アントニー・ビーヴァー著、堀たほ子訳『スターリングラード 運命の攻囲戦』朝日新聞社
イギリスの小説家、アントニー・ビーヴァーが書いた、戦争ノンフィクション大作。1941年にドイツ軍がソ連領内に電撃的に進行したバルバロッサ作戦に始まり、スターリングラード市街での消耗戦、ソ連が反撃に転じたウラノス作戦とサターン作戦、そしてドイツ第六軍の降伏と捕虜たちのその後を描く。
この本は500ページを超える長編となっており、しかも兵士らが次々に死んでゆく凄惨な話が次から次へと出てくるので、正直言って読むのはしんどいです。
ソ連もドイツも、何と人命を軽視していることか! ソ連は自軍の兵士を処刑し、ドイツは包囲された自軍の兵士を見殺しにしています。
ところで、本書ではソ連の機密文書(ソヴィエト崩壊に伴って公開された)から名も無き兵士の手紙にいたるまで、様々な資料を縦横無尽に引用しており、よくもまあこれほど膨大な資料を用いたものだと恐れ入ってしまいます(※)。
それにしても、読み終えた後になって思うのですが、独ソ両国にとってスターリングラードは果たして、あれほどの犠牲を払ってまで執着する価値があったのでしょうか? スターリンもヒトラーも意地でも「あった」と言うでしょうが…。
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スターリングラード 運命の攻囲戦1942-1943 販売元:TSUTAYA online TSUTAYA onlineで詳細を確認する |
※資料を集めてレポートや論文などを書いた経験の持ち主ならわかると思いますが、自分が読み漁った資料すべてを引用するとは限りません。つまり、著者は本書に引用したものより多くの資料を読んでいるはずです。
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