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城取り(1965年、日本)

監督:舛田利雄
出演:石原裕次郎、千秋実、中村玉緒、近衛十四郎、芦屋雁之助、石立鉄男
原作:司馬遼太郎『城をとる話』
備考:時代劇、モノクロ

あらすじ…浪人の車藤三が、友人の俵左内らと共に建設中の多聞山城を奪おうとする。

「城取り」人物関係図

 物語の舞台となる城の名前が多聞山城と聞いて、私はピンと来ましたよ。松永久秀の城じゃないか、と。もちろんこの作品の多聞山城と松永久秀が築いた多聞山城とは全くの別物なのですが、ここでわざわざその名前を持ってくるということは、城主の赤座刑部は松永久秀並みの悪役だぞと示しているようなものでしょう。
 それから、その赤座刑部を演じているのは近衛十四郎なのですが、車藤三を演じている石原裕次郎と相対した時、刑部の方が風采が堂々としていて殺陣がきれいなので、主人公よりこっちの方が強そうに見えてしまいます。ラスボスの風格は充分ということか。

オーソン・ウェルズのフォルスタッフ(1966年、スペイン・スイス)

監督:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ、キース・バクスター、ジョン・ギールグッド、ジャンヌ・モロー、イングリッド・ピット、マーガレット・ラザフォード
原題:Falstaff (Chimes at Midnight)
原作:シェイクスピア『ヘンリー四世』
備考:古典劇、モノクロ

あらすじ…ヘンリー四世治世下のイングランドでは反乱が相次いでいた。そんな中、ハル王子は太った老人フォルスタッフと一緒になって巡礼の金を奪ったり売春宿で王様ごっこに興じたりしていた。

 シェイクスピアの歴史劇『ヘンリー四世』を、フォルスタッフを主人公に据えた作品。この作品ではフォルスタッフをオーソン・ウェルズが演じています。

 中盤にシュルーズベリーの戦いが登場。合戦のシーンは壮観です。
 一方、フォルスタッフはボロボロの鎧に身を固めて戦場をトコトコ歩きます(戦っているわけではない)。戦闘シーンとのギャップが滑稽味を増しているようです。

 さて、ここから先は結末部分のネタバレを含むのでご注意下さい。
 物語の終盤、イングランド国王に即位したハル王子改めヘンリー五世は、喜色満面でやってきたフォルスタッフ(新国王の下で甘い汁を吸おうというのだろう!)に対して追放刑を宣告します。
 この仕打ちを冷たいと見る人もいるでしょうが、私は「エドワードII」という映画を観ていたから、ヘンリー五世の処置に対して無下に反対できない。
 ここで「エドワードII」のストーリーを簡単に述べておきます。イングランド国王に即位したエドワード2世は、父親によって追放されていた寵臣ガヴェストンを呼び戻し、二人で放蕩にふける。そしてそんな二人には悲劇が襲いかかる…。具体的にどうなったのかは伏せておきますが、それぞれ悲惨な末路を辿ることになります。
 つまり、「エドワードII」で描かれていたのは、もしもヘンリー五世がフォルスタッフと共に放蕩生活を続けていたら…という世界に見えてしまうのです。
 そう考えると、ヘンリー五世の「処断」は、自分の王冠を守るだけでなく、フォルスタッフをも守ったことになったのだと言えるでしょう。

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殺人狂時代(1967年、日本)

監督:岡本喜八
出演:仲代達矢、団令子、砂塚秀夫、天本英世
原作:都筑道夫
備考:アクションコメディ

あらすじ…大学講師・桔梗信治のもとに、溝呂木博士の殺し屋たちが次々に襲いかかる!

 主人公の桔梗信治と行動を共にする人物に「大友ビル」という者がいます。大友ビル…これはオートモービル(自動車)をもじったものだな、多分。
 それから、この大友ビルが、自分は顔が広いと言った時に画面が彼の顔にズームして更に引きのばされます。顔が広いという比喩を映像で直接表現しています。
 次に、主人公について。彼は殺し屋たちを次から次へと返り討ちに。それはもう、「お前本当にただの大学講師か?」とツッコミを入れたくなるくらいの手際の良さです。ただ、心理学を教えているだけあって、心理分析は鋭い。

 最後に、どんでん返しの連続について。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、「実は○○は××だった」というのがたて続けに展開されます。しかしそれらも、どこからが本当でどこからが嘘かよくわからない。
 ここに至って観客は煙に巻かれてしまいます。

 ともあれ、この作品全体にユーモアがあふれているので、あまり難しいことは考えずに視聴した方がいいでしょう。

ある殺し屋(1967年、日本)

監督:森一生
出演:市川雷蔵、野川由美子、成田三樹夫、小池朝雄
原作:藤原審爾『前夜』
備考:フィルム・ノワール

あらすじ…小料理屋を営む塩沢は、実は凄腕の殺し屋。木村組組長から対立する組長・大和田の暗殺を請け負い、成功させる。そんなある時、塩沢はひょんなことから転がり込んできた圭子と、木村組の前田と組んで…。

「ある殺し屋」人物関係図

 主人公の塩沢は寡黙な殺し屋です。これはアラン・ドロン主演の映画「サムライ」の殺し屋ジェフ・コステロと共通します。ただ、違いがあるとすれば、コステロの過去が一切描かれていないのに対し、こちらの塩沢は古い写真を見せることによって戦争中は戦闘機のパイロットだったことが観客に明かされます。
 尚、その古い写真には若い頃の大和田も一緒に写っているらしく、大和田と塩沢は因縁浅からぬ関係だということを示しています。とはいえ、映画ではそれ以上深く掘り下げることはせずに済ませており、多くは語られません。まあ、そっちの方が塩沢にミステリアスさが出るか。
 それから、クライマックスのアクションシーンも面白い。ベルトを鞭のように振るって戦うなんて、私は初めて見ましたよ。

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眠狂四郎勝負(1964年、日本)

監督:三隅研次
出演:市川雷蔵、藤村志保、高田美和、久保菜保子、加藤嘉、須賀不二男
原作:柴田錬三郎
備考:時代劇

あらすじ…眠狂四郎はひょんなことから知り合った老人が勘定奉行・朝比奈伊織で、しかも命を狙われていると知って彼の護衛を(勝手に)するようになる。一方、伊織に高額の化粧料(小遣い)を廃止されて激怒した高姫と、その用人の白鳥主膳は刺客を集めていた。

「眠狂四郎勝負」人物関係図

 眠狂四郎と道場破りとの対決で狂四郎は不敵な笑みを漏らします。恥ずかしながら私は初見では見落としてしまい、道場破りの指摘を聞いて見直し、ようやく気付いた次第。それくらい小さなものでした。
 ちなみにこの笑みは、クライマックスでの海老名良範との対決でも見せています(こちらも二度見した時に気付いた)。お見逃しなく!

 それから、高姫の足の間から槍が突き出る、というのは性交のメタファー(暗喩)ですな。つまりはこの時点で高姫は狂四郎に象徴的な意味で犯されたということなのでしょう。
 又、狂四郎が采女(藤村志保)の腕をねじり上げた時の采女が実にエロい。足先を伸ばし、上体をのけぞらせてあえいでいます。このシーンも性的な色彩が強い。

 最後に、采女の部屋にあった掛軸について。
 掛軸には鐘とそれにからみつく赤い龍のようなものが描かれていますが、あれは道成寺縁起の清姫です。僧・安珍に恋をした清姫は逃げる安珍を追いかけ、とうとう大蛇になり、鐘の中に隠れた安珍を焼き殺してしまいます。あの絵はまさにその場面を描いたもので、女性の男性に対する強い想い(それはもう、愛する男を殺すほど強烈に!)を表現しています。
 そもそも采女は囚われの夫を救出するために立ち働いており、してみると采女はこの掛軸を掲げることで夫への強い想いを表わしているのでしょう。

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燃えよ剣(1966年、日本)

監督:市村恭一
出演:栗塚旭、和崎俊哉、石倉英彦、内田良平、天津敏
原作:司馬遼太郎『燃えよ剣』
備考:時代劇

あらすじ…土方歳三は祭りの夜に宮司の娘・佐絵と通じる。その後、佐絵のもとに行った帰りに、佐絵を警護していた六車宗伯と斬り合い、これを殺す。

「燃えよ剣」人物関係図

 新選組を主題にした映画をレビューするのはこれが初めて。尚、原作小説は未読でドラマシリーズも未見です。

 さて、この映画は土方歳三を主人公に据え、多摩時代から新選組の結成、そして池田屋事件までを描いています。1時間半の尺ならばこれくらいでいいのかもしれませんが、それにしても「戦艦ポチョムキン」と同様、(主人公たちにとって)いいところで終わっていますな。

 それから、栗塚旭(土方歳三)のセリフの棒読み具合が目につきました。序盤で土方が近藤勇に「あんたを大名にする」云々と述べるくだりなどは特にひどい。もっと時間をかけて丁寧に演技指導をしていれば、もう少し何とかなったかもしれません。
 一方、殺陣(たて)についても少々。土方歳三は相手のすねを斬るという剣法を使っています。それはそれで面白いのですが、すねを斬った時に傷口を一瞬見せるという演出があってもよかったかな。

サムライ(1967年、仏伊)

監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:アラン・ドロン、フランソワ・ペリエ、ナタリー・ドロン、カティ・ロシェ
原題:Le Samouraï
原作:アゴアン・マクレオ
備考:フレンチ・フィルム・ノワール

あらすじ…寡黙な殺し屋ジェフ・コステロは娼婦のジャーヌにアリバイ証言を頼み、仕事(暗殺)を実行する。だが、歌手のヴァレリーに顔を見られてしまう。

 まずは「サムライ」について。
 そもそも侍に殺し屋なんていたかなと思いましたが、時代劇にいました。「子連れ狼」の拝一刀や「必殺仕事人」の中村主水などです。
 
 次に、主人公について。
 ジェフ・コステロは実に寡黙で、必要最低限のことしかしゃべらない。まるで無駄なものは全て削ぎ落としてきたかのようです。
 そういえば彼の部屋も恐ろしく殺風景で寒々しい。おそらくこの部屋も彼のキャラを表現しているのでしょう。
 尚、唯一の例外ともいうべきものは彼が飼育している小鳥ですが、これとて異変を探知する装置として置いていた可能性があります。鉱山のカナリヤみたいなものですね。

アラン・ドロン

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十兵衛暗殺剣(1964年、日本)

監督:倉田準二
出演:近衛十四郎、大友柳太朗、河原崎長一郎、宗方奈美
原作:紙屋五平
備考:時代劇、モノクロ

あらすじ…幕屋大休という浪人が江戸で「新陰流正統」の看板を掲げた剣術道場を開き、徳川家光に自らの正統性を直訴。更には柳生新陰流の道場へも挑発行為を仕掛ける。柳生新陰流の門弟たちは怒って大休を暗殺しようとするものの返り討ちに遭い、しかも道場を襲撃されてしまう。大休は自分の門弟たちと共に琵琶湖の竹生島へ逃れ、柳生十兵衛が選りすぐりの10人を引き連れてそれを追う。

「十兵衛暗殺剣」人物関係図

 幕屋大休は自分こそが新陰流の正統だと主張して、印可状という「証拠書類」を提示しています。しかしながら、もし仮に幕屋大休が新陰流の正統だと公的に認められたとしても、柳生新陰流の開祖・柳生石舟斎は上泉伊勢守の正統な弟子なのだから柳生新陰流だって立派な新陰流の正統ではある。しかも柳生新陰流は将軍家指南役でもあるため、権威も知名度も高い。
 それにそもそも、自らの正統性を主張するのは剣術の流派に限ったことではなく、例えば宗教団体や政治団体にも見られます。そういえば昔、熊沢天皇なるものもいましたっけ。

 さて、話を映画に戻すと、幕屋大休もさすがに印可状だけでは将軍家指南役になれないとわかっていたらしく、柳生十兵衛との試合を要求します。当代随一の剣豪である柳生十兵衛に勝つことで自分が最強だと示したかったのでしょう。
 しかしその要求は拒絶され、松平伊豆守からは狂人扱いされる始末。いわゆる門前払いです。この時点での幕屋大休は全く無名の存在であり、有力なバックが付いているわけでもないから、まあ普通にそうなるのも当然ですわな。
 それから、物語の後半で幕屋一味は琵琶湖の湖賊と手を組んで十兵衛一行を迎え撃つことにします。おいおい、そんな犯罪集団と結託したら、お前らだって賊の一味と見なされて討伐の対象となってしまうぞ。

 最後に、武器破壊について。
 幕屋大休は小太刀を振るって敵の刀を折るという技を使います。なるほど、これが成功すれば相手の戦力を大きく殺ぐことができますな。
 これに対して柳生十兵衛はどんな手を打つのか? それについてはクライマックスのネタバレになるので伏せておきますが、あの不利な状況下でよくやったものだと唸ってしまいました。

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デトロイト:活動中の都市(1965年、アメリカ)

 このドキュメンタリーは、YouTubeで観ました。
https://youtu.be/T-C8DwL2ovQ

監督:ジェームズ・T・スレイデン
出演:ジェローム・P・カヴァナー(デトロイト市長)
原題:Detroit: City on the Move
備考:ドキュメンタリー

あらすじ…デトロイト市長がデトロイトの魅力を紹介してくれるよ!

 デトロイトはアメリカのミシガン州にある都市で、この頃までは自動車産業で栄えていました。ところが、この後は…ぶっちゃけて言うと没落です。
 後世に生きる我々は、この作品をデトロイトが元気だった頃の最後の輝きとして見るといいかもしれません。

ドニー・Bが死んだ日(1969年、アメリカ)

 このショートフィルムは、YouTubeで観ました。
https://youtu.be/A_DQitlyVRU

監督:カール・フィック
原題:A Day in the Death of Donny B.
備考:ドラマ

あらすじ…ニューヨークに住むヘロイン中毒の黒人青年ドニー・Bが死んだ。証言者たちは語る。

 ドキュメンタリータッチでドニー・Bなる人物が描かれます。彼はヘロインでヘロヘロになりながら、ひったくりなどをやったりしており、ロクなもんじゃない。救いが全くないですな。
 気だるい歌をBGMに聴きながら、最底辺の生活を送る彼の姿を見るというのは、正直言って気持ちのいいものじゃないです。でも、こういうどうしようもない小悪党っていますからね。反面教師として取り上げる価値はあると思います。
 それにしても、そんな奴がこうして映像作品の主人公になるというのは、大した出世ではある。

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