P51)
ここで彼が語っていることは、完全なアイデンティティ・ポリティクス(アイデンティティを求める動きを政治的に利用しようとするもの)である。ムスリムという明白な敵を設定し、それに対して自分達がどういう行為を行うかということが「ダルマ」として位置付けられている。「ダルマ」の矮小化であろう。(P114)
などといった思想面での分析がなされています。アイデンティティ・ポリティクスなんていう語を用いるところなどいかにもそれっぽい。
尚、本書の副題は「印パ緊張の背景」とありますが、本書で描かれているのはもっぱらインドの方で、パキスタン側の背景は扱っていません。そちらの方も知りたい方は他の書籍を当たった方がいいでしょう。
ヒンドゥー・ナショナリズム―印パ緊張の背景 (中公新書ラクレ) 著者:中島 岳志 |
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