グレイム・ギル/内田健二【訳】『スターリニズム』岩波書店
最初に断わっておきますが、本書は「ヨーロッパ史入門」シリーズの一冊なのですが、「入門」とあるにしては難しく、大学生が読むレベルだなと感じました。
さて、スターリニズムとは何か? 本書の言葉を借りると、「スターリニズムは、一九三〇年代から五〇年代のソ連で見られたソヴィエト的現象である」(P99)とのこと。
本書の定義するところのスターリニズムは以下の通り。少々長くなりますが引用します。
(1)制度上は高度に中央集権化された指令経済システム。大衆動員と重工業発展の最大限の重視を特徴とする。
(2)初期の段階では、大々的な流動を特徴とした社会構造。なかでも特筆すべきは、かつての下層階級を権力と特権ある地位に引き上げた高水準の社会的流動。その後、社会は安定し、等級や地位、厳格な上下関係が支配する社会構造へと帰結。
(3)文化的、知的領域では、すべてが指導部の定める政治的目的に奉仕するべきであるとされ、文化的、知的活動の全分野が政治的監視を受けた状態に置かれる。
(4)統治の手段としてテロルを用いた個人独裁。ここでは、政治組織はほとんど独裁者の道具以上の何物でもなかった。
(5)国家にとって重要と見なされる限りで、あらゆる生活領域が政治化される。
(6)権力の中央集権化と、その反面に見られた中央の日常的統制の著しい弱さ。その結果、実際には日々の活動が厳重な統制を受けず、組織化もされていないシステムが出来上がった。
(7)初期の革命的な価値規範は、保守的で現状維持の志向によって取って代わられた。(P86)
私はこのブログで映画や本のレビューを勝手気ままに書いているのですが、もしもスターリニズムの影響下にあったと想像してみると、相当困ったことになりますな。
まず、(3)によって「政治的監視を受けた状態に置かれる」から下手なことは書けない。そういうことを書いてしまえば「テロル(=粛清)」に遭うでしょう。
又、(5)を考慮するならば、不特定多数の人間にメッセージを発信できるブログは、「国家にとって重要と見なされる」可能性が高く、そうなるとブログという「領域が政治化される」でしょう。
政治化できる映像作品や書籍もあるにはありますが、そればっかりではありませんから、言論の幅は相当狭められ、使える言葉も相当限られてくるのは間違いありますまい。
スターリニズム (ヨーロッパ史入門) 著者:グレイム ギル |
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