夢枕獏『羊の宇宙』
内容は、老物理学者と羊飼いの少年の哲学問答です。
哲学と聞くと、何やら難解なものを想像するかもしれませんが、この本に書かれている語句は平易ですし、表現も平易です。羊飼いの少年でもわかるレベルの言葉で書かれていると言ってもいいでしょう。
難解な言葉を書き連ねた哲学書もこの世の中にはありますが、それとは対照的に、誰でもわかるようなわかりやすい言葉で述べられた哲学書もあります。その一つがこの『羊の宇宙』です。
例えば、少年の言葉をちょっと引用します。
「この宇宙はね、羊と、羊じゃないものからできているんだよ」(P43)
少年はこのように世界を把えました。
「人間とは何か」が哲学の命題の一つであるように(ちなみにパスカルはこの問に対して、人間は考える葦である、と答えた)、「世界(宇宙)とは何か」も又、哲学の命題の一つなのです。ちなみに、プラトンは日常の感覚の世界とイデアの世界があると把えたし、仏陀は一切是空と答えました。
数多の哲学者が取り組んできたこの問題に対し、少年は自分の言葉で回答しているのです。
羊の宇宙 著者:たむら しげる,夢枕 獏 |
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