無料ブログはココログ

« ローズ・レッド:ザ・ビギニング(2003年、アメリカ) | トップページ | VIVA FREAK!川崎 JANUARY 2010 VOL.68 »

福田和也『乃木希典』文藝春秋

 無能だけれど有徳の人、乃木希典の評伝。
 「無能」については旅順の戦いを参照すればよいとして(本書でも割かれている頁数は少ない)、では「有徳」とは? 本書のP126-128に短いエピソードを連ねた文章があるので、少々長いですが引用します。

 もちろん、乃木の努力は軍服だけではない。
 料亭、芸妓を遠ざけたという話はすでにした。
 生活をとことん質素にした。
 家での食事は、稗飯だった。
 客が来れば、「御馳走だ」と云って蕎麦を振舞う。
 軍務についている時には、兵隊と同じものを食べた。
 特別な食事を供されると、食べずに返した。
 田舎親父が、好意で用意してくれたものは、喜んで食べた。
 宿で、畳に直接軍服で寝た。
 煙草は一番安い「朝日」だった。
 自動車には乗らなかった。
 雨でも、馬にのった。
 傘をささずに、豪雨の下を歩いた。
 負傷兵に会うと、どんなところでも馬を下りて、「ご苦労だったなあ」とねぎらった。
 夏でも蚊帳を使わなかった。
 身の回りのことはすべて自分でした。
 従卒や副官の手を煩わせなかった。
 乃木は質素と倹約は、違うということを常に説いている。
 もちろん、物品や水、燃料、電気などを無駄に費やすことは忌むべきことである。
 けれども値切って買ったり、安いものを探してまとめて買うことは、質素ではない。
 質素は、金を貯めることを目的としない。
 乃木はむしろ、浪費家と呼ばれるべき人物である。
 感心した古典籍があると、自らの手で翻刻したものを知友に配ってしまう。
 旧乃木邸の厩舎は、堂々たる煉瓦作りで、自宅より立派だと云われた。
 馬を可愛がった。
 長年仕えた馬丁に年金がつかなかったので、毎年、年金にあたる分の金を送ってやった。
 怪しげな依頼にも、感じるところがあれば、金を送った。

(P126-128)

 自分を含めて俗物にできることではありませんな。
 ま、せいぜい私なら「蕎麦を振舞う」くらいでしょう。蕎麦くらい自分で茹でて食べていますから、いつもより多めに茹でてそれを出せばいいのです。
 とはいえ、乃木大将が「御馳走だ」と言えば、客は彼の質素な生活を知っているから納得するでしょうが、私が「御馳走だ」と言っても相手は皮肉としか受け取らないでしょう。これも徳の違いの成せる業か。
 あと、煙草は吸わないからこれもクリアできる…かな?

 さて、これを読んだ皆さんは、何項目クリアしているでしょうか?

 ところで、パソコンのフォルダを探索してみたら、赤坂の旧乃木邸の厩舎内部の写真があったので掲載しておきます。これは私が数年前に撮影したものです。

01_2

乃木希典 (文春文庫) Book 乃木希典 (文春文庫)

著者:福田 和也
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

« ローズ・レッド:ザ・ビギニング(2003年、アメリカ) | トップページ | VIVA FREAK!川崎 JANUARY 2010 VOL.68 »

書評(歴史)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 福田和也『乃木希典』文藝春秋:

« ローズ・レッド:ザ・ビギニング(2003年、アメリカ) | トップページ | VIVA FREAK!川崎 JANUARY 2010 VOL.68 »

2023年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31